ジャパントリップ(中編) ~遠くて・高くて・行き難い国、ニッポン?

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「ジャパントリップ(前編)~世界に日本を知ってもらうチャンス」はコチラ

「LAから東北被災地へ、皆で行こう!日本を知ろう!」という合言葉で立ち上げたUCLA公共政策版ジャパントリップ。

しかしこの被災地に行くことが、最初から最後まで、このトリップの実現を、非常に難しいものにしていました。

あらゆる面で被災地の現状の情報と、施設・設備そのものが不足していること、またそれゆえに、何をするにしても、コストがかかること、これがとてつもない障害でした。

日本の様々な情報が英語では入手しづらいことも、クラスメートたちの日本に対する不安を和らげるためには、とても大きな障壁になりました。日本の”情報鎖国”を痛感することになりました。

 

世界でたった3校の被災地トリップ実現へ

僕たちがスクールの歴史で初のトリップを実施したのは、2012年の3月。東日本大震災のわずか1年後でした。

当時、東北被災地を行き先にしたジャパントリップは、僕の知る限り、世界でたった3校でした。

同じ米国、ハーバード大学のケネディ・スクール

アジアの雄、シンガポール国立大学のリー・クワン・ユー・スクール

そして僕たちUCLAの、ラスキン・スクール

3つとも全て、公共政策MPP/MPAの大学院でした。政策を学ぶ者の志には何かあるのだと思います。自分たちを含めこの3校の幹事チームの苦労は相当なものだったと思いますし、ケネディ、リー・クワン・ユー両校の皆さんには、強い敬意とシンパシーを感じています。

後にリー・クワン・ユーの日本人学生と会う機会があったのですが、「戦友」としてすぐに意気投合しました。

 

・・・そして退路は断たれた(笑)

9月の入学オリエンテーション。

パーティールームに集まった、初めて会うクラスメートたち。アメリカ人、中国人、フランス人、チリ人、そして日本人…

懇親会での自己紹介タイム。それぞれが少し緊張の面持ちの中、僕の番が来ました。 何故あんな無謀なことを唐突にしたのか・・・今でも分からないのですが、

「はじめまして。僕は日本から来ました。日本人仲間で日本へのスクールトリップを企画してます。皆を連れて行きます!よろしく!」 と、いきなり宣言してしまいました。

「英語のヘタクソな外国人がいきなり何を言っているんだ?」と教授陣もクラスメートたちも、きっと意味不明で唖然としていたことでしょう・・・

何よりも他の日本人クラスメートたちが「聞いてないよ!勝手に宣言するな!」と思ったでしょう。

正直な話、思いが強過ぎて、思わず先走ってしまったのでした(苦笑)。とにもかくにも、これで退路は断たれてしまいました。ついにUCLA公共政策版ジャパントリップは本格スタートしたのです。

 

たった3人のトリップ参加希望者

官公庁や大学、大企業、様々な都市機能が集中する東京に入り、

僕たちのジャパントリップの核である東北沿岸部を巡り、

最終目的地は外国人に「鉄板」の京都

これが1週間のトリップの計画であり、最終的にこの行程を実現しました。

 

一番の戦いは、参加者集めでした。常に「被災地に行く」ということが、ネックとして付いて回ったのです。

UCLAラスキンスクールには、MPP(Master of Public Policy:公共政策)、MURP(Master of Urban Planning:都市計画)、MSW(Master of Social Welfare:社会福祉)という3つの社会人大学院プログラムがあります。

当初、僕たちは自分たち日本人3人が在籍するMPPの約60名をターゲットとしていました。掲げた目標は、10人~15人を集めること。

 

2011年の秋の終わり。

まだ拙い英語を話す日本人3人で「ジャパントリップ・オリエンテーション」を開催しました。

会場には、20人くらいの参加者。 結構来てくれたな、と、まず一安心・・・

しかし、そこで出た質問が予想外の内容に集中していたことに驚きました。

「日本へのフライトは幾らなんだ?」

「トリップ費用にはどこまで含まれているの?幾らなの?」

「資金援助をしてくれる人はいないの?」

とにかくお金、お金、お金

 

覚悟していた震災や原発の質問は、殆どありませんでした。

震災からまだ半年強の頃。想定問答まで準備していたので、拍子抜けでした。東京のクールスポット等、遊びに関する質問も、全くなし。本当にお金のことばかりでした。

内心、震災も含めて日本のことをもっと聞いてくれた方が、まだマシな気分でした。

同じUCLAのビジネススクール「アンダーソン・スクール」では、毎年ジャパントリップへの参加希望が殺到し、この年も、震災で中止になった前年の反動で希望者が殺到していると聞いていました。 僕たちはそれを聞いていたので、「アメリカ人は日本に関心持っているんじゃないか。震災のことも詳しいのでは」と思い込んでいたのです。

ジャパン・パッシング(passing:素通り、無関心)―。 目の前の現実に、日本への関心が薄いことを思い知らされた気持ちでした。

後に、ビジネススクールのトリップが人気の理由は、日本への関心というよりも、長く築いてきたトリップの歴史があるからで、「なんとなく参加して当たり前」という空気がそもそもある、ということをアンダーソン・MBAに通うアメリカ人から教えてもらいました。

僕たちラスキンのジャパントリップが、アンダーソン並みになるには何年かかるのか・・・と気が遠くなる思いでした。

 

説明会後のアンケート。

「あなたはトリップに参加したいですか?」に”Yes”と答えた人は、僅か3名。

“検討中”を加えても、たった5、6人。目標には程遠く、とても厳しい船出になったのです。。。

この時、僕たち日本人とアメリカ人達クラスメートとの間には、心理的な距離がかなりあったと思います。

僕自身はこの時、まだ自分は「留学生」に過ぎず、彼らの友人になれていない、彼らも日本には全然関心がないのだろう、と感じていました。

それが大きく変わるのは、まだ先の話です。

 

遥か遠いアジアの国、日本

なぜ彼らは、執拗に「お金、お金」と聞いてきたのか?

