サラリーマン留学記-社費で留学する意味(2)

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前回コラム(1)はこちらから

1.留学を志したきっかけ -衝撃的だったNY研修

留学中の話に移る前に、いったん遡って、なぜ自分が留学をすることになったのかについて話したいと思います。

「海外留学」には昔から何となく憧れていました。大学生の頃、留学予備校に顔を出したり、留学ノウハウ本みたいのを読んだこともありました。でも、何となくのまま月日は流れ、オッサンになってしまいました(笑)

転機は今から4年前。会社の研修制度で、NYに一ヶ月滞在しコロンビア大学をはじめとした幾つかの場所でビジネス&英語の研修を受けました。ここでの衝撃は半端なかった。三つ、今でも強烈に残っているインパクトについて書きたいと思います。

 

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(1)英語の実力不足
まず一つ目、英語の実力不足を痛いほど思い知らされました。昔アメリカにいたことがあって、と言っても幼少の頃の1年だけだったので、半端に「少しだけ」英語は得意だったのですが、いかに自分が中途半端か痛感しました。

非英語圏のヨーロッパの人たちでも流暢に英語を操り、一方で自分を含めた日本人は手を挙げて発言もろくにできないし、おそらく講義やディスカッションの流れすら理解できていない人も・・・アメリカ人の英語に至っては、もう右から左に猛スピードで流れるだけの状態(笑)

日本国内や旅先で話しかけてくるアメリカ人の英語が、いかに日本人向けにゆっくり分かり易くアレンジされたものだったかに気づきました。と同時に、自分の英語ではこれまで深みのあるコミュニケーションが全然できていなかったことも思い知らされました。

「英語は日常会話ができれば十分」「大切なのは語学力じゃない」

日本でたまに聞くそんな話は、詭弁にしか聞こえなくなってしまいました。そんなことを言っていたら蚊帳の外になる、別次元の英語の世界が目の前にあったんです。

易しい英語は、話しかける側にとっては優しさ、配慮のつもりかも知れませんが・・・、なまじ英語に半端に自信があった自分にはとてもショックだったし「日本人は英語ができないからナメられている」と感じるようになりました。

実際、合宿制のビジネス・スクールでは、オフの日のクラスメートの輪から日本人は明らかに外れていました。僕は何とか必死にその輪に飛び込んで行き、とても楽しかったのですが、一方で満足にコミュニケーションが取れない自分のことが情けなくて仕方ありませんでした。

 

 

 

(2)大したことない意見を大切にする文化
次に、この研修で衝撃的だったのが、講義やミーティングでの会話の進み方。大したことないものからおお~っとうなるものまで、玉石混合でみんな手を挙げて喋る!喋る!

僕は、特にこの「大したことない意見」の存在に注目をしました。

欧米の参加者たちは、思いつきっぽくて流れに沿わない意見や、わざわざ聞かなくても分かるだろうと突っ込んでしまいたくなるような質問を、平気で発言する。でも、それがきっかけで授業のディスカッションが面白い方向に行ったり、自分が気づかなかった新しい視点で理解が進んだり、ということが何度もあったんです。この「大したことない発言」文化は、実は凄いぞ、と思いました。

日本人は発言に慎重で、「良い意見/質問ですね」と言われる内容じゃなければ恥をかく、と思いがちです。自分もそうでした。思いつきの発言や簡単なことに質問する人を小バカにする傾向があります。自分もそうでした。でもそれは、新しい発想や深い理解が生まれる機会を潰すことになっているんじゃないか、新しい価値観をミーティングに持ち込まないといけない、と次第に思うようになりました。

 

(3)プロフェッショナルとしての信念
最後に、三つ目に衝撃的だったのは、スクールの講師陣やゲストスピーカーで来た有名企業のCEO、そして自分と同じ立場であるクラスメートの人たちが、みんな強い信念を持って仕事をしていたこと。

病気になった、誘拐されたことがある、出身地が貧困に苦しんでいる・・・・だから今自分はこういう仕事をしている、こういう社会を作りたい。あの場にいたプロフェッショナルの一人ひとり、誰もがそういうCredo(信念)を堂々と持っていました。大企業の一社員でも、そうでした。

そして、上に立つ者ほどCredoがなければいけない、ストーリーテリングができないといけない、という考えが共有されていました。

だからだと思います。みんな、歳を重ねても活き活きしていました

上に立つ人ほど売上げや成果、自社の規模など、数字の話題にばかり終始しがちな日本の官庁や企業の姿を見てきた自分には、とても、とても、衝撃的でした。

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これら三つの衝撃は、自分に不足しているものを痛感すると同時に、色々な意味で世界における日本のあり方について危機感を強く感じるきっかけになりました。

