MTV EXIT ~ミャンマーで開催された歴史的ライヴ~
12月16日。2012年が終わろうかというときにミャンマーの経済首都ヤンゴンにて外国人アーティストを招いての史上初のライヴが開催された。
MTV EXIT -End exploitation and trafficking- というサブタイルのついたライヴは音楽の力で人々を集め、人身売買の現状を多くの人に理解させ、やめるように訴えた啓蒙活動の意味合いを強く持ったライヴだった。
スポンサーにはUSAID、AusAID、UNICEFなどの欧米系NGO機関とミャンマー資本の民間企業も多数入っており、会場ではJICAの文字も見受けられた。
チケットは無料で、事前にウェブサイトで登録をした後に指定された場所で受け取る方法と、特定の場所に並んで取得する方法の二種類だった。事前に配布されたチケットは50,000枚とも100,000枚とも言われており、正確な配布枚数は不明である。
このライヴの最大の目玉はJason Mrazで2008年にリリースされた「I’m Yours」という楽曲が有名で、多くの人が一度は耳にしたことがあるかと思う。
ミャンマーで外国人アーティストが大規模なライヴをするのは史上初めてのことで、非常に注目度の高いライヴとなった。
何万人を超す人々が一度に同じ場所に集まる。
ミャンマーにとっては全てが初めてのことでこれらを制御し、管理することは容易なことではない。
他国との国境に位置する州では軍閥と国軍との衝突があり、ミャンマー全土で見た場合には未だに治安は不安定である。反政府グループにとって中央政府の信頼を失墜させ、混乱させるにはこのような機会はまさに絶好の場といえる。実際ヤンゴンでは2010年の4月には反政府グループによる爆弾事件が起きている。(死者10人、負傷者168人 ※外務省発表)
日常生活で身の危険を感じることは皆無だが、スーパーマーケット、ショッピングセンターなどの入り口で目視による荷物検査と金属探知機による検査があるのはそのためだ。
この理由から私の友人のミャンマー人はリスクを懸念してライヴに行かなかったほどだ。
入場場所、開場時間、開演時間が事前に知らされることなく、情報が錯綜する中で入場が始まった。入場場所は数か所あったが入場者に対して圧倒的に少なく、数珠つなぎになった人の列は一向に消化されない。
入場開始が始まってから数十分経つと、木や竹で作られたバリケードが何者かにより破壊され、そこから大量の人が一気に会場内へと流れ込んだ。そこから入った人々に対して当然セキュリティチェックなどは一切ない。秩序が崩壊する中で暴動などが起きないものかと心配したが、場内の敷地が広大だったために混乱状態だったのは入り口付近のみで、入場後の人々はかなり落ち着いていて安心した。
Jason Mrazは最後の演奏者で、その前にはミャンマー人の有名歌手やタイのロックバンド・Slot Machineなどが楽しませてくれた。
当ライヴが開かれた場所はミャンマーの象徴であるシェダゴンパゴダが見下ろす人民公園で、シェダゴンパゴダを背にして設置されたステージの位置が絶妙だった。
約2500年もの歴史を持つシェダゴンパゴダと良質な音で聴く近代的な音楽に多くの人々は酔いしれた。
歌と歌の間には人身売買の現状を訴える動画が流れたり、ステージ上でNGO機関などの代表者がそれぞれの想いを訴えたり、エンターテイメントの部分だけでなく、啓蒙活動も強く意識されたプログラムだった。
MTVによると観客動員数は7万人。
私も治安を心配したが杞憂に終わり、最初から最後まで喧嘩騒ぎや暴動が起きることはなく、多くの人が素敵な時間を共有できた素晴らしいイベントだったように思う。
何を「民主化」と呼ぶのか非常に難しいが堂々と自分の意見が言える世の中にミャンマーはなりつつある。この国は確実に前進している。そのように感じた一夜だった。
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