ビジネスレベルの外国語習得に必要なきっかけ(後編)
パソコンの故障に伴い一部データを失ってしまい、更新がだいぶ遅れてしまいました
久しぶりになってしまいましたが、前回に続きます。
♦♦♦♦♦
インド都市部の若者の可能性を大きく広げてくれる英語・・・だからこそ、逆に多くの若者が「英語コンプレックス」を抱えてしまうともいえます。
一方で、英語ができない、できない、といつも言っていたのに、拍子抜けするほど急に英語を話し始める人たちがいます。こういったケースは、ざっくりと分けて以下の2パターンのいずれかに該当することが多いようです。
パターン1:「英語ができない」という洗脳から開放される。
私の良く知るSさんは、「私の両親は教育を受けていません。私が家族で初めて教育を受けましたが、カレッジまでは行けなかったから、英語はできないんです。」と言い、英語でのコミュニケーションを避けていました。
英国や米国からの訪問者がシンプルな英語で話しかけても、Sさんは恥ずかしそうにしてヒンディ語で応答します。しかし、Sさんがときどき私に渡してくれる英語の短文メモや、ヒンディ語で話すときにときどきちりばめる英文・英単語から、私は「実をいうとSさんは結構英語が分かっている」と思っていました。
そこで私は、どんな短くてもSさんが英語を使うたびに「今の英語すごい上手!ああいう風に誰にでも言えるわけじゃないんだよ!どうして話せないなんて言ってたの!?」とやや大げさに褒めていました。
あるとき、彼女の上司と話す機会があり、「Sさんは職員の中で一番と言ってもよいほど英語が話せますよ」と伝えてみたところ、Sさんの上司は即彼女を部屋に呼び、「英語が結構できるっていう話だけど、時間があるときに同僚のみんなにも少し教えてあげてくれない?」と打診。
すると、その日からSさんは急に堂々と英語を話すようになったのです。あまりに急な変貌ぶりで驚いてしまいました。
先日、片言のヒンディ語を話す米国人がSさんの勤める事務所を訪問しました。来客はSさんにヒンディ語で話そうと試みたのですが、Sさんは力強い英語で「大丈夫、私英語わかりますから、英語で話してくださってOKですよ」と頼もしい一言。
「できない」という思い込みから開放されることが、こんなにも可能性を広げるものなのですね。
「英語話者」として通用するようになったことで、Sさんはミドルマネージメントの会議にときどき呼ばれるようにもなり、確実にキャリアアップへの道を開いています。
パターン2:自分が熟知しているコンテンツを通して英語力を向上させた。
私の周りの直近の例では、NGOでデータ収集・入力を担当しているRさん。彼女は職場の他の誰よりもデータのことを熟知していますが、英語は苦手でした。
数ヶ月前、Rさんはデータ処理のプロセスについて英語でプレゼン資料をまとめてくれと上司に依頼されました。最初は不安そうな表情のRさんでしたが、すぐに腹をくくり、1ヶ月をかけて周りのあらゆる人の助けを借り、英語でプレゼン資料をまとめ上げました。
この体験以来、Rさんは英語でメールを送信したり(以前はアルファベット表記のヒンディ語でした)、ミーティング中に英語で発言をするようになりました(こちらも以前は、断固としてヒンディ語で話していました)。
先月、Rさんはレベルアップした仕事を得、転職。収入がかつての約2倍になったとうれしそうに話してくれました。
♦♦♦♦♦
まず、パターン1。日本にも英語を「不得意」と思い込んでいるだけで実は実用に足るレベルの英語を知っている、勿体無い英語話者は多いのではないかと思います。 外国語に限らず、思い込みにより自分で自分の能力の限界を作ってしまうことはできれば避けたいものです。
数世代をまたぐ社会的・経済的格差のせいでしょうか、インドの貧困家庭出身者の間では未だにかなり頻繁に「私はXXだからYYはできない」という思い込みが見受けられ、苦しい気持ちになります。しかし、上述のSさんのように、きっかけさえあれば思い込みから開放されるケースも多々ありますので、機会があるごとに、より多くの人たちが「思い込み英語コンプレックス」から開放されるよう、私にできる小さなアクションを重ねていきたいと思っています。
一方、実用に足るレベルの外国語知識がもともとないのがパターン2。この場合、よく知っている内容についてプレゼンしたり文章を書いたりする作業が外国語のレベルアップに非常に効果的なようです。これはおそらく、題材についてはさほど頭をひねる必要がなく、作業を通して外国語の言い回しに専念できるからだと思われます。
私自身もそれなりの歳になってからヒンディ語を習得しようとしている身なのですが、実はそんな私にもパターン2に属する経験があります。
私がムンバイで仕事を始めた当初は、過去に体系的な形でヒンディ語を勉強したことがあるわけでもなく、かといって都合のよい時間に教えてくれる先生も見つからず、職場の人たちが何を言っているのか本当に分かりませんでした。いい歳をして2歳児よりもヒンディ語ができない状態で、情けなくて毎日へこんでいました。
そんな中、とある1ヶ月の短期プロジェクトに携わることで、かつてないスピードで、ヒンディ語のレベルをひとつランクアップさせることができた経験があります。
その短期プロジェクトの内容は、モバイル・アプリ開発でした。
このプロジェクトを私が得る幸運に恵まれたのは、そもそも運よくアプリのコンテンツに親しみがあったからでした(→コンテンツ自体を理解しようと新たに頭を悩ませる必要はなかった)。また、基本的にコンテンツに関する専門用語や、ITに関連する用語はヒンディ語も英語も同じでした(→「英単語+うざったいジェスチャー」という形でも、ある程度までは意味を伝えることができる)。
このプロジェクトを、限られたヒンディ語のボキャブラリーを無理矢理当てはめながら四苦八苦まとめているうちに、他のメンバーが発するヒンディ語から
「このボタンを押したとき、このメッセージが表示される必要がある」
「この選択肢は要らない」
「一度テストしてみなければ」
というような言い回しを徐々に覚えていきました。
そして、プロジェクト終了後、これを
「来週の食料を買いに行く必要がある」
「このお菓子要らない」
「今日は早く帰らなければ」
・・・と日常会話に応用してみたところ、「急にどうしたの!?どこでヒンディ語勉強してきたの?」と生まれて初めて自分の発したヒンディ語に関心を示してもらえたのです!(哀)
もっとも、それ以来すっかり努力を怠っており、そこからあまり進歩できていないのですが(涙)。
以上の経験から、「外国語で自分の得意分野のITプロジェクトに関わる」というのは、ガジェットにそれなりに親しみのある方にとっての効果的な外国語習得法として一般化できるのではないかと思っています。
Facebookページに参加しませんか!
