収まりを見せないミャンマーの宗教対立  ~穏やかな国民性の裏で~

5月の25日と26日両日、安倍総理大臣がミャンマーを訪問し、アウン・サン・スーチー女史、テインセイン大統領との会談を行った。

既に決まっている円借款(510億円)に加えて400億円の無償資金・技術協力を供与することを伝達。さらに残高約2000億円の債務を免除する方針も示唆した。

このニュースは日本・ミャンマーの両国で大きく報道され、両国の関係性をより強固にしたように思う。

 

さて、このような華やかなニュースの脇でミャンマー国内問題は未だに深刻な状況にある。前回のコラムで宗教対立について述べたが、結局ヤンゴンにおいては杞憂に終わった。

しかしながら地方では未だに緊張状態にある。

5月28日にシャン州最大の都市・ラーショーにて仏教徒とイスラム教徒の衝突が起こった。シャン州というのはタイ、ラオス、中国と国境を接する広大な面積を持つ州であるとともに多くの少数民族を抱える州だ。米や野菜、果物などの作物の産地としても有名でヤンゴンでもシャン州産の食べ物を見かけることは多い。

※地図

メディアなどの報道によると、事の発端はイスラム教徒がガソリンを仏教徒女性に対してかけて火を放った。その原因は報道されてはいないが、この報道に対してイスラム系メディアはその者はイスラム教徒ではない。と反論している。しかし僧侶を中心として一部仏教徒が暴徒化し、イスラム系孤児院や商店に火を放ち、市内は動乱。結果、ラーショー市には夜間外出禁止令が出された。

以下、日本大使館より翌日(29日)配信された情報

1) 28日、シャン州ラショー市において、ビルマ系住民がモスク及び商店等を焼き払うなど治安状況が悪化し、当局は夜間外出禁止令を発出しました。
2) 28日午後4時頃、シャン州ラショー市において、道路沿いでガソリンを販売していた女性(仏教徒)と口論となったイスラム教徒の男が、この女性にガソリンをかけて
火をつけるという事件が発生しました。
3) 警察は、すぐにこの男の身柄を確保、連行しましたが、仏教徒の住民が警察署を取り囲み、この男の身柄を引き渡すよう要求、警察側がこれを拒否したため、一部住民が暴徒化し、警察署周辺に駐車されていたオートバイに火をかけ、市内のモスク及び商店等家屋を破壊するという行動に及びました。
なお、現在、現地では多数の警察官が配置され、治安は安定している模様です。

私が住むヤンゴンではこのような大きな衝突は未だ起きていない。なぜ地方都市では発生しやすいのか私なりに考えてみたが、地方都市には有力者が数人おり、彼らの影響力は非常に大きい。彼らは地方の役人と癒着しており彼らの思い通りにすることが容易であろう。加えて地方は都市部と比べて全体の教育レベルが著しく低い。権力者が教育レベルの低い民衆をコントロールするのは難しいことではないように思う。有事の際には権力者に頼らざるを得ない状況となり得るので、故意に動乱を起こすことができるとすれば彼らの権力を増すための良い機会となる。これは噂の粋を出ない情報だが、暴徒化の主導者である僧侶たちは軍と密接な関係にあり、そこには大きな利害関係があるとされる向きもある。

ミャンマー国民は約6000万人おり、そのうちイスラム教徒は4%のみとされている。彼らは非常にマイナーであり、常に差別の対象にあるのは言うまでない。宗教対立が起きた際に、逮捕され、有罪判決を受けるのはイスラム教徒であるし、放火される施設も決まってイスラム系施設だ。仏教徒の住む家が燃やされた、という話は聞いたことがあるが寺が焼き討ちされたというのは聞いたことがない。私はどちらかに加担するつもりはないが、仏教徒のやり方はあまりにも不公平だと思う。このままでは両者のいがみ合いは終わりそうにない。

これだけ書いてしまうと、ミャンマー人というのは野蛮な民族だと捉えられてしまう可能性があるので弁明させてもらう。

宗教問わず、基本的には物凄く親切で親しみやすい国民性をもつ民族である。特に田舎に行くと彼らの純朴さに癒される。経済発展著しいヤンゴンでさえ、そのような柔らかで穏和な国民性を感じる機会は何度もある。タクシーに乗れば、その内装や運転手の身なりで仏教徒かイスラム教徒がすぐに判別がつくが、いずれにせよ好意的な運転手が多いと感じるし、街を歩いていても両者の区別は比較的付きやすいが、外国人の私からすると双方の雰囲気にそれほど違いはないように思う。シャイで人懐っこくて外国人が少しでもミャンマー語を話すと喜ぶ。そんな国民性だ。宗教は違えど同じミャンマー国籍を持つものとして良い関係を築いていって欲しいと思う。


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