グローバル時代の国益 ~ 矛盾と一筋の光明

こんにちは、開国アンバサダーの野村です。

 

今回のコラムでは、前回のコラムの続きとして、国民国家の現代における意味、その延長線上での国益の意味について、グローバル化の見地から、私の考えをお伝えしようかと思います。

太平洋をバックにSanta Cruzにて

開国アドバイザーのコラムは、イデオロギーの論争をする場ではないと思います。このコラムに限らず、常に、努めて客観事実に基づいて、ものごとを観ています。特定の個人や団体を支持も非難もしません。

 

写真は、 太平洋をバックにSanta Cruzにて(強風で髪型乱れる筆者)。太平洋は、尖閣諸島、竹島まで海で続いている。当然ですが。。。

 

同時に、前回も説明しましたが、国民国家という考え方自体が、グローバル化されていく将来の社会のありようと矛盾があるのでは、と思ったので、コラムを書くことにしました。

 

■  地球儀をみたことはありますか

このコラムを読んでいるあなたは、地球儀をみたことがあるとおもいます。その地球儀には、国境線がかかれていたと思います。

 

国境線には、一般的に言って、2つの分類があるようです。

 

ひとつは、自然的国境といって山や川や海など自然物に基づいて定めた国境。もうひとつは、人為的国境といって経線や緯線など人為的な考えに基づいて定めた国境という考えです。

 

なるほど、分かりやすい分類、と思われがちですが、実は大きな勘違いを含んでいます。

 

というのは、例外なく全ての国境は人為的な国境、といのが正しい考え方なのです。

 

理由は、自然物に基づいていようがいなかろうが、人間以外の生物は、国境など策定しません。地球を宇宙から見て国境線など書いていないのですから。すべての国境は人間が人為的に策定した、という理解が正しいのです。

 

私のオススメは、国境線のない地球儀を購入することです。特に、初めて地球儀をお子様に購入するのであれば、先入観を持たせないよう国境線のない地球儀をぜひ買ってあげてください。

 

無料で済ますのであれば、Google Earthの「境界線や地名」のチェックボックスを外せば、国境なしになります。。。試してみてください。

 

■  国境線の意味するところ

さて、国境線とは、読んで字のごとく、国と国を分ける境界線です。前回のコラムでも言及しましたが、諸説あるなかで、国民国家の成立は1648年のウェストファリア条約を起源とするのが一般的で、ウェストファリア条約にて、国境線という概念が確定したというのも、一般的な理解です。それまでは、フロンティアと称して、境界線はあいまいな場合が多かったのです。

 

国境線と国民国家についての議論の身近な例が尖閣諸島、竹島の問題なわけですが、別のわかりやすい例を以下に取り上げます。

 

このコラムをお読みのあなたは、「ユーゴスラビア」という国をご存知でしょうか。

 

私が中学・高校のときには存在した東欧の国家の名前です。ユーゴスラビア解体後の現在では、スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロ、マケドニアの各国(自治区など考慮せず)が独立しております。

 

日本の一般的な感覚では、ユーゴスラビアが崩壊して社会科で記憶する東欧の国家の数がふえて面倒くさいなあ、というくらいのところでしょう。

 

一方で、ユーゴスラビアは、二度の欧州における大戦をふまえて、平和の理念に基づきティトーが建国した多民族を抱える国家であり、第二次大戦後の理想的な国家のありかたの一つと、私が受けた教育の論調に基づき、私は理解してきました。

 

ですので、ユーゴスラビアの崩壊は、ソ連(共産主義・社会主義)の崩壊という外部要因があったにせよ、個人的には非常にショッキングでしたし、客観的にみても多民族国家の統治が困難であることを証明してしまった一例といえるでしょう。

 

■  ユーゴスラビアの国益はどうなっちゃったの?

個人的な感傷はさておき、国境、国民国家、そして、国益という話題に戻りましょう。

 

ユーゴスラビアの話を恐ろしく単純化すると、こうなります。

 

  • ユーゴスラビアという国家がありました。
  • もともと国内の争いはありましがた、1991年以降、断続的に内戦状態となりました。
  • 紆余曲折あって、現在、各国が分離独立しました。

 

さて、この場合、ユーゴスラビアという国家はなくなってしまったわけですが、ユーゴスラビアの国益はどうなっちゃったのでしょうか。

 

ここは、さまざまな解釈があると思います。そもそも、ユーゴスラビアの国家内部(特に北部と南部の経済格差)の利益相反があって国益が定義できなくなったから国家が崩壊した、とか。または、国家が消滅すると、かつて存在した国家の国益という考え方自体が成り立たない、とか

 

どういう解釈をするにせよ、客観的にいえることは以下です。

 

  • 国家はなくなることがある(例:ユーゴスラビア)。近代国家群のヨーロッパにおいてでさえ。
  • 国益は状況によってコロコロかわる。なぜなら国家という国益の前提自体が不安定だから。

