誰でも「開国アンバサダー」になれる社会へ

fujita_eyecatch

今、パキスタン国境に近いインド北西部のパンジャブ州アムリッツァルでこの文章を書いています。

先日、インドとパキスタンの国境に行ってきました。夕方5時に国境のゲートが閉まるのですが、その後1時間ほどゲートを挟んで両側で歌とダンスのお祭り騒ぎが続き、やがてそれぞれ帰途に着いていきました。

かつては人が自由に行き来していた土地。一人ひとりを見れば見た目はたいして変わらないし、だれもが家族や友人と同じようなことで笑ったり泣いたりしているはず。でも彼らの帰り道が交わることは決してない。日本という島国育ちの私としては、とても不思議な感覚でしたね。

■ 世界で15億人が電気のない生活をしていると言われています

Fujita インドに関わるようになったのは数年前。NPOのプロジェクトとして、農村部に太陽光パネルで発電して使うソーラーランタンを普及させる活動を始めてからです。農村部に行ってみて、大きなショックを受けました。灯りがないことで生活がこんなにも違うのか、と。電気の届かないある小さな村で14才の少女の家を訪れました。日々の日課を聞いたときのこと。「7時に晩ご飯を食べる。10時に寝る。」というので、「その間、何をしているの?」と聞くと「何も。そこに座ってる」と言って庭の片隅を指差しました。ご飯の後片づけさえ暗くてできない。

ため息がでました。

1日3時間。あかりのある生活とない生活。毎日、毎年積み重なるうちに大きな違いになる。私たちが日本でネオンに囲まれた夜を送っているときに、地球上にはテレビやインターネットはおろか、本を読んだり、勉強することもできない人たちがたくさんいます。世界で15億人が電気のない生活をしていると言われています。「ソーラーランタン=グリーン」という点に惹かれて始めた活動でしたが、グリーンであることはそれ自体が目的というよりも、あらゆる人間活動が満たすべき基本だと思うようになりました。

そして同じだけ重要なのが社会的なニーズを満たすこと。特に、平等な機会(Opportunity)。

健康な生活を送る機会。

人生において自分の可能性を試す機会。

どれだけの成果を出すかは自分次第。でも少なくともスタート地点に立つ機会は誰もが得られるようにしたい。

■ 日本など先進国では公共サービスとして当然の救急車ですが、今までのインドには存在していませんでした

昨年秋から、個人的にはソーラーランタンの活動をお休みして、アメリカの非営利ベンチャーファンド「アキュメンファンド」のフェローとして、インドのソーシャルベンチャーで働いています。アキュメンファンドは途上国の貧困削減を目指し、必要不可欠なモノ・サービス(水、エネルギー、住宅、医療、農業)を貧困層に供給する事業に投資をします。ビジネスのノウハウやマインドセットが、大多数にサービスを届ける仕組み作りを促進すると信じているからです。

Fujita フェローシップの一環として、今、インドの片田舎で何をしているかというと、救急車サービスの普及です。日本など先進国では公共サービスとして当然の救急車ですが、今までのインドには存在していませんでした。民間の力で状況を変えようと立ち上がったのが、私が今働いているソーシャルベンチャーです。5人の青年起業家が株式会社(非営利団体ではない!)を立ち上げました。

2004年にムンバイで救急車2台からスタートした事業が10年も経たないうちに、救急車460台、従業員2,000人にまで成長しました。政府も追いついて来て、パンジャブ州の場合は州政府から請け負って、4月初めに90台の運営を開始したところです。昨年11月からこの会社で働いていますが、当初は具体的に私自身のどのスキルが役に立つのか半信半疑でした。

しかし、実際働き始めてみると、過去にコンサルティング会社などで経験したことがバッチリ応用できて驚いています。プロジェクトを管理したり、業務プロセスを作って周知したり、ITシステムの導入を進めたりしています。ここ数日は、救急車要請の電話がかかってくるコールセンターに座って、オペレーションの指導をしています。日本にいるんだか、どこにいるんだかわからないや、と内心苦笑することしばしばです。

■ 重要なのは自分の軸を持つことだと思います

Fujita 私は埼玉の県立高校出身で、とってもドメスティックな生い立ちです。親戚中探しても、海外勤務どころか海外旅行経験者さえいなかった。ただ知らない土地に行ってみたいという好奇心だけ。だから今振り返っても、ICUに入学したときが人生一番のカルチャーショックでした。それから数年ごとに留学したり、海外勤務の機会が巡ってくるようになったりしました。やりたいと思うことをやっていたら、ここに来てしまった、というのが正直な感想です。(ここからどこに行くのかもまだわかりません!)

