和魂洋才 やっぱり僕は日本人

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■グローバルになる前の自分の道程

自分自身もアメリカで10歳まで育ったというアドバンテージがあるものの、最初からこんなことを考えていたわけではありません。最初は、日本に帰国子女として小学校3年生のときに転校生として戻ってきたとき、日本語が不自由だったり、アメリカ帰りと上級生におちょくられたり、教室で他の誰も手を上げていなくて、自分だけ手あげているのに先生に指してもらえなかったり、卒業まであと3年だったので、ランドセルを一人持っていなくてアメリカの時と同様にリュックで登校していたら、先生に「いつまで遠足気分なんですか」なんていじめにも遭いました。当時はもちろん凹んだりしましたけど、今となれば、幼心に傷つきながらも無意識に相違点を分析し、周囲を理解していくのに役に立ったのではないか、と無理やりポジティブな思い出に美化させています(笑)。その後は、完全に日本人として26歳まで日本で過ごすことになりました。海外に出たのは、ハワイとロスアンゼルスへの大学の卒業旅行と、卒業後に1ヶ月ほどカナダのウィスラーにスノボー留学に出た程度です。

次に「おや、違う」と感じる機会が巡ってきたのは、大学卒業後に就職したNECの海外事業本部・北米営業部に配属され、出張先のアメリカで再びアメリカ人と触れ合う環境に恵まれた時でした。「色々とやっぱり違うんだなぁ」「もっと日米で円滑にできる点があるかも」なんて生意気にも感じ始めました。

一番大きく感じたのは、アメリカでは特定の分野のプロフェッショナルが多いのに対して、日本ではジェネラリストが主流だったこと。例えば現地法人を立ち上げる会議に、先方からは契約書の打ち合わせには弁護士が出てきて、財務の話には会計士が出てきて、マーケティングの話にはMBA取得者が出てきたのに対して、こちら側は営業部のサッカーしか学生時代にしていなかった自分と、上司が全ての分野の会議に出席した経験は、自分自身「いい経験を積ませてもらっているんだけど、俺は一体何の専門家に今後なるんだろう?」と強く問いかける引き金となりました。結局2年半の勤務で、スポーツビジネスに魅了され、退職してしまいました。

グローバル力「経験」

 

■ 「タケ、お前を日本人として雇用したつもりはないから覚えておけ」

マサチューセッツ州立大学(UMASS)アムハースト校のスポーツマネジメント修士課程に進学した際も、クラスの中でも色々と四苦八苦しました。特にUMASSはクラスの学生数を少なく限定するので、言語の問題というよりも、冒頭で書きました「違いを理解すること。自分の考えは何に起因しているのか説明をする」という点に大きく苦労しました。一人で端っこでノートだけ取っていれば良い、授業が終われば勝手に帰宅すれば良い、というような学生生活はまったくさせてもらえない状況でした。

講義の進み方、グループプロジェクト、クラスメートとの絡み方、休日の過ごし方、就職活動の仕方、アピールの仕方、評価のされ方、など、全てがそれまでにはない経験でした。スポーツ社会学では、まさに色々な人種がいるクラス内で教授がそれぞれの人種、あるいは国籍の学生に対し、あるテーマについてどう考えるのか、「タケは日本人としてこの問題をどう思うのか?」と質問されたりするのはすごく新鮮でした。「違い」が事実としてあるんですよね。

Nakamura

©Major League Soccer

その後、MLSにインターンとして入り、「何とか正職員にしてもらうためには」、と毎日必死に考える中でも、「自分は外国人であるという課題をどうポジティブなセールスポイントに変えていくのか」ばかりを考えていました。8ヶ月のインターン後、自分を実際に雇ってくれたネルソン・ロドリゲス氏とアイヴェン・ガジダス氏(現アーセナルCEO)に言われた言葉で今でも忘れられないのが「タケ、お前を日本人として雇用したつもりはないから覚えておけ」でした。これは、日本人として日本事業ばかり考えていると、日本事業が不採算事業と判断されたときにお前も事業ごと切られるぞ、と言うことを意味していました。僕が配属された国際部の当時の主要事業はメキシコ事業であったので、それはそれは必死でメキシコ事業や、その他の事業のことも一生懸命打ち込みました。クビになりたくなかったので(笑)。

■日増しに強くなる思いは、「自分はやっぱり日本人だ」

まだ行ったことがない国もたくさんありますし、出会ったことがない国の方々がいる中で、自分自身がまだグローバルな人材かどうかはまだ推し量れないのですが、でも冒頭から述べているように、語学とか、行ったことがあるとか、友達がいるというのは表層的なことで切りがないですし、それはあまり関係なく、「あくまでも違いというものが存在する事実を認識すること。それを理解しようとする、あるいは違いがあるという前提で物事を進めたり、話をしたりすること。逆に、自分の立場や考えの論理を説明できるようにすること。その上でどのように仕事を進めるか」と、言うことがグローバルな人材に欠かせない前提条件ではないかな、と私は思っております。この前提条件の上に語学とか、海外に行った経験があるとか、その他諸々が付加価値的に、より有効になるのではないかな、と思います。プロスポーツを例に取りますと、海外のリーグで活躍をする選手たちもこういう観点から差が出ることが多い気がしております。

最近思うのは、結局これを突き詰めると、自分らしくあることが本当のグローバルな人材への近道なのではないか、と言うことです。死ぬまで日本人と言うことは変わらないですし、「日本の中村」と考えるべきで、自然体が一番相手に理解してもらえるのかな、と。逆に日本に来ている外国人を例にとって考えてみた場合、グローバルな人材だな、と思えるのはそういう人ではないでしょうか?無理をしている人はやはりどこか歪で、真のグローバルな人材ではなく、単に日本に来ている外国人となってしまっている気がします。

個人的には、グローバルということを考えれば考えるほど、そして海外生活が長くなればなるほど、日増しに強くなる思いは、「自分はやっぱり日本人だ」ということで、肝に銘じているのは「和魂洋才」という言葉です。そういう意味でも一日も早く、母国日本のサッカーの国際化に微力ながら貢献できる日が来ることを心底、心待ちにしております。

最後になりますが、この原稿のご依頼をいただいてから、グローバルな人材とは……と改めて考えてみましたが、ここまで綴らせていただいたように、世界中の言語をマスターすることは無理ですし、世界中のありとあらゆる所にきちんと腰を据えて赴くことも現実的ではないと考えました。そういう中で、やはり当たり前ですが、「違い」が世界中に存在し、それを「認識」し、それを「前提」とし、その違いを「理解する姿勢を持つこと」と同時に、「自分の考えをきちんと説明」できれば、グローバルな人材になれるのではないかな、と考えた次第です。

<了>  開国ジャパンプロジェクト

 

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