 

■  国益は、うつろいゆくもの、変わるもの

ひるがえって、日本の国家・国益について考えましょう。

 

先の大戦以降、日本の国益は、米国との関係に大きく左右されてきたといえるのではないでしょうか。たとえば、いわゆる冷戦体制における国益に基づく行動と、冷戦後の国益に基づく行動は、大きく異なるわけですから。

 

一方で、日本は化石燃料をはじめとする天然資源を輸入に依存するので、日本という国家の枠組みを考えると、天然資源を確保するという行動は、一貫して国益といえることではないでしょうか。

 

とはいえ、です。

 

ここで考えていただきたいことは、先のユーゴスラビアの例のように、国益というものは、変わるものだということ。そもそも、国家という枠組みすら、なくなりうるものなのですから。

 

■  誤解なきよう、補足します

ここで、誤解なきよう、いくつか補足します。

 

私個人は、日本国を愛しています。愛国心はあります。千代に八千代に、日本国が繁栄することを強く望んでいます。日本という国家をなくそう、なくなったほうがいい、などということは、私は考えていません。

 

同時に考えるべきは、国家という枠組みはなくなることがあり得るという客観的事実です。

先のユーゴスラビアの例を挙げるまでもなく。

 

ですので、国家を前提とした国益は、不安定であり、状況によって変わるということが、私が言いたいことです。

 

また、前回のコラムでお伝えした通り、社会がグローバル化する中で、国民国家という考え方は、耐用年数を過ぎている、制度疲労をおこしている、という問題提起をしました。

 

今回のコラムの文脈でもうひとつ考え方を紹介すると、「民族自決」という考え方があります。民族自決の考え方は、米国大統領ウィルソンが提唱し、第一次大戦の講和条約であるヴェルサイユ条約での原則となり、その後の民族独立の主要な指導原理のひとつになったとされています。

 

民族自決は、植民地を解放し、世界各地に国民国家を成立させた、美しい理念です。一方、グローバル化する社会においては、国民国家や民族自決という考え方と相容れない思考をしていくべき箇所があるのではなかろうか、ということが、私がここで問題提起していることです。

 

■  領土問題でトクした人は誰?

ここまで考えたうえで、尖閣諸島、竹島の問題を考えましょう。

 

たしかに、地下資源や漁業権の問題、国家としてのメンツの問題、日中韓それぞれの国における国内政治問題など、様々な問題が絡み合っています。先の大戦を含めた歴史問題、それと深く関連した、軍事力の問題、などなど。

 

一方で、経済的な面からみると、今回の一連の騒動は、何をもたらしたのでしょうか。

 

具体的な例としては、ここ1-2年、中国で日本車の売れ行きがイマイチ伸び悩んでいる状況において、中国でナショナリズムが台頭して日本車の売れ行きが不振になりつつあります。これは、日本の国益にかなっているのでしょうか。

 

中国に工場進出した日本企業は、今回の暴動をきっかけに中国のカントリーリスクを認識し、中国離れ、いわゆる「チャイナ・プラスワン」が加速し、中国以外への工場移転が加速するわけです。これは、中国の国益にかなっているのでしょうか。

 

日中、日韓の関係において、お互いに不買運動をつづけたり、企業活動の停滞など経済的なつながりで負のインパクトをお互いに与えたりして、なにかいいことあるのでしょうか。だれがトクしているのでしょうか。

 

国民国家である日本を前提とした国益を標榜する人や、ナショナリズムを標榜する人の溜飲は下がったのでしょう。一部の政治家は、国民からの支持率がアップしたかもしれません。

 

同時に、溜飲さげる代償として、一部の政治家の支持率アップの代償として、経済的ダメージが広がっているわけです。

 

■  グローバル化される世の中で、国益をどうみるか

経済的な側面からみると、グローバル化は、不可逆な潮流です。

 

たとえば、世界中に事業展開している巨大企業に「発祥の国に戻って国内に限定した企業経済活動をしなさい」というバカな話は考えられないです。

 

そもそも、発祥の国以上に海外で売上・利益を稼いでいる企業は、たくさんあります。もちろん、日本企業でも同じことが言えます。であれば、日本の国益を考えるにあたり、世界中で事業展開する日本企業の活動を円滑にすることに着目したほうがよいのではないでしょうか。

 

何度も同じこと申し上げていますが、グローバル化する社会においては、国民国家/民族自決という考え方自体が制度疲労を迎えているといえるのではないか。これが私からの問題提起です。

 

国民国家/民族自決という疲労した制度を前提としての領土問題の議論ということに気付かず、感情に基づいてやれ経済制裁だ、不買運動だ、などという行動をとると、本質的な国益を見誤るのでは、と私はおもうわけです。

 

