バランス感覚をもって世界情勢と歴史を見てみよう

「AさんはBさんを殴った」
この文章を読んで、どう思われるだろうか?Aさんが悪い?確かに一見そうみえる。が、世界情勢を見る場合、そう決め付けるのは、案外難しい。
考えてほしいのは
1. この情報源はどこか?
2. Aさんはなぜ殴ったか?
なぜなら、これらの疑問の答え次第では、Aさんが悪いと決め付けてはいけないからだ。もし、これがBさん側からのソースだったら、誇張か?自作自演か?と疑わないといけないし、Aさん、Bさん側ではない独立系のニュースはどう報道しているか?を見なければならない。時には、言った者勝ちで、実はBさんがAさんを殴っていたということもありえる。
仮に、独立系の情報源からだった(或いはBさん側からの情報がなかった)として、なぜAさんはBさんを殴ったのか?例えば、BさんがAさんやその家族を何十年近くいじめてきたから、かもしれない。理由や背景を知らないことには、簡単にAさんが悪いっていえないはず。
このようにAさんがBさんを殴るにはそれなりのことをBさんがしたのか?という疑念、もっといえば、人が何かをするにはそれなりの理由が通常あると考えること-これを私はバランス感覚と呼んでいる-をもって世界で起きているニュースを見る必要がある。
ニュースはちゃんと公平にどちらの意見も書いているはず、と反論される読者もいるだろうか?公平でないと思う方が自然だろう。ニュースを流す、新聞やテレビはスポンサーがあって成り立つ。彼らがスポンサーを攻撃するようなことはあまり言わない、言えない。そもそも公平性というのは、幻想。
百歩譲って、スポンサーと関係ない話だとしても、話をどの時点、どの視点から始めるかが問題なのである。
例えば、「Bさんによる長年の搾取の末、弱い立場のAさんがとうとう立ち上がり、Bさんを殴った」だったら、どういう印象を受けるだろうか?Aさんが悪い?Bさんが悪い?
と、これこのように、事実をどこから遡るかで、話が全然違ってくる。ちなみに、上記の文章はAさん=エジプトの民衆或いはアラブの春で政府側に抗議・反抗している民衆、Bさん=ムバラク元大統領或いは民衆に追い詰められている中東の王族たちを想定して書いた。
毎日起きているニュースは、一日という切り口で世の中の出来事を区切って報道しているわけだから、「AさんがBさんを殴った」的な記事はたくさん流れている。そして、さらに始末が悪いのが、片方の側からのニュースが多いこともある。
そんなことはないはずと思われるだろうか?
では、テロリスト側の言い分をきいたことがおありだろうか?サダム・フセイン、ムバラク、カダフィたちの言い分をきいたことがあるだろうか?はたまた、欧米、イスラエルの言い分はよく聞かされるけれども、パレスチナ人の言い分をきいたことがあるだろうか?アラブからの視点を報道するカタールの報道機関、アル・ジャジーラをどれだけ視聴されているだろうか?
と、このように、片側からしか情報を見ていないことが往々にしてある。そのため、全てニュースを検証している時間はないけれども、少なくても受け手としては、バランス感覚をもって、本当か?と疑問を持っている姿勢が大事だと思う。
そして、歴史についても同様のことが言える。例えば、韓国人が学校で教えられるのは、「韓国人はどこにも侵略していないのに、外国から900回余り侵略され、そのうち倭寇によるものが781回、中国からは20回侵略された」倭寇側の日本は何回朝鮮半島に行ったかなんて教えないですね。
中国の場合も、こんな風に。「中国は他国を侵略したことは一度もない」
中国も何十回と中央アジアや北部、朝鮮半島へと領地を広げたり、取られたりしている。その証拠に今の中国の国境はかつて秦の始皇帝が決めた国境ライン、万里の長城をはるかに越えている。朝鮮半島だって、一時は中国東北部にまで領地拡大した時期があったし、元寇でモンゴル人の手下として日本に攻めてきたのは朝鮮半島の人々だ。
こうも言うことが食い違うのは、勝者の立場の言葉と敗者の立場の言葉が違う上、誰しも自分には甘く、他人には厳しいから。侵略に成功すれば、「領地拡大」、「版図を拡大した」と言い、失敗すれば、「遠征失敗」、「○○の戦いが辺境にあった」、「異民族の侵略を受け、国境付近で撃退した」、などといった表現に。ものは言いようで、それが国史として各国で言い伝えられてきているから、そもそも何をもって公平、正義というのか分からなくなること、必至。
そのため、どちらが良い・悪い、というのは国際関係の分野では議論してはならない価値基準だ、というのが先人の知恵。もちろん、政治家たちはそれぞれのアジェンダ、意図(下心)があるので、都合の良い時には正義だのと振りかざすが、その正義は、かなり怪しいもの、そんな言葉を言い出す辺りから、何をたくらんでいるのだろう?と勘ぐるくらいでちょうどいい。それほど、巧みな言葉で情報発信者は攻めてくる。
そして、いろんな人の立場を歴史を遡って知れば知るほど、バランス感覚も磨かれ、ニュースの謳う「事実」を疑う眼も養われ、現在がなぜ現在の状態になっているのかも分かってくる。
<了>
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