自分の周りで短期海外研修や長期出張から帰ってきた人は、「英語は疲れる。日本語が良い」「みんな大したこと言ってない。日本人はすごい」などと、守りに入るような台詞を口にする人が多いのですが、自分は全然違いました。

当時、自分の好きなサッカーの世界では、2006年のドイツ・ワールドカップでの惨敗を受け、日本サッカーは世界に対してコンプレックスが漂う陰鬱とした時期でした。そこから来る反骨心みたいのが凄くあって、とにかく何の分野でも日本が世界基準から遅れを取っていると感じるのが凄く嫌だったんです。そういったタイミングの縁みたいなものが、間違いなくありました。

 

2.本気で留学へ

社会人になって約5年が経過し、リーダーとして責任ある立場で仕事をする機会も増える中で、色々と頭打ちで悩みもあった頃でした。

NYでの衝撃は、そんな自分の悩みに真正面からショックを与えるものでした。そして、どれもこれも、日本では得られないものばかり。NYでの体験が忘れられず、とにかく外国人と触れ合う機会だけは維持しよう、と、とりあえず自腹で地元の英会話スクールに通い始めたのですが、何か違うし、満たされない。あの一ヶ月では自分はまだこの文化を理解し切れていない、もっとディープに入り込んで自分の知らない世界に染まってみたい、と思うようになったのです。

できることならば今度はビジネス・スクールではなく、自分の専門である政策分野で、外の世界に触れてみたい。

自分の成長のためなら何でも良い、というのではなく、自分の仕事に活きる、より具体的な刺激を受けたい。次第にそう考え始め、MBAのようなプロフェッショナルスクールが政策分野でもないかを調べるようになり、そこでMPP/MPAというプログラムに出会いました。調べれば調べるほど、自分の勉強したいことが出てくる。自分の目指す進路が定まった瞬間でした。

それを後押ししたという意味でありがたかったのは、社内にMPP/MPA留学経験者がいたことと、インターネットでMPP/MPA留学記を書いているブロガーの人々をがいたことでした。

ノウハウ本やネットでの情報が溢れているMBAと比べ、MPP/MPPに関する情報はまだまだ圧倒的に少ない状況です。コンタクトをした皆さんから色々な有用な情報を教えてもらったことは本当に助けになりました(この留学記もそのような一助になれれば!)。留学ブログを通じて知り合った尊敬すべき留学の先輩たちには、実際にお会いする機会もあって、留学中の今でも刺激をもらっています。

この時、既に社費留学に応募する方向で考えていました。やはり私費留学は特に経済面でハードルが高かったことに加え、何より、自分の留学目的はキャリアチェンジではなかったし、今の会社でやりたいことがあったため、会社を辞めてまで私費にチャレンジするモチベーションは特にありませんでした。

 

3.社内選考のカベ -キャリアを見直す転機

しかし社費留学も甘くはありませんでした。実はトライをしようとした1年目、出願すらかなわず失敗しました

多くの会社において社費留学は、社内選考(面接等)→社費留学の資格取得→TOEFL等の受験(※)→大学院出願→合格・留学へ というステップで進みます (※自分の意見ですが、テスト類は社内選考前から前もって取り組むことをお勧めします。でないと、短期間で高得点を取るのは相当困難です)。

社内選考の基準は会社によって異なると思いますが、仕事の業績や英語力、留学の必要性などが考慮されるのが一般的だと思います。

1年目、僕はこの社内選考の段階で躓きました。上司の承認を得られず、社内選考に応募できなかったのです。とても悔しい思いをしたのですが、これについて、後で別の上司から注意を受けました。

「君は留学に行きたい気持ちが強いし、業績や英語についても十分かも知れない。でも何故、社費で留学したいのかが伝わらない。社費留学は君個人の成長のためにあるんじゃない。会社が社員を戦略的に送り出す制度だってことを考え直したほうが良いよ」

今思えば、この言葉がなければ、僕はそのまま留学したところで、きっと漫然と頑張るだけの留学生活を過ごしていたでしょう。

これを機に、僕は「なぜ社費で留学をするのか」「留学先で何をするのか」を徹底的に考えるようになりました。その結果、1年後には自分でも自信を持って「自分を留学に送り出して欲しい」と言えるほどの意義を見つけることができ、社内選考を通ることができました。これは、その後の出願エッセイにも生きました。

後付けの理由探しのように見えますか?でも実際、この過程がなければ、自分は今こんなに充実した留学生活を送れていない、と断言できます。

留学を題材に自分の将来設計をしたあの時期はとても楽しかったし、自分のキャリアを真剣に考える良い転機になりました。そして今、それに併せてトライ&エラーで人生を歩んでいることもまた楽んでいます。

 

留学生活で何をしているのか、自分にとって社費留学の目的は何なのか、これについては次回もう少し詳しく書いていきたいと思います。

 


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