■  理想を、あえて語ると

誤解を恐れず、私の上記の理解に基づく理想を語りましょう。簡単にいうと、極限までの「政治と経済の分離」が、理想ではないか、と考えます。

 

日本という国家がこの先どうなるかは、誰も分かりません。ユーゴスラビアの例とおり、国家という枠組み自体がなくなる可能性だったあるわけで。ですので、国益という、うつろいゆくもの、変わりゆくものの定義を、よくよく考える必要があります。

 

よくよく考えた結果として、現在日本国とされている地域に住む住民・人民が将来に渡って豊かな生活を営むことを目的とする行為が国益に基づく行為となるのであれば、経済的な活動、つまり、企業活動の足かせになる行為は、国家(国民国家)は厳に避けるべきです。

 

将来、グローバル化された社会において、国民国家としての日本が崩壊しようが、変化をとげようが、現在の日本に居住する住民・人民の幸福と利益を最優先しませんか。

 

分かりやすい具体例をあげると、ポピュリズムに阿ったのか、個人的信条なのかわかりませんが、どこぞの知事が尖閣諸島を購入するという意向を示したからといって、過剰反応して国民国家の日本国が島を国有化して中国を刺激する必要はないわけです。

 

また、このような国有化の議論に日本国民が過剰反応するのも、問題だと思います。せっかく、税金で高い給料はらって諸外国との交渉の専門家として外務省の役人を雇っているのだから、交渉は、彼らにおまかせするのがベストです。

 

また、日本国という国民国家のレベルの税金で外務省の役人は雇われているので、同じ国民国家というレベルで成り立つ諸外国と交渉するには適した人材です。

 

一方で、グローバル化する社会を見越した、私を含む経済人・個人レベルの諸外国との付き合い方は、日本国というレベルではない付き合いをする。

 

企業や個人は、国家という枠組みと関係なく、利益や便益といった経済的な合理性に基づく付き合いをするというのが正しい道ではないでしょうか。

 

こういう態度が、グローバル化の時代に合致した、合理的に将来の国益を確保する態度と考えます。最終的に、現在の日本国という枠組みに居住する人民・住民にとって、幸せな将来を実現する方法なのですから。

 

ですので、政治と経済の完全分離、つまり、領土問題という国民国家レベルの政治問題は、企業の経済行為と関係ないという合意のもと、日中韓が交流するという考え方が、グローバル化する社会において、日本を含む各国の国益を最大化する方策と考えます。

 

■  一方で、現実は、、、

ここまで、ある意味、理想的なことを書いてきました。しかし、現実問題としては、なかなかうまくいかない。

 

なぜかな、と悩んでいたときに、以下のふるまい よしこさん(ツイッター:@furumai_yoshiko)さんのツイートを読みました。

 


「政治って民間や文化の交流を呑み込む。並列じゃない。」

 

そうなんだよね、と、深く、納得しました。その通りです。

 

やはり、現実として、政治は民間(経済行為含む)や文化の交流レベルを、まさに「呑み込む」のです。呑み込んでしまっている現実が正しい、間違っているという議論しても意味がないです。

 

現実は、政治と経済は並列ではないのです。現実を否定しても話が始まりません。

 

■  未来に向かって確実な一歩を

じゃあ、民間(経済)や文化の交流は、常に政治に翻弄されてしまうのでしょうか。

 

残念ながら、基本的な回答としては、Yesとならざるを得ないと思います。やはり、現在の国民国家を前提とした政治的な枠組みは、前回のコラムでもご説明したとおり、軍事的な裏打ちがあるので、現実として民間の経済・文化的な活動は必ず影響を受けます。

 

ただ、今回の中国の不幸なデモに関連して、一筋の光明が見えるようなこともあるのです。

 

これもまた、前出のふるまい よしこさんのNewsweekの記事「それでも日本は走りつづける」に、トヨタ自動車のデモ後の対応のことが書かれています。

 

この記事から、以下を引用させてもいただきます。

 


トヨタが今月8日から始めた、先月のデモで破壊された車に対する無償修理サービスに寄せられた人々の声を読んでいた時だ。トヨタは連休明けから今月末まで に、同車ブランド車に対し、保険の顧客負担修理費用をトヨタが負担して修理する「顧客ゼロ負担」を実施することを明らかにした。今、これを伝えるニュース が大きな反響を呼んでいる。

 

この記事を読んだとき、正直に言って、私自身、非常に感動しました。一瞬、アタマの中が真っ白になりました。ああ、これぞ「マーケットに立ち向かう=マーケティング」なんだな、と。

 

私がここで多くを語るまでもないと思います。

 

こういった、トヨタ自動車の英断もさることながら、日中韓の各国での草の根レベルも含めた地道な経済的な活動、働きかけが、明るい将来をつくり、日中韓各国の国益につながるのだ、と強く信じて疑いません。

 


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