ビジネスレベルの外国語習得に必要なきっかけ(後編)

パソコンの故障に伴い一部データを失ってしまい、更新がだいぶ遅れてしまいました :cry:
久しぶりになってしまいましたが、前回に続きます。

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インド都市部の若者の可能性を大きく広げてくれる英語・・・だからこそ、逆に多くの若者が「英語コンプレックス」を抱えてしまうともいえます。

一方で、英語ができない、できない、といつも言っていたのに、拍子抜けするほど急に英語を話し始める人たちがいます。こういったケースは、ざっくりと分けて以下の2パターンのいずれかに該当することが多いようです。

パターン1:「英語ができない」という洗脳から開放される。

私の良く知るSさんは、「私の両親は教育を受けていません。私が家族で初めて教育を受けましたが、カレッジまでは行けなかったから、英語はできないんです。」と言い、英語でのコミュニケーションを避けていました。

英国や米国からの訪問者がシンプルな英語で話しかけても、Sさんは恥ずかしそうにしてヒンディ語で応答します。しかし、Sさんがときどき私に渡してくれる英語の短文メモや、ヒンディ語で話すときにときどきちりばめる英文・英単語から、私は「実をいうとSさんは結構英語が分かっている」と思っていました。

そこで私は、どんな短くてもSさんが英語を使うたびに「今の英語すごい上手!ああいう風に誰にでも言えるわけじゃないんだよ!どうして話せないなんて言ってたの!?」とやや大げさに褒めていました。

あるとき、彼女の上司と話す機会があり、「Sさんは職員の中で一番と言ってもよいほど英語が話せますよ」と伝えてみたところ、Sさんの上司は即彼女を部屋に呼び、「英語が結構できるっていう話だけど、時間があるときに同僚のみんなにも少し教えてあげてくれない?」と打診。

すると、その日からSさんは急に堂々と英語を話すようになったのです。あまりに急な変貌ぶりで驚いてしまいました。

先日、片言のヒンディ語を話す米国人がSさんの勤める事務所を訪問しました。来客はSさんにヒンディ語で話そうと試みたのですが、Sさんは力強い英語で「大丈夫、私英語わかりますから、英語で話してくださってOKですよ」と頼もしい一言。

「できない」という思い込みから開放されることが、こんなにも可能性を広げるものなのですね。

「英語話者」として通用するようになったことで、Sさんはミドルマネージメントの会議にときどき呼ばれるようにもなり、確実にキャリアアップへの道を開いています。

パターン2:自分が熟知しているコンテンツを通して英語力を向上させた。

私の周りの直近の例では、NGOでデータ収集・入力を担当しているRさん。彼女は職場の他の誰よりもデータのことを熟知していますが、英語は苦手でした。

数ヶ月前、Rさんはデータ処理のプロセスについて英語でプレゼン資料をまとめてくれと上司に依頼されました。最初は不安そうな表情のRさんでしたが、すぐに腹をくくり、1ヶ月をかけて周りのあらゆる人の助けを借り、英語でプレゼン資料をまとめ上げました。

この体験以来、Rさんは英語でメールを送信したり(以前はアルファベット表記のヒンディ語でした)、ミーティング中に英語で発言をするようになりました(こちらも以前は、断固としてヒンディ語で話していました)。

先月、Rさんはレベルアップした仕事を得、転職。収入がかつての約2倍になったとうれしそうに話してくれました。

♦♦♦♦♦

まず、パターン1。日本にも英語を「不得意」と思い込んでいるだけで実は実用に足るレベルの英語を知っている、勿体無い英語話者は多いのではないかと思います。 外国語に限らず、思い込みにより自分で自分の能力の限界を作ってしまうことはできれば避けたいものです。

数世代をまたぐ社会的・経済的格差のせいでしょうか、インドの貧困家庭出身者の間では未だにかなり頻繁に「私はXXだからYYはできない」という思い込みが見受けられ、苦しい気持ちになります。しかし、上述のSさんのように、きっかけさえあれば思い込みから開放されるケースも多々ありますので、機会があるごとに、より多くの人たちが「思い込み英語コンプレックス」から開放されるよう、私にできる小さなアクションを重ねていきたいと思っています。

一方、実用に足るレベルの外国語知識がもともとないのがパターン2。この場合、よく知っている内容についてプレゼンしたり文章を書いたりする作業が外国語のレベルアップに非常に効果的なようです。これはおそらく、題材についてはさほど頭をひねる必要がなく、作業を通して外国語の言い回しに専念できるからだと思われます。

私自身もそれなりの歳になってからヒンディ語を習得しようとしている身なのですが、実はそんな私にもパターン2に属する経験があります。

私がムンバイで仕事を始めた当初は、過去に体系的な形でヒンディ語を勉強したことがあるわけでもなく、かといって都合のよい時間に教えてくれる先生も見つからず、職場の人たちが何を言っているのか本当に分かりませんでした。いい歳をして2歳児よりもヒンディ語ができない状態で、情けなくて毎日へこんでいました。

そんな中、とある1ヶ月の短期プロジェクトに携わることで、かつてないスピードで、ヒンディ語のレベルをひとつランクアップさせることができた経験があります。

その短期プロジェクトの内容は、モバイル・アプリ開発でした。

このプロジェクトを私が得る幸運に恵まれたのは、そもそも運よくアプリのコンテンツに親しみがあったからでした(→コンテンツ自体を理解しようと新たに頭を悩ませる必要はなかった)。また、基本的にコンテンツに関する専門用語や、ITに関連する用語はヒンディ語も英語も同じでした(→「英単語+うざったいジェスチャー」という形でも、ある程度までは意味を伝えることができる)。

このプロジェクトを、限られたヒンディ語のボキャブラリーを無理矢理当てはめながら四苦八苦まとめているうちに、他のメンバーが発するヒンディ語から

「このボタンを押したとき、このメッセージが表示される必要がある」
「この選択肢は要らない」
「一度テストしてみなければ」

というような言い回しを徐々に覚えていきました。

そして、プロジェクト終了後、これを

「来週の食料を買いに行く必要がある」
「このお菓子要らない」
「今日は早く帰らなければ」

・・・と日常会話に応用してみたところ、「急にどうしたの!?どこでヒンディ語勉強してきたの?」と生まれて初めて自分の発したヒンディ語に関心を示してもらえたのです!(哀)

もっとも、それ以来すっかり努力を怠っており、そこからあまり進歩できていないのですが(涙)。

以上の経験から、「外国語で自分の得意分野のITプロジェクトに関わる」というのは、ガジェットにそれなりに親しみのある方にとっての効果的な外国語習得法として一般化できるのではないかと思っています。


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