カンボジアでは乾杯が永遠に続く

 カンボジアでは『乾杯』のことを

『ジョルケアムオイ』と言います。

僕はこの言葉を必死に『ジョルケアモイ?』→『No〜』、『ジョルケアムイ?』08→『No〜』みたいなやり取りを繰り返ながら、

(カンボジアでは同じ”ウー”でも口をとがらせた”ウー”、口を横に開いた”ウー”、口を半開きにした”ウー”があり、微妙なニュアンスがとても難しいです)

満を持して乾杯に合わせて、『ジョルケアムオイ』と言うと、今度は『NO〜、ジョルケアピー』と言われて、笑いの渦でした。

『え??え??』ってなって確認すると、

1回目の乾杯では『ジョルケアムオイ』、2回目の乾杯では『ジョルケアピー』、そして3回目の乾杯では『ジョルケアバイ』となり、、、延々と続いていきます。

言語は文化を表すと言いますが、その通りでカンボジアでは一度の飲みで何回も乾杯が繰り返されます。一度数えようとしたのですが、20回目で数えるのを辞めました。

日本ではせいぜい途中で話が盛り上がって『まだまだ飲みますよ、乾杯』とか『一緒に飲むの久し振りですね、乾杯』とか途中から人が遅れて『乾杯』という形で、何かの区切りや仕切り直しであったり、乾杯の音頭が飲み会の中で役割を持っていると思います。

その点カンボジアでは全く意味はないです。  

もちろん遅れて来た人間が輪に加わると『ジョルケアムオイ』ですが、大げさでなく5分に一度は誰かが『ジョルムオイ』、『ジョルケア』などと言えば、その度に乾杯します。

(厳密に1回目、2回目、3回目というより1〜2回目くらいまでのカウントで後は略して『ジョルムオイ』や『ジョルケア』が多いです。)

そして掛け声の度に『俺とは乾杯しないのか?』みたいなジェスチャーでグラスを持ったまま向かいの席の人を見て、笑いが起こりながら、『ジョルムオイ』

『お前とは乾杯しない』みたいに、サッとグラスを引いて、笑いが起こり、『ジョルムオイ』

また他の掛け声が聞けることもあります。

『ルーダラサクサアー』(これは小さいダや小さいサの発音のようで不確かです)

といいながら乾杯する時には、グラスを空けないといけません。

直訳でいうと『きれいなお肌のために一気飲みをしよう』みたいな訳になるそうです。

これも何の脈絡もなく、急にこのお洒落な掛け声を誰かが使うと周りが後に続きます。

そして空になったグラスにビールが注がれると、そこでまた『ジョルムオイー』 

本当にカンボジアの飲みの席は楽しいです。

そう飲みの席で一番楽しい『乾杯』の瞬間がカンボジアでは永遠に続くのです。

これもタイの『マイペンライ』(タイ人の気質とも言われる”気楽に行こう”の意)に通ずる、

南国気質の何でも楽しくという文化かもしれないですね。

ただこのレストラン、トイレの場所を店員さんに聞いて扉を勢いよく開けると、どうやらトイレが家の中にあるシステムだったみたいで、男の人が赤ちゃんを寝かしている瞬間でした。

部屋の中は真っ暗

男の人の眼ん玉と歯とトイレの光だけ明るかったです。

にらみつけられたように感じ、ビクビクしながら、お邪魔します状態。

気を遣いながら、トイレを済ませて扉をゆっくり締め、おじぎをして店内に戻りました。

そんな飲みの帰り道に電気を灯してパンを包装している作業中のお店を発見しました。

覗くと多くの女性がパンを包装していました。まだ店が空いていないから朝の6時にまた来て欲しいとのことでした。

仕方なく、諦めて引き返して歩いていると、後ろから何やら叫ぶ声がします。

振り返ると、さっきの店員さんの一人が

 

『これこれー!!』みたいに白い箱を片手に叫んでいるので、

(店長)『もういいじゃない、これ売ってあげなさいよ。あんた持って行っておいで、ほら。』

みたいな会話があったのかなと想像しながら、お店に戻り、白い箱を開けました。

すると夜食の残りと想像出来るピザの2切れと半分かじられたフランスパン

『あんたお腹空いてるんでしょ?よかったね』と語っているような満面の笑みで嬉しそうに渡されました。

周りを見ると、『よかったじゃん』とgood luckポーズをしている笑顔のおばちゃんもいます。

レストランで子供を起こさずにこっそりとトイレを済ましたことも、もう何が正しいのかなんて分からなくなりました。

カンボジアで働いている日本の方にお話を聞いていると、ビックリするように同じことを話される方が多いです。

『最初は驚くんだけど、カンボジアで生活すると人間の本来の姿を見ることが多いんですよ。こっちに慣れちゃうと何か日本の生活が臭いものに蓋をしたような人工的なものに感じちゃうんですよね。』

そんな言葉を思い出しながら帰りを歩いていると、

『その白い箱は何?』と歩いている女性とその弟に話し掛けられ、箱の中身を見せると『俺たち今からそこで飲むから一緒に飲もう。』『一人で食べるよりいいだろう?』みたいな感じで、『こっちに住んでるの?』『練習は明日ないの?』『練習は明日の朝は休みだよ』って話から、気付けば5人で飲むことになりました。

 

 

道路に椅子と机を出しただけの参加費1人2$のアンコールビールと屋台のおかずとピザが二切れ、かじられかけのフランスパンが並んだ飲みの席が始まりました。

 

 

同じように『ジョルムオイ』が何度も繰り返されるプノンペンの路上で、

その度にビールを高く掲げて、

コップがぶつかるボゴっという音と笑い声が明け方まで響いていました。

 

 少し前までは内戦が続き、総人口の3分の1から4分の1が虐殺されたとまで言われ、目の前で周りの人間が死んでいくことが普通だった時代でした、

 

 飢餓で死んだ人も多く、お腹を空かせた男の人が犬を殺して食べると『犬を独り占めして食べた罪』で翌日には虐殺された時代、

 

 知識層を恐れたポル・ポトによって字が読めるだけで連行され殺され、果てには眼鏡を掛けているだけで殺された時代。

 

乾杯の楽しい瞬間を永遠に続かせようとする『ジョルムオイ』の文化が、それでも前を見て明るく生きていこうとするカンボジアという国の姿に重なるように感じられました。

次の日、マスターに『毎回楽しくて、いい文化ですね。』って伝えると、

『よくないよー、だってジョルケア100の時には死んでしまうからね』ってフラフラになったジェスチャーでおどけるマスターでした。

 

 

 

 

 

 

 

息子さんの誕生日にケーキを食べさせてもらうマスター。

 


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