戦略とロードマップの実行 -3- グローバルに通用する業務プロセスへの変革方法

(1)世界共通のロールとジョブを整理する

グローバルに通用する業務プロセスを設計する際に、まずは世界共通のロールとジョブを定義することから始める。ところが、職能資格制度が主流の日本企業では、ロールやジョブという考え方がない場合が多い。

しかし、グローバル人材マネジメントを実現するためには、世界中にどのような役割の人材がいて(Role)、その方々にどういう仕事を任せる(Job)のかが明示されていないと、人材の採用や処遇において不具合が生じる。

例えば、ヘッドクォーターのある日本で採用した中国人留学生とローカル拠点である中国で採用した中国人を、どのように区別して処遇するかといったときに、ロールやジョブが定義されていないと、役割の違いを明示できないし、ヘッドクォーターの人材とローカルの人材に求められる仕事が違う、あるいは同じといった条件の違いなども明示できない。

職能資格制度のような勤続年数を重ねて一般的な能力が向上すれば、みんな同じように処遇されるという制度ではなく、任せている役割や仕事に応じて、人それぞれに処遇されるという制度に転換することで、グローバル人材マネジメントは各国拠点に理解されやすくなる。

 
(2)共通化させることとローカルに任せることを決める

ロールやジョブを共通化すると申し上げたが、すべての基準を共通化させる必要はない。

例えば、グローバルアサイン(人材を世界中で活用)を行ないたいのであれば、ある一定以上は基準を共通化させる必要がでてくるが、ローカルアサイン(現地法人だけで活用)を前提としている工場労働者などは、統一する必要がない場合もある。この点については、評価・配置・育成・異動などの可能性を考えて、共通化させるロールとジョブを決定していくことが重要である。

ローカルアサインが前提のロールやジョブであれば、考え方だけ徹底して給与水準や職務定義などは各国に任せる方がうまくいく。一方で、シニアマネージャークラス以上は、グローバルアサインの可能性もあるし、育成施策もグローバルで展開したいということであれば、ロールやジョブを共通化して、基準も同じものを用いることで、グローバルアサインが大変やりやすくなる。

 
(3)グローバル人事評価制度の構築

共通化させる対象が決まったら、グローバルで共通の人事評価制度の導入を検討する。日本企業の人事評価は、実績と能力発揮を評価する過去実績を見極める観点から設計されたものが多い。

しかし、グローバル人事で必要なのは、どこにどのような力を発揮できる社員がいるのかをわかるようにする「タレントマネジメント」が重要になってくる。一人ひとりの社員をタレント(才能を持った存在)と考え、それぞれの才能を最大限に活用するための組織マネジメントを考えるのが、タレントマネジメントである。

タレントマネジメントを意識した人事評価制度では、本人の知識・経験・技能を「見える化」し、それら知識・経験・技能の程度に合わせた積極的な教育計画をつくったり、配置育成方針を決めたりする。つまり、単に給与や賞与を決めるためだけの人事評価ではなく、今後の育成や配置までも検討するための材料を得るために、人事評価を実施する。

タレントマネジメントをしっかりと整備した企業は日本企業にはあまり存在しないが、これからマーケットを海外に求めていく日本企業では、グローバル人材マネジメントを実現するために必要なマネジメント手法となっていくだろう。

 
(4)グローバル採用プロセスの構築

日本企業の外国人採用の必要性は高まってきている。例えば、「新卒採用の80%が外国人で構成されている」と話題にのぼる有名企業も存在する。小売業から製造業、IT企業に至るまで、外国人採用の重要性が増してきている。

この現象は一時的な流行なのか。あるいは、採用活動に長期的な変革が起きているのか。この変化は時代の要請なのか。ここには日本社会に明らかに存在するいくつかの変化が影響している。

それは、①人口減少、②高齢化、③海外における事業機会の増加である。このように日本の人口構造の変化によって、外国人採用の必要性は高まってきている。2030年までに、日本人の労働力人口は、現在の首都圏の人口に匹敵する人数が減少すると予想されている。また、将来、日本企業が海外展開を成し遂げ、海外市場で対等にビジネスでわたり合うためには、中核となる外国人を採用して定着化させなければならない。ここに、グローバル採用プロセスを確立する意義がある。

これまでは工場を現地に進出して現地社員を確保するといった採用ニーズであったが、上記に述べたように、日本人の優秀な社員の現象、海外マーケットの拡大に対応するためのコア人材の採用が最近のグローバル採用プロセス設計における争点だ。

この際に留意しなければならないのは、日本人であろうと外国人であろうと、会社の理念や目標を理解して、企業の発展に貢献するために最善の努力をするという行為自体に差はないとうことだ。

通常はどの国の従業員であっても、会社からの期待はかわらない。この変わらない期待値を明確に掲げて、各国で有能な人材を採用し、育成していくプロセス、採用された社員がキャリアを歩んでいけるプロセスを設計することが、今のグローバル人材マネジメントにおける採用関連の課題である。

 
(5)グローバルBPOの導入

グローバル人材マネジメントを確立していく過程でもう一つ重要な論点がある。仕事を求めて人が移動する時代から、人を求めて仕事が移動する時代となった今、人事業務をどこでやるのかを検討することが必要になってくる。

極東の日本本社に人事部をおくことが得策かどうか、日本企業は考える時期になってきた。まず第一に、給与計算や各種届出資料の作成などを、日本の高給な正社員や派遣社員にやってもらうことが有効なのかどうかを検討したい。

前述したように、中国やベトナムでは、日本語もできて、日本の最新の労働法を熟知している人材がたくさんいる。一つの仕事に3人のチェッカーをつけても日本人の派遣社員よりも安いコストで済んでしまうかもしれない。

IT化によって、地域・国境の差が無くなった今、高コストの日本でこれらの業務をやることは競争力の低下に直結する。高い給料を払う人材にはもっとクリエイティブで生産的な仕事についてもらった方がいいのではないだろうか。

(次回へつづく)


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