日本の力は中古車だけじゃない!

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日本人としてのアイデンティティ。私は日本代表!

海外育ちで日本語もいまひとつな私ですが、これだけはしっかりしておきたいというのが「日本人」としての自覚です。どんなに言葉ができても、どんなに海外の知識があったとしても、やはり一番根っことして大事なのは自分のアイデンティティ。

それを守ることによって、海外での自分の活躍場を増やすことができると思うし、一人の人間としても自信を持ち続けることにつながる上、新たな自分を見つける手がかりになると思います。当たり前のように聞こえますが、「海外での自分」と「日本での自分」を上手く使い分けられると更に効果的。

私の日本人意識の発展のきっかけは今までもいくつかあったのですが、代表的なタイミングは学生の時と社会人になりたての頃でした。そもそも、はじめはそんな意識は全くありませんでした。むしろ14歳の私はどこにでもいる中学生と同じで、クラスの人気者になることと、クラブ部活動に打ち込むことにしか興味がありませんでした。現地校の勉強と平行してやらなくてはならなかった日本語の勉強にもついていけず、「日本語なんてできなくていい!日本人なんかに生まれなきゃよかった!」と言い、父親にビンタされたこともありました。

Yamawaki 子供のころ父が南アフリカのクルーガー国立公園へよくサファリに連れて行ってくれたので、その影響が大きかったのか、大の動物好きに育ち、気がつけば大学で動物のことを学んでいました。休みも友達と口実を見つけては色んな動物保護区へキャンプに行き、草木や動物の足跡や糞を見つけてはうんちくを競い合い、夜はたき火を囲んで酒のつまみに動物の鳴き真似などをして、動物三昧の日々を過ごしました。

高校卒業まで南アフリカではユダヤ系白人社会で過ごしていましたが、大学に入って初めて、白人以外の人種と肩を並べ、共通の目標に向けて同じ空間で過ごす日々を迎えました。私の大学は、アフリカ大陸で最大の総合大学だけあって、南アの黒人、近隣国の黒人、西アフリカや東アフリカから来た黒人、白人もイギリス系、アフリカーンス系(ボーア人)、イタリア系、ポルトガル系、ユダヤ系、ギリシャ系、そしてアジア人も中国系、韓国系、インド系やアラブ系と、単色だった高校のクラスルームから比べて、一気に多民族でカラフルなクラスルームになりました。

生活水準もスラムから来ている学生から大金持ちの学生まで、ちょっと前のアパルトヘイトではありえなかった環境が、私たちの世代で一気に変わり、色んな人種と背景の学生が肩を並べて一緒に勉強しました。そこで感じたのは、みんながそれぞれ持っている文化、風習、宗教や考えなどアイデンティティへのこだわりと誇り。日本語は話すけど、英語を話せば白人みたいな自分がそんな中でとても薄っぺらく感じました。

グローバル力「教養」

 

中国人と間違われると「日本人だよ!」と訂正する私は、「じゃあ、日本人ってなんだろう?」と改めて考えるようになり、少しずつ自分の中で日本に対する興味や意識を持つようになったと思います。そして働き始めてからは、今まで以上に広範囲でアフリカ大陸内を動くようになり、更にその意識は高まりました。

Yamawaki アフリカにおける日本人人口は、増え続ける中国人やインド人とは対照的に寂しいくらいに少なく、日本の中古車こそ大量にアフリカで活躍していますが、それ以外にアフリカのほとんどの人が日本と接点のない人生を過ごしています。

そのため、アフリカの地元の人々は東洋人を見かけると、日本人より中国人として認識することの方が多いです。私が接する人たちにとって、その人の人生で私が唯一の「日本人」との接触かもしれないと考えると、私は「日本代表なんだ!」という考えが芽生え、なおさら日本人としてできるだけ恥ずかしくない様にしなきゃ!と意識する様になりました。

 

■アフリカから見た日本、アフリカの日本

トヨタ~(車)、ニンジャ、スズキィ(バイク)、スーシィ、ナカ~タ~(サッカー選手)、サムライ、ソニー、トーシバ~、ホンダ~(バイクとサッカー選手)、ジャッキー・チェン、ジェット・リーと言った感じでしょうか……。最後の2つは「それ、ジャパンじゃないよ」って毎回説明していますが(笑)