『開国ジャパン』は海外経験豊富な開国アンバサダーによる情報発信メディアです。
海外での生活やビジネスなどに興味のある方のために
★各国に駐在しているアンバサダーからの現地事情
★英語などの語学や海外での生活情報
★海外ビジネスの情報
など、幅広く最新の情報を発信しています。
最新記事のチェックにはTwitterが便利です。
更新情報を必ずツイートしています。どうぞ、フォローしてください。
開国アンバサダー
現在89名のアンバサダーが活躍中!
開国アンバサダーは、「グローバル社会で活躍する新しい日本人のロールモデル」 です。開国ジャパンでは彼らの熱い想いを発信しています。
アテネ錬磨道場 剣道指導者
新井 良(あらい りょう)1987年埼玉県生まれ。筑波大学大学院人間総合科学研究科体育学専攻修了。7歳より剣道を始め、高校時代...
美女世界地図プロジェクト
赤津 慧(あかつ けい)東京理科大学経営学部。NPO法人MPI所属。幼少期からサッカー漬けの日々を送り、中学時代は鹿島アント...
タイ障がい者サッカー指導者
相原 ユタカ (あいはら ゆたか)1979年生まれ。高校卒業後、4年間一般企業で働くが“サッカーで飯を食う”為にタイに飛び、プロサッカ...
元外資系客室乗務員
森 純子(もり じゅんこ)1981年神戸生まれ。立命館大学文学部英米文学科卒業。在学時、イギリスBath Spa Univer...
スペイン語翻訳・メディア取材
小原 京子(おばら きょうこ)山口県岩国市出身。上智大学外国語学部イスパニア語学科卒業。 23年間在京スペイン大使館に勤務し、翻...
チーム開国ジャパン
ピックアップ
-
2013年6月カンボジア・タイビジネス視察ツアー開催!
カンボジアとタイを6月17日~20日の4日間で訪問するビジネスツアーを開催します ...
-
とある関西人、イタリアで女子高生してまんねん。
イタリア・ヴェネチア在住の「高校4年生」によるグローバルコラム連載開始 ...
-
国境を越えるイノベーションに必要な3つの人的ネットワーク
ベトナム在住の小原アンバサダーが提唱する「これからのイノベーションに必要な3つの人的ネットワーク」とは ...
-
「週末アジア視察団」でシンガポールへ!!
2月22日・23日の週末を使ってフラッとビジネス視察に行って、グローバル新時代の未来を語り、学びませんか? ...
-
TOEIC260点からの異国適応能力兼サバイバル能力の育て方
TOEIC260点からMBA留学した長井アンバサダーからのサバイバル提案 ...
-
バンコクで「蹴る・学ぶ・繋がる」フットサルW杯タイツアー
11月7~10日でタイ・バンコクでフットサルW杯の観戦などがパッケージとなったツアーを開催します ...
-
サラリーマン留学記-社費で留学する意味
日系コンサルティング会社から社費で米国留学する佐藤氏からのコラム。社費留学者からの貴重な体験記 ...
-
はみジャパ習慣(2)磯野カツオ氏を見習ってみる。
行動した結果、100点どころか50点すら取れなくても、意識してみるだけでも10点、行動しただけで30点!成績的には可! ...
-
NATOと呼ばれるニッポンジン
「NATO」って・・・・?No Action Talk Only….アジア新興国で揶揄されるそんな日本人の話です ...
-
パキスタンからグローバル人材を考える
パキスタン在住のアンバサダー尾崎氏が自身の多様な経験から独自のグローバル人材像を語ります ...
最新ニュース
-
U18W杯開幕、清宮オコエらで初V期待
夏の甲子園を沸かせた高校生強打者2人が、28日開幕した第27回U−18(18歳以下)ワールドカップ(W杯)で日本代表として世界一に挑む。 ...
-
「ガトリンの復讐」ボルト激突も無事
【AFP=時事】(写真追加)第15回世界陸上北京大会(15th IAAF World Championships in Athletics Beijing)の男...
-
イチのファンサービスに観客感涙
「マーリンズ1-2パイレーツ」(27日、マイアミ) マーリンズのイチロー外野手(41)は「2番・右翼」で出場し、4打数無安打。17打席連続無安打(3四球、1犠打...
-
川栄李奈、初舞台で「おバカ」返上へ
今月4日にAKB48を卒業した女優の川栄李奈が26日、都内で行われた舞台『AZUMI 幕末編』の制作発表・公開稽古に、共演者とともに出席した。 ...
-
世界の若手億万長者30名 日本人は?
フォーブスは世界で最も裕福な40歳未満の 44人のリストを公開した。ここではその中から30名をピックアップ。年齢の若い順に掲載する。 エヴァン・シュピーゲル(ス...