アフリカのリカオンとタイの野良犬
私は野良犬がキライである。
理由は単純。昨年道ばたで足をガブリと咬まれ「狂犬病で死ぬ・・」と言う恐怖に3日間苛まれたからだ。
(狂犬病の注射を何度も打ち現在存命中)
バンコクの我が家の周りには十数頭の野良犬が常時たむろしている。
そう言うと、一体お前はバンコクのどんな所に住んでいるんだ?思われるだろうが、バンコク市内の裏路地やコンビニ前、バス停付近などで野良犬を見つけることは実にたやすい。
大抵の野良犬には餌を与えてくれるご近所の住民様がいて、その住民様にとっては「放し飼いにしているペットだ。」くらいの認識であり、それがゆえの無秩序大繁殖だったりなのである・・・。
ご存知のようにタイは常夏の国である。 しかし1年の半分は「灼熱」と言った方がしっくり来る気候であるかもしれない。
アスファルトとコンクリートに覆われ、まるで熱せられたフライパンのようにもなるバンコクで、野良犬たちは日中ぐったりと寝て過ごす。
コンビニの自動ドア前。 開閉のたびに漏れる冷気を求めニンゲン様そっちのけでベストポジションを陣取っている野良助。
適当な日陰で日がな死んだように寝て過ごし、日没後にむくりと起き出しモソモソと徘徊をはじめることゾンビのごとし・・・といった感じ。
あるときディスカバリーチャンネルだかアニマルプラネットだか、どこかの欧米系のテレビ番組でアフリカの野生動物のドキュメンタリーを見た。
犬科のリカオンという動物の狩りの様子にスポットが当てられていた。アフリカのサバンナに数頭の群れで生息し、まだら模様が特徴の犬のような狼のようなヤツである。
カメラマンの腕が良かったのか、夕日のオレンジと微風を浴びリカオンの目がとても美しかった。
・・「とても美しい」とは何とも芸のない抽象表現で申し訳ない。
もっと文才のある人風な表現をさせてもらうと、つまり「凛」としたものをリカオンから感じたのだ。
「凛」・・・ [1] 態度や姿などがりりしくひきしまっているさま。 by大辞林
しかし何故あんな目を持っているんだろう?とリカオンを見ていて思った。
こちらまで背筋がスッと伸びてしまうような、自堕落なバンコク生活をたしなめられているような、禅寺でひと叩きしばかれたような・・そんな気が絞まる感じ。
つまるところアフリカの大自然の中、弱肉強食の中で生死を掛けて生きている生物の目とは皆こういうものなのだろうか。
一方食物連鎖の最高点に君臨している(と思っている)ニンゲン様の小生は、必要以上にエアコンの効いたレストランでおよそリカオンとは対極にある目をしていた・・ことであろう。
このリカオンから、「連想ゲーム」のように私の記憶の中で思い出されるものがあった。
旭山動物園のオオカミだ。旭山動物園は「行動展示」と言う動物達の本来の習性や能力などを来園者に見せる手法で人気を博している北海道の動物園だ。
この園長が言っていた話が実に興味深い。
「もしオオカミを檻の中に入れておくと、犬かオオカミか見分けがつかなくなってしまう。だからなるべくオオカミが暮らしていた環境に近い状況を再現してオオカミとして飼育している」と。
要するに本来オオカミは森で狩をして獲物を確保し、自分の腹を満たし、家族を養う。
そうした“種”としての一連の生き方、生活環境があってはじめて”オオカミ”なのだ、と。
「ほー」と感銘を受け、とても印象に残っていた事なのだ。
アフリカのリカオンも野生のオオカミにも、きっと厳しい自然界での本来の生き様を通してこそ醸し出される生物本来の美、そういった所に「凛」としたものが感じれるのだと思う。
「凛」と言うものは厳しい環境での緊張感の中に生まれる―。
私のアタマの中に住まう「情熱大陸」の渋いナレーターのような声の残像がこの日の思考をまとめ上げ、キメゼリフとして発する。
“「凛」と言うものは厳しい環境での緊張感の中に生まれる―。”
ともかくタイの野良犬には“緊張感”がまるで無い。
日本のように保健所の職員に捕らえられることもなければ、バイクやクルマが側を通り過ぎても臆せず堂々と眠りこけている。天敵が居なければ、番犬としての仕事もナシ、そして飯は残飯だけれどもふんだんにアル。
そして私にも、「凛」とした人間たるべきに必要な「緊張感」という要素が欠けている。(鏡をみれば分かりマス。)
「人のことは言えない。」とよく言うが、日がな寝て暮らすプー太郎のような野良犬のことは言えないのである。
「環境が人を作る」ともよく聞くが、今の自分にも天敵という敵や、ライバルとなるべき相手がいなかったり、見えて居なかったり、そもそも生きていることへの緊張感か物足りなかった気がする。
野良犬よりは、リカオンや野生のオオカミのような野性動物のそれでありたい。
緊張感リストを作るべく、ちょっくら喫茶店にでも行こう。
完
Facebookページに参加しませんか!