Yamawaki 自家用車だけではなく、80年代の日本で使われていた幼稚園の送迎バス、農協や工場のトラックなどがそのままの姿でアフリカにたくさん走っているので、ジャパン=車というイメージはとても強いです。ハリウッドの影響なのか、南アフリカでは90年代後半から寿司ブームになり、回転寿しももはや珍しくなくなりました。握っているのはほとんど中国人や韓国人、そして黒人の寿司職人も。お寿司は国境を越えて、アフリカ都会のおしゃれさんには知られるグルメになりつつあります。

でも、日本が中国の中にある場所だと思っている人もいるくらい日本のことはまだまだ知られていないのが現実。日本人のイメージを持っている人は大抵「シリアス」、「休まない」、「細かい」、「おとなしい」、「時間通りに来る」といったイメージを日本人に対して持っています。電車の停車位置も毎回同じ、交通機関の発着時刻も正確、遅れることがあればしっかり利用者に対しての「ホウレンソウ」など日本のサービス業から伺える日本人の細やかさ、時間指定通りに配達される宅配サービスや、触らなくても勝手に流されるお手洗いなど、とにかく便利で言えば世界一。

それに対してアフリカは時間に遅れることはほぼ当たり前で、現場でアポをすっぽかされることもまあまああります。バスや乗り合いタクシーだって車両が満席になり次第出発することが多いので発着時間は関係ない。「すぐそこ」が平気で50キロ以上離れていたり、「now now」が今じゃなく20分後だったり……。この両極端に違うアフリカと日本、どちらもお互いの想像を超えた世界で、このギャップがなんともたまらなく面白いのです。せっかちな日本人とおおらかなアフリカ人で回す撮影の現場では、簡単に言うとそのギャップを上手く調和させて行くのも私の役目になります。

フローバル力「ふるまい」

 

極端に違う日本とアフリカ。このギャップがたまらない

日々感じていることがあります。まずは身近なアフリカでなかなか日本の存在が感じられないことに対しての寂しさ。中国やインドなどの経済力で彼らの影響が強まる中、余計に日本の影が薄くなってきている気がします。それから世界での日本の意見の少なさ。少ないのか、弱いのか、とにかく聞こえない。

Yamawaki それは色んなことでちょこちょこ感じるのですが、例えば「捕鯨」。世界中で昔から伝統的な文化を理由にお互い理解しがたいことをしてきていると思います。そんな中で、今の世の中の「許せない行為」の基準になっているのは大抵欧米諸国の意見が強いものばかり。私はノルウェーに行った時に思いました。ノルウェーの街中の方が普通にクジラ肉を売っているのにも関わらず、なんで公に批判されっぱなしなのは日本なんだろうって。

アフリカだって自然保護区の個体数管理のためにゾウを家族単位で間引きします。その肉は食肉用に加工されます。アフリカを旅行すれば観光客が来るようなポピュラーなレストランにはシマウマ、ヌー、イノシシ、ガゼル、オリックスやバッファローなどステーキ、ローストやパイにまでなってメニューでよく見ます。田舎の肉屋に行けばキリンのビルトン(ジャーキー)も売っています。多くのアメリカ人は、アフリカにトロフィーハンティングに剥製にして家に飾るためのライオンやサイを撃ち殺しに毎年たくさん訪れます。一発で仕留められないことが多く、動物は苦しんで死にます。でもハンティング業界の売り上げは自然保護活動の運営に大きく貢献しているから今でもレジャーとして受け入れられているのです。

一体何がよくて何が悪いか、線引きするのは結局意見を出さないとどんどん偏って行く世の中。中国や韓国が今どんどん力をつけて、世界で東洋力を発揮し始めている中、日本も欧米諸国に負けずにしっかり東洋の力に貢献できるようになったら、またさらに世界は面白くなるんじゃないかなと思います。その第一歩として私たち一人一人が世界の中の日本のありかたを考えてみたり、今の日本と向き合えるようになったりしないといけないのかなと思います。

Yamawaki 手始めに、まずは海外にもう少し目を向けてみてはいかがでしょうか。今私たちがいる世界って、本当にちょうどいい大きさだなって思います。だって、行こうと思えば物理的にどこでも行けちゃいます。行かなくても興味を持つだけでもいいと思います。ちょっと視野を広めるだけで意識って変わったりするし、そこから新たな感覚が生まれて自分が変わったり成長したり。そんなのって、限りなく楽しいじゃないですか。

動物園しかしらない温室育ちなライオンは目が濁っています。でも野生のライオンは目の真ん中が太陽みたいなギラギラした光を放って生きています。是非、みなさんもアフリカをのぞいてみてね。きっと何かが変わります!

<了> 開国ジャパンプロジェクト


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