誰もが心配するミャンマー治安の実情
東南アジア最後のフロンティアと呼ばれるミャンマー。多くの人はミャンマーについてどのようなイメージを持っているだろうか。
- アウンサンスーチー
- ビルマの竪琴
- 軍事政権
そんなところだろうか。
ミャンマーという国は大きい。インドと中国という大国に挟まれ、東隣には経済発展著しいタイがある。ラオスやバングラデシュとも接しているため、5か国と陸続きでつながっている。面積は67万平方キロメートル超で日本の約1.8倍だ。しかし、前回の記事でも述べたように中立の立場を採るという政策を誤り、長い間鎖国状態にあったためにミャンマーに関する情報はあまりにも少ない。
情報がないが故に、「ミャンマーへ行く」というと「治安は大丈夫か?」と身の保障を心配する声が聞こえる。
ミャンマーには7つの管区と7つの州がある。管区はミャンマー中心部に広がる平野を中心とし、第一の都市ヤンゴンや第二の都市マンダレーなどミャンマーの主要都市はいずれも管区に属している。
一方で州は独自の歴史、文化を持つ民族が多く住む場所である。シャン州、カチン州、チン州など彼らは独自の言語をも持ち、未だに独立心が強い。
ミャンマー政府は表向きではそれらの州に存在する民族の独立を主張する軍組織と停戦協定を結び、平和的解決へ向けて前進していると発表しているが、実際のところは未だに戦火を交えることも少なくなく、決して安全な場所とは言えない。
主に山岳地帯に住む彼らがいる州は隣国と接している。正直なところ、ミャンマー政府は未だにそれらの地域を制圧しきれていない。それ故に、ミャンマーへ陸路で入国することは事実上不可能なのだ。タチレイというタイとの国境の町があるが、タイからミャンマーへ入国することはできてもこの町から陸路でヤンゴンなどに行くことは非常に難しいし、何より治安上危険である。
最近では外国紙でもロヒンギャ問題が取り上げられるようになった。ロヒンギャ問題が起きている州はラカイン州という州で、ミャンマーの西端に位置し、バングラデシュと接する州である。ここではビルマ族とロヒンギャが対立しており、強姦・焼き討ち・虐殺などが起きており、ミャンマー政府としても有効な解決策を見つけられずにいる。
中央政府に従順な管区があり、中央から遠い場所には独立意識の高い武装した州がある・・。
江戸時代の幕藩体制のように感じるのは私だけだろうか。
ミャンマーはまさに鎖国された国なのである。
根深い問題を抱える州とは裏腹に管区は極めて平穏である。
私はヤンゴンに住んで半年になるが、今まで一度も犯罪を目撃したり、身の危険を感じたりしたことはない。
時折、遠くの州から紛争で死傷者が出たというニュースが入ってくるがヤンゴンではなんのその。たまにデモが起きたりはするが、団体同士の衝突などはない。それはまるで別の国で起きていることのような扱いだ。さすがに今年6月頃にラカイン州でビルマ族とロヒンギャによる対立で50人もの死傷者が出たというニュースが伝わった時にはヤンゴンでも緊張感が走ったが、特に何もなかった。
私は現地の人と同じものを食べたり、同じのものを着たり、同じような生活を送るのが好きなので外国人は滅多に乗らないと思われるボロボロのバスもよく乗る。経済的に余裕のある人はミャンマー人でも皆タクシーに乗るのでバスに乗っている人といえば苦しい生活をしている人たちだ。すなわち、乗客同士で争いが発生したり、ひったくりや、窃盗などが起きたりしてもおかしくはない。しかし、今までこういった類のことは起きていないし、聞いたこともない。
日本以外の国で夜中零時を回っても安心して外出できる国は少ないように思う。その国がミャンマーだ。今まで50か国近くの国に行ったことがあるが、多くの国で夜間に外出したいとは思わなかった。どうしても夜間や早朝に移動しなくてはいけない時は非常に緊張感を持って行動した。外国では当たり前のことだが、ミャンマーではその緊張感が杞憂に終わるほど治安は良い。
尺度がわからないが、日本よりも治安が良いという声も聞こえるほどだ。
マレーシア人の同僚は母国の治安は非常に悪く、ミャンマーの治安は相当に良いので母国には住みたくない、という。彼はミャンマー人と結婚したが、ミャンマーに住むことを決めた大きな理由のひとつが治安の良さだそうだ。
あくまでも私の感覚ではあるが、ヤンゴンにおいての治安は全く問題ないように思う。しかし仕事や観光で州へ行く際には十分情報を入手し、無理しないことが絶対であろう。なお、ヤンゴンに住んでいても入ってはいけない世界に入ってしまえばどうなるかはわからない。これは日本でも同じことである。さらにミャンマーでは未だに政府の力、軍の力が非常に強いのでその関係者と付き合う際には十分に注意しなければならない。
情報が少ないが故に治安が心配されるミャンマーだが、実情は非常に治安の良い国である。ミャンマーを訪れた訪問者はきっとその治安の良さに拍子抜けするであろう。
私が初めてミャンマーを旅行して感じた治安の良さと、住んでみて感じた治安の良さは未だに変わりがない。経済発展することによって治安が悪化するかもしれないが、敬虔な小乗仏教徒である彼らがこれからも変わらずに治安を維持してくれることを切に願う。
さらに中央政府と州が和解し、身の危険を心配することなく誰もがミャンマー国内を自由に移動できるようになることを願っている。治安の維持、良化はこの国の発展を大いに助けることになるであろう。
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