和を極めればグローバルになる

神社仏閣

私の友人の奥様は、ヨーロッパを中心に国際的なアンティーク家具の取引を個人で商っています。英語、フランス語、スペイン語の3ヶ国語を自由に操り、貴族たちが催すパーティやオークション、取引などで年のうちほぼ半分をヨーロッパで過ごす彼女は、明らかに“グローバル”な存在です。

彼女は、京都にある和菓子の老舗に生まれました。大学を卒業するまで修学旅行以外の国内旅行は数えるほど、ましてや海外など一度も行った事がなかった彼女は、就職先の某メガバンク京都支店で私の友人と出会いました。

国際的なバンカーとしてのキャリアを歩むため、既に海外への赴任を内示されていた彼との結婚を、彼女のご両親はなかなか認めようとしなかったようですが、最後は二人の熱意で乗り越えたそうです。そして彼は予定通り、オックスフォード大学の経済学大学院に彼女を伴い赴きました。

オックスフォードやロンドンで、英語すらたどたどしい彼女は、師範の免状を持つ日本舞踊をはじめ、一通り躾けられたお茶やお花の作法や知識を披露することで、彼曰く「嫉妬すら覚えた」くらいパーティの人気者になりました。仕事で忙しい旦那が不在の時でも社交の場からお呼びが掛かるようになり、そのうちパリやマドリッドにも招待され、一人で出掛けるようになり、自然と言葉も覚えて行きました。

あとは一直線、幼いころから自然に審美眼を養ってきた彼女は、アンティークの魅力に出会い、グローバルに活躍するアンティークのトレーダーとなったのです。

 

■ 「グローバル」を語る上で、西欧の行動様式を知ることは重要

グローバルを語る時、常に取り上げられるのは語学の問題です。さらには、思考様式など文化的な背景を理解した西欧風の行動様式を身に付けることの重要性も、良く語られます。大学卒業の頃、たまたま腰かけ程度に考え、就職先にアーサーアンダーセン(現アクセンチュア)を選んだ私は、気がつくとパートナーになり、グローバルマネジメントの一員になっていました。

学生時代に北米バス旅行でブロークンな英語を鍛えた上に、日本人としてはやや理屈っぽかった私は、西欧流の行動様式に対する親和性も高かったのでしょう。外国人の上司達からは「話が通じる若手」ということで、ずいぶん重宝される羽振りの良い存在でした。

外国人達に日本人を解説し、日本人達には外国人を解説する私は、そのままでは良く居る「外資系ゴロ」になっていたのではないかと思います。「外資系ゴロ」とは、外資系企業であればどこにでも居る、外国人受けはやたら良いが仕事が全くいい加減な、日本でしか通用しない植民地の通訳的な存在です。

当時アンダーセンの日本事務所に、非常に人間的魅力の高い人物がいました。訥々とした日本語を操る彼は、英語はもっと訥々としていましたが、大きな存在感を持っていました。常に煙草を手放さない彼の訥々とした語りを、アンダーセンの外国人達は一生懸命に聞き語るのです。

(※編集部注:【訥々と】=口ごもりながら話すさま)

ふるまい

 

神社仏閣何度か彼と同じタイミングで、シカゴ近郊のセントチャールズにあるアンダーセンのグローバル研修センターに赴いたことがあります。夜は大抵バーに行くのですが、そこで良く、煙草を咥え訥々と語る彼の周りに煙たそうに目を細めながら、幾人かの外国人が囲み語る光景を目にしました。彼の周りで話を聞いていると、彼が語る内容は、すべて日本に関する事。政治、経済、文化について幅広く深く語る、彼の話の内容は、私でも知らない事が多く、つたない日本人英語で聞いても、充分に興味が持てる内容でした。

 

■ 日本の歴史や文化を学ぶ

私はそれから、日本の事、特に歴史や文化に対して強烈な興味を覚え、華道は無理でしたが、お茶や能を体験し、出張先でも時間があれば神社仏閣や歴史的な街並みを巡り、その内容を記憶やデジカメに浸透させました。そして、京都に町家を購入し、自分が好きな和のテイストを織り込んで改装し、自らのゲストハウスとして、あるいは一般に宿泊の用として提供しています。

そのゲストハウスに外国人を招待すると、彼らは一様に驚嘆の声を上げます。そこで、日本の歴史や文化に関するいくつかの話を重ねていくことで、生涯の友と呼べる外国人の友人が、たくさん出来ました。「外資系ゴロ」であった時代とは、桁違いに深く強い信頼で結ばれた関係は、私のプライベートそしてビジネスの両方における大きな財産となっています。

コミュニケーションは多種多様ですが、事の本質を押さえた深い洞察に基づく話が興味深い事は、万国共通です。そしてコミュニケーションの本質は、そのような興味深い話を繰り返して行く事で、より相互を理解しつつ新しい価値をお互いの中に創造することにあります。

そのための第一歩として、英語や外国の行動様式を学ぶよりもっと重要なのは、日本の事をより深く正しく知ることです。   「和を極めればグローバルになる」   真にグローバルな日本人であろうとしている皆さんに、この言葉を贈りたいと思います。

<了>

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