【コラム】ミャンマーで受け取った「歴史のバトン」

eyecatch_Ohmura

■「尊敬」と「民族への誇り」

僕は、人との関係の中でとても大切にしているものがあります。それは【尊敬】です。ミャンマーをはじめとして、東南アジア諸国で現地の医者・看護師をはじめとする様々な方々と接する事があります。もちろん目の前にしている方への【尊敬】は当たり前ですが、文化・生活様式・倫理感・言葉など全てにおいて【尊敬】をする。これは本当に重要なことだと教えてもらいました。

ミャンマーで、サイクロン被災地へ緊急支援をしていた時のことです。ミャンマー人スタッフのKは、食事をするにも、何をするにもそのチームの代表である僕の後にする習慣がありました。当然普段から上司である僕に対しては何も言いません。文句も言わず寡黙に活動をしている。そんな彼と被災地の奥地に船で4泊した時のことです。その船は、ボートを大きくしたようなもので、トイレから食事まで4泊ずっとその中で行います。寝床は狭い船の床で雑魚寝で寝るため、となりのスタッフとの顔がわずか10cmほどしか離れていない状況になっていました。

そんな状況に耐えられず、寝る姿勢を皆で色々と調整していた時のことです。僕の足をある方向に向けて寝るような形にすると皆がうまく寝ることができ、やっと安心して寝ることができると思ったその時、Kから初めて「先生、その姿勢は仏様に足を向けるからだめだ」と忠告を受けました。

日本人の感覚だと、仏様に足を向けることよりも、自分たちが快適に眠ることができる事をついつい優先してしまいがちですが、相手が大切にしているものへ足を向けてしまっていることに気が付かない自分が非常に恥ずかしく感じました。そしてスタッフのKがどんな思いで僕に忠告をしたのかを考えると、この文章を書いている今も恥ずかしく思えます。

 

Ohmura_Oprerationこの【尊敬】に加えて、もう一つ教えてもらったことがあります。それは【自分の民族への誇り】です。ミャンマーでもネパールでもそれぞれの国独特の価値観があり、更には人によってもその価値観は変わっていきます。ただ、彼らは総じて自分の国や民族に対する誇りというものは、僕たちでは想像の出来ないほどのものがあります。逆に言えば、日本人の価値観は、実は一番曖昧なものなのではないかと、彼らの中に入ってみて感じさせられました。

日本がこれから世界と対等に渡っていく中で、価値観を色で例えた場合に、自分の色が何色なのか?ということを意識する必要があるのではないかと思います。日本が青色で、韓国が黄色だった時に、今日本と韓国が何かを成し遂げる際には、青色と黄色が混じって緑色になるのではなく、限りなく黄色に近いものができあがってしまうのではないでしょうか。

自分の色が何色なのか?すなわち、自分の出身国である日本という国はどのような国なのか?ということを、自分なりに理解し、相手に伝えること。譲ることのできないことを明確化する事というのは、非常に重要なことですし、その意識を持って初めてグローバルになれるのではないでしょうか。

【尊敬】【民族への誇り】この二つを完全に無視した形でその国へ入った最悪の例が、僕の大好きな国ミャンマーで僕が滞在中に起きてしまいました。※もちろん、殺したり誘拐したりすることが良い解決法ということは全く思いません。

しかし、相手の文化を【尊敬】せず、【民族への誇り】を自分たちの国で行われている民主主義とか、言論の自由という尺度で踏みにじってしまう、その人達も改めなければならない点は大いにあると思います。

※編集部注:2008年、民主化を求める僧侶や市民のデモをミャンマー軍事政権が鎮圧する事件が発生

 

■「歴史のバトン」みなさんはいつ受け取りましたか?

皆様は、「歴史のバトン」を受け取った経験はありますか?

「歴史のバトン」とは、エピソードは何であれ「自分の祖国は日本であること」を強く意識するようになるきっかけのことを言います。僕個人としては、これをもって初めてグローバルという言葉を理解するスタート地点に立てたんだろうと思っています。

旅行だったり、留学だったり、恋愛だったり、いろいろあると思いますが、僕が歴史のバトンを受け取ったエピソードを紹介させてください。4年前の終戦記念日に、ミャンマーにある日本人戦没者の慰霊碑を訪れた時の事です。実はその数週間前から、戦没者に対面する時、僕はどのような気持ちで向き合えば良いのかわからず、毎晩毎晩考えこんでいました。

結局その当日の朝になっても分からず、サガイン(土地の名前)の丘の碑に行くまで馬車に揺られていると、戦没者の関係者である日本人が供養の目的で建てたであろうお寺が沢山ありました。そのうちの一つに入った時の事です。お寺の中は埃だらけで、仏様や昔の日本軍の物も、蜘蛛の巣や埃まみれになっていました。気を取り直して、日本人が祭られている碑のある敷地の一番奥に行っても、その碑は、積もり積もった落ち葉で埋もれていました。そのお寺の下に眠っているのは日本人です。

そのお寺を戦没者の供養のために作ったのも日本人です。そのお寺を放置して、埃まみれにしてしまっているのも日本人です。そのお寺を任されているミャンマーのお坊さんを責める気には到底なれませんでした、何故こんな状態になってしまったのか、釈然としない気持ちを胸に、碑を掃除して寺を後にしました。

丘の頂上にある日本人の碑に到着すると、その碑には多くの戦没者の名前が彫られています。きっと、この丘から見渡す土地のどこかに眠っている人たちでしょう。その人たちを奉るこの碑ですら、残念ながら道中のお寺と同じ有様でした。先ほどのお寺で感じた、何か釈然としない気持ちのまま、一つ一つ積もっている落ち葉を掃除していると落ち葉が無くなり、碑がきれいになっていきました。それと同じように、自分の気持ちがゆっくりと、落ち着いていくのがわかりました。

自分にとって、時代の違う距離があると思っていた戦没者が、異国の地で埃まみれのお寺や、落ち葉の積もっている碑の下で眠っている現実に直面した時、自分の中のある気持ちに気が付きました。

落ち葉を掃くたびにその気持ちが強くなり、それと同時に更にもう一つの事に気が付きました。それは、僕の曽祖父である大村能章は、「同期の桜」という軍歌を作曲しています。今まで僕は、曽祖父の作った曲など、意識の奥底に埋もれている事柄でしたが、今これからご挨拶をしようとしている戦没者の方々は、自分の曽祖父の作った曲を口ずさみ、胸にしながら亡くなった方々なのではないか?ふとそんなことが突然頭の中によぎりました。

自分の逢った事のない曽祖父が間接的にでも関わっているであろう方々に日本から遠く離れたミャンマーで、時代を超えて接点を持つことが出来たその衝撃は、僕の人生を大村和弘一人の人生から大村家、そして日本の歴史の上を歩く人生にしてくれた大きな出来事でした。

Ohmura_myanmar 時代を超えた出会いをもたらしてくれたこの碑の掃除が終わったころには、今まで悩んでいた自分が嘘のように、「戦没者や祖先に恥ずかしくないように自分が生きていく」という決意を持ち、戦没者にご挨拶ができ、そしてこれからの人生を歩いていく道標ができました。

自分は日本の歴史の延長線上を歩いている人間なんだということを感じることができたことにより、自分の祖先への感謝や、責任というものをより強く感じることができるようになりました。

皆様におかれましては、いかがでしょうか?まだお持ちでない方は意識をしてみると、意外に身近なエピソードとしてお気づきの場合があると思いますし、もうお持ちの方は是非そのエピソードを大切にされて、その「バトン」を次の世代に渡していただければと思います。

<了> 開国ジャパンプロジェクト

 

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