『開国ジャパン』は海外経験豊富な開国アンバサダーによる情報発信メディアです。
海外での生活やビジネスなどに興味のある方のために
★各国に駐在しているアンバサダーからの現地事情
★英語などの語学や海外での生活情報
★海外ビジネスの情報
など、幅広く最新の情報を発信しています。
最新記事のチェックにはTwitterが便利です。
更新情報を必ずツイートしています。どうぞ、フォローしてください。
開国アンバサダー
現在89名のアンバサダーが活躍中!
開国アンバサダーは、「グローバル社会で活躍する新しい日本人のロールモデル」 です。開国ジャパンでは彼らの熱い想いを発信しています。
タイ障がい者サッカー指導者
相原 ユタカ (あいはら ゆたか)1979年生まれ。高校卒業後、4年間一般企業で働くが“サッカーで飯を食う”為にタイに飛び、プロサッカ...
AGIジャパン取締役副社長
福島 正信(ふくしま まさのぶ)明治大学法学部卒業後、商社で米国駐在、新製品開発、韓国、台湾、中国の市場開拓、日本市場での新事業立ち...
砂漠ランナー
荒井 志朗(あらい しろう)1983年埼玉県生まれ。東京大学法学部卒。外資系コンサル会社にて経営コンサルタントとして4年間勤務し...
スペイン語翻訳・メディア取材
小原 京子(おばら きょうこ)山口県岩国市出身。上智大学外国語学部イスパニア語学科卒業。 23年間在京スペイン大使館に勤務し、翻...
スキマトーク代表
清水 幸治(しみずこうじ)一橋大学経済学部を卒業後、電機メーカーで中国事業、主に携帯電話事業立ち上げに従事。 北京駐在中、立ち...
チーム開国ジャパン
ピックアップ
-
2013年6月カンボジア・タイビジネス視察ツアー開催!
カンボジアとタイを6月17日~20日の4日間で訪問するビジネスツアーを開催します ...
-
とある関西人、イタリアで女子高生してまんねん。
イタリア・ヴェネチア在住の「高校4年生」によるグローバルコラム連載開始 ...
-
国境を越えるイノベーションに必要な3つの人的ネットワーク
ベトナム在住の小原アンバサダーが提唱する「これからのイノベーションに必要な3つの人的ネットワーク」とは ...
-
「週末アジア視察団」でシンガポールへ!!
2月22日・23日の週末を使ってフラッとビジネス視察に行って、グローバル新時代の未来を語り、学びませんか? ...
-
TOEIC260点からの異国適応能力兼サバイバル能力の育て方
TOEIC260点からMBA留学した長井アンバサダーからのサバイバル提案 ...
-
バンコクで「蹴る・学ぶ・繋がる」フットサルW杯タイツアー
11月7~10日でタイ・バンコクでフットサルW杯の観戦などがパッケージとなったツアーを開催します ...
-
サラリーマン留学記-社費で留学する意味
日系コンサルティング会社から社費で米国留学する佐藤氏からのコラム。社費留学者からの貴重な体験記 ...
-
はみジャパ習慣(2)磯野カツオ氏を見習ってみる。
行動した結果、100点どころか50点すら取れなくても、意識してみるだけでも10点、行動しただけで30点!成績的には可! ...
-
NATOと呼ばれるニッポンジン
「NATO」って・・・・?No Action Talk Only….アジア新興国で揶揄されるそんな日本人の話です ...
-
パキスタンからグローバル人材を考える
パキスタン在住のアンバサダー尾崎氏が自身の多様な経験から独自のグローバル人材像を語ります ...
最新ニュース
-
U18W杯開幕、清宮オコエらで初V期待
夏の甲子園を沸かせた高校生強打者2人が、28日開幕した第27回U−18(18歳以下)ワールドカップ(W杯)で日本代表として世界一に挑む。 ...
-
「ガトリンの復讐」ボルト激突も無事
【AFP=時事】(写真追加)第15回世界陸上北京大会(15th IAAF World Championships in Athletics Beijing)の男...
-
イチのファンサービスに観客感涙
「マーリンズ1-2パイレーツ」(27日、マイアミ) マーリンズのイチロー外野手(41)は「2番・右翼」で出場し、4打数無安打。17打席連続無安打(3四球、1犠打...
-
川栄李奈、初舞台で「おバカ」返上へ
今月4日にAKB48を卒業した女優の川栄李奈が26日、都内で行われた舞台『AZUMI 幕末編』の制作発表・公開稽古に、共演者とともに出席した。 ...
-
世界の若手億万長者30名 日本人は?
フォーブスは世界で最も裕福な40歳未満の 44人のリストを公開した。ここではその中から30名をピックアップ。年齢の若い順に掲載する。 エヴァン・シュピーゲル(ス...