当時の旅費見積もりは、往復フライト込みで、総額2000ドル(当時の日本円換算で約16万円)。1週間、3都市周遊の交通・宿泊費、夕食・パーティ代も込みだったので、僕たちの感覚では高過ぎることはない値段です。

しかし、それは大きな間違いでした。

職を辞めて、生活費の高いLAに引っ越してきて、年間300万円程度にもなる高額な学費を自腹で払っている…そんな彼らには、大層な出費でした。

また、アメリカ人は海外旅行経験が少ない人が意外なほど多く(特にアジア方面になると非常に少ない)、海外旅行費用についても、あまり相場を理解していないようでした。

 

日本人からするとアメリカ、特にハワイやカリフォルニアは、身近な外国の一つだと思います。

しかし、アメリカ人から見た日本は、それとは全く異なっていたのです。

「遥か遠い、良く分からないアジアの国」

それだけの旅費をかけて行くようなところなのか?、という感覚もあったかも知れません。

 

ピンチをチームで乗り越えろ

希望者が3人・・・

この結果に、僕たちは打ちひしがれていました。

旅費を大きく跳ね上げていたのは、被災地訪問でした。 被災地は当然、旅行代理店のパッケージに含まれていません。

全て個人手配が必要なこと、交通インフラが整備されていないためにバスをチャーターする必要があること等々、色々な理由から、普通の観光地に行くよりもコストがかなりかかっていたのです。

また、被災地の最新情報を英語で説明できる”スペシャルな”ガイドさんが必要でした。日本を離れていた僕達は、クラスメートたちをガイドできるほどは被災地の生の状況が分かっていませんでした。このようなガイドさんは当然、コストがかかります。

のしかかるコスト問題。たった3人の参加希望者。

「本当にジャパントリップやれるのか…」

大口を皆の前で叩いた自分が、その不安を一番最初に口にしてしまいました。

「諦めるならば早い方が、傷が浅い」とすら考えてしまっていました。

しかし、2人の日本人クラスメートの反応は、そんな心配を簡単にひっくり返してくれました。

「僕たちも、みんなと日本に行ってみたいんですよ、佐藤さん」 「例え少人数でも、良いですよ。やりましょう!」

弱気になってしまったことを反省し、日本人の仲間に感謝をしました。自分が勝手にぶち上げた企画だと思っていたので、二人を巻き込んでしまったことを心のどこかで申し訳なく思っていたのですが、まさかこんなに熱意があったとは!自分の目が節穴でしたし、彼らの気持ちを甘く見ていたことを、謝らなければいけないくらいです。

 

自分は、あのピンチこそが、本当の”Team Japan Trip”発足の瞬間だったような気がしています。

それから僕たちは、あらゆるコスト減を検討し、少しばかりのコストカットができました。しかしまだ不十分。そして、ここから、ファンドレイジング(資金調達)活動をすることにしたのです。

 

ファンドレイジング(資金集め)開始!

アメリカでは財団NPO等が、日本では考えられないくらいの数存在し、とてもメジャーです。

大企業や著名人が自らの経済基盤を切りだして慈善団体を作るパターンが、一番有名かも知れません。有名な財団だと、ビル・ゲイツのゲイツ財団、クリントン夫妻のクリントン財団等があります。

このような、企業にも行政にも分類されない団体が、大小様々あるのですが、そのミッションは、社会貢献活動が主たるものです。財団が、活動主体であるNPO等に資金提供(ファンディング)を行うことで、NPO等の団体の経営基盤は成り立っています。

社会貢献活動の対象は、麻薬撲滅、貧困解消、災害復興、様々な分野に渡ります。日本では、これらの問題解決を役所に依存する傾向がまだまだありますが、アメリカでは財団やNPOが非常に重要で強力な役割を担っています。行政に頼らず市民の力で社会を変えていく、弱者をサポートしていく、という考えや機能が、アメリカでは日本より遥かに充実しています。

蛇足ですが、アメリカの大学の奨学金制度が充実しているのは、このような財団が数多くあるおかげです。日本と比べて学費が遥かに高いアメリカの大学ですが、奨学金の門戸が広く優秀な成績を取っていれば、お金がもらえて、安心してアメリカの大学に行けるのです。

 

僕たちは、このファンディングを集めること(ファンドレイジング)に着目しました。最初の学期の真っ最中だったこの頃、僕はちょうど財団やNPOマネジメントに関する授業を受けていて、そこで学んだファンドレイジングにとても興味を持っていました。

アメリカで何かを成し遂げるのに、このファンドレイジングにチャレンジしない手はありません。

僕たちのジャパントリップは、ファンドレイジングに適した、十分な大義のある活動です。

これで一人あたりの旅費が削減できれば、参加希望者が増えるかも知れない!万全の準備で被災地にも、行ける!

ファンドレイジングが、ジャパントリップ実現の最後の手段だと思っていました。

僕たちは、自分たちの理想を貫くため、クラスメートたちを日本に連れていくため、あえていったんトリップの企画立案を休止しました。そして、ファンドレイジングという、ハードな「課外活動」に汗をかくことになったのでした。 (続く)

 


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