グローバル力「経験」

 

現在同僚はインド人のみ。ヒンディー語やパンジャビ語が混ざったインド英語とジャパニーズイングリッシュ。時々、混乱をきたします。当然ながら、宗教も、習慣も、食生活も違いますし、職場でのビジネス習慣も違います。それでも一人でも多くの命を救うんだという目標は共通です。その目標のためになる行動を取っているかどうかが一番重要なものさし。インド流でも日本流でも成果につながるし、互いの尊敬につながっています。

日本からインドに行くことも、営利企業から非営利団体に転職することも、結局のところあまり変わらないと思っています。どこに行って何をやっても、自分が自分であることに変わりはないですから。好むと好まざるとにかかわらず。

重要なのは自分の軸を持つことだと思います。

 

■ 意識(志)次第で、誰でも「開国アンバサダー」になれると思うんです

Fujita インドは元気です。人々が経済成長を実感しています。富裕層だけでなく、工事現場で働く人や、チャイを売る人からも、ポジティブなエネルギーを感じます。視線が上を向いている感じと言えばいいでしょうか。若い人たちはハングリー精神に溢れているように映りますね。その勢いに、「ああー、近いうちに日本は追い抜かれてしまうな……と危機感を覚えます。同時に、仕事を進めていくと、「えーどうしてそうなっちゃうの……」とクオリティの低さに驚くこともしばしばで、やっぱり日本の底力はそう簡単に覆されないだろうと思ったりもします。

国と国を比べても、個人を比べても、それぞれ得意分野がありますからね。チームワークや気遣い、品質の追求、時間を守ること、約束を守ることなどは、日本にいるときは当たり前だと思っていましたが、インドでは贅沢な望みだと知りました。でもみんなそれで満足しているかというと、そんなことはなくて、優れたものがあれば誰でも良さがわかるし、喜びます。個人でも同じです。グローバルな人材はかくあるべし、という決まった基準があるわけではなくて、得意なこと・好きなことをやっていれば世界につながる道は拓けてくる。

意識(志)次第で、誰でも「開国アンバサダー」になれると思うんですよね。スタート地点で特別な才能とかスキルが必要なわけじゃない。普通の人が普通にグローバルになっている/なれるんです。それに、道は一つじゃない。

フローバル力「ふるまい」

あの村の少女は自分の可能性を試すチャンスすら持ち合わせていませんでした。 ただ、その場所に生まれたというだけで。それに比べたら今の日本は平等な機会に恵まれていると思います。

<了>  開国ジャパンプロジェクト


Facebookページに参加しませんか!

『開国ジャパン』は海外経験豊富な開国アンバサダーによる情報発信メディアです。
海外での生活やビジネスなどに興味のある方のために

各国に駐在しているアンバサダーからの現地事情
英語などの語学や海外での生活情報
海外ビジネスの情報

など、幅広く最新の情報を発信しています。


最新記事のチェックにはTwitterが便利です。

更新情報を必ずツイートしています。どうぞ、フォローしてください。


開国アンバサダー

現在89のアンバサダーが活躍中!

開国アンバサダーは、「グローバル社会で活躍する新しい日本人のロールモデル」 です。開国ジャパンでは彼らの熱い想いを発信しています。

開国アンバサダーとは 開国アンバサダー一覧 開国アンバサダー推薦フォーム

チーム開国ジャパン

ピックアップ

最新ニュース

  • U18W杯開幕、清宮オコエらで初V期待

    夏の甲子園を沸かせた高校生強打者2人が、28日開幕した第27回U−18(18歳以下)ワールドカップ(W杯)で日本代表として世界一に挑む。 ...

  • 「ガトリンの復讐」ボルト激突も無事

    【AFP=時事】(写真追加)第15回世界陸上北京大会(15th IAAF World Championships in Athletics Beijing)の男...

  • イチのファンサービスに観客感涙

    「マーリンズ1-2パイレーツ」(27日、マイアミ) マーリンズのイチロー外野手(41)は「2番・右翼」で出場し、4打数無安打。17打席連続無安打(3四球、1犠打...

  • 川栄李奈、初舞台で「おバカ」返上へ

    今月4日にAKB48を卒業した女優の川栄李奈が26日、都内で行われた舞台『AZUMI 幕末編』の制作発表・公開稽古に、共演者とともに出席した。 ...

  • 世界の若手億万長者30名 日本人は?

    フォーブスは世界で最も裕福な40歳未満の 44人のリストを公開した。ここではその中から30名をピックアップ。年齢の若い順に掲載する。 エヴァン・シュピーゲル(ス...

他のニュースも見る