庶民派アンバサダーの開国のススメ

開国ジャパンプロジェクトの主宰者からの寄稿リクエストに、何も考えず「いいよ、喜んで!」と答えてしまったのが運の尽き(ツキ?)でした。
最初のメールのやり取りをした1週間後の2011 年3 月11 日、東日本大震災発生。勿論、私自身も公私共に大なり小なり影響を受け、かなりドタバタしてしまったせいで、コラム執筆もまったく手付かずの状況でズルズルしてしまった次第。
ただ、不幸中の幸いというか災い転じて福となすというか、今回の大震災の直後、世界中の友人達から電話やメールをもらいました。イタリア・オーストリア・南アフリカ・ブルガリア・イギリスetc、その中には15年も会っていない友人からのメッセージもありました。まさにインターネット様サマですが、改めて自分という人間の人格が世界中の人達との繋がりを通じて形成されていると感じた出来事でした。
そんな私ですが、実は、自分を“グローバルである”と感じたことはほとんどありません。海外に住んだことも無ければ、ジャパニーズ・イングリッシュ以外の外国語も話せないし、普段の生活も極めてドメスティックなので、正直“グローバルなロールモデル達”の1人として紹介されることにはかなり違和感があります。それでも、『こんな輩が結構楽しそうにやってるんだ』ということが伝わって、それが何らかのメッセージになるなら、と考えています。
■ “誰でも簡単にグローバルになれる”
先述の通り、いまだに海外に住んだことすらない私ですが、ハタチになるまではそれこそ海外に行ったことすらありませんでした。そんな私が、初めて海を越えたのが1994 年のサッカーのFIFAワールドカップアメリカ大会。アメリカという国のスケール、ワールドカップの素晴らしさとそこに日本代表が出ていないことの途方もない悔しさ、そして世界中から集まったサポーターとの触れ合い……。これらすべてがハタチの大学2年生に与えたインパクトは計り知れませんでした。
その時、単身乗り込んだアメリカでは何もできない状態でした。移動は勿論、レストランでの注文もままならないくらいのレベル(涙)。よって、翌年、とにかく英語くらい何とかしよう、1度生活してみよう、と思ってバイト代をすべて注ぎ込んでロンドンへ。今になって振り返ってみても、余りにウブな自分が懐かしく、隔世の感がありますが、今思うと、ロンドンで世界中から集まった学生達とで過ごした1ヵ月半の日々が、ここでいう“グローバル化”の原点だったように思います。
私の勝手な理解としては、海外在住経験があるとか、多国籍企業に勤めているとか、という外形的・形式的な要件を充足しているから“グローバルである”という訳ではなく、人間としての内面的・本質的なキャラクターが“外国人相手でも外国においてでもいつも通りで大丈夫=特段身構えて意識して変えなくても通用する”ということが“グローバルである”ということの要件だと考えます。とすると、外国人相手にビビらない、外国に行くのに身構えない(南アフリカのような国の治安の悪さに対する準備とかは当然別ですが)、という形式的な部分はクリアした上で、欧米であれば、年齢によらずファーストネームでフランクに接する、レディーファーストは当たり前、ライト・キスやハグも自然にこなす、アジアであれば、年長者の敬いをより心掛ける、勧められたお酒は頑張って飲む(笑)、そして、世界中どこに行っても美味しく楽しく飲み食いできる、といった立ちふるまいの部分がこなせるのであれば、それだけで十分“グローバルである”と言えるのではないでしょうか。
勿論、それらに加えて、留学経験があるとか、ビジネスで世界中を飛び回っているとか、世界中を旅しているとか、といったもう一歩踏み込んだところまで経験しているのであれば、より一層“グローバルである”と言えるのかもしれません。ただ、経験はとても重要な要素ですが、たとえ経験が浅くても、もっと言えば外国人や外国と接する機会が多くなくても、本人の意識や心の持ち方ひとつで、誰でも“簡単にグローバルになれる”のではないでしょうか。
ということで、自分を正当化する意味でも(笑)、私は“グローバルになる”ということの定義をものすごく身近な水準に設定して、“誰でも簡単にグローバルになれる”ということを、この場で提唱したいと思います。
■一生懸命アタマで作文して、間違えていても構わないから勇気を振り絞ってとにかく話す。
因みに、少し話を戻して、私の“グローバル化”の原点であるロンドンでの経験は、まさにこの“立ちふるまい”の部分をこなせるようになったこと、この一点に尽きます。ドミトリーで共同生活をしながら語学学校に通ったのですが、世界中で日本人よりたくさん英語の勉強を机上でしている国民はいない訳ですから(成果はともかく・苦笑)、あとは実践あるのみ。
一生懸命アタマで作文して、間違えていても構わないから勇気を振り絞ってとにかく話す。これを毎日繰返しながら勉強や遊びに勤しんでいると、いつの間にか“立ちふるまい”の部分が身に付いてくる。ホント、ただそれだけだったように思います。
当時は、“グローバルになろう”なんて意識はこれっぽっちもなかったのですが、結果的に、ここで身に付けたことをずっと繰返しているだけのような気がします。(『良くも悪くもお前のその図々しい性格だから身に付いただけ!標準化できないよ!』という突っ込みがアチコチから飛んできそうですが(笑)、実は意外に小心者であることも付け加えておきます。この点、学生時代からの友達や妻にはバレバレで、むしろオープンな(≒図々しい)性格はロンドンでの経験ゆえに未に付いたのかもしれません。ということで、標準化は十分可能という整理にさせて頂きます・笑)
まあ、その後、ヨーロッパをバックパックひとつで旅行したり、ビジネスで欧米やアジアの各国を飛び回ったり、世界中でサッカー観戦したり、外資系金融機関に勤務したり、といった経験は、確かに人並み以上にしているとは思いますが、それでもこの程度の本当に他愛のない経験がすべてのベースになっているのは間違いありません。そういう意味で、私の場合、他の開国アンバサダーの方々とは大きく異なり、かなり庶民的な草の根レベルの“ロールモデル”になれるのではないか、と思います。
■『きっかけ”や“テーマ”や“理由”になるものを、自分の生活に組み込む』
「とにかく、まずは海外に足を運びましょう!」、このひと言に尽きます。前言とやや矛盾すると感じられるかもしれませんが、グローバルという言葉と向き合う以上、日本や日本人以外の国や人との付き合いが大前提なのは当たり前。であれば、百聞は一見に如かず。とにかく、早いうちに、たとえお金はなくとも、手段やきっかけや目的は何であろうとも、まずは一度自力で海外に足を運びましょう。最近、学生の海外旅行が減っていると聞きますが、非常に残念に思っています。
刺激を受け視野を広げるには、海外旅行は非常に有益です。勿論、できれば旅行代理店に頼らず、自力で!
その上で、庶民的なロールモデルとして、オススメしたいのが、『趣味でも活動でも教養でも、何でも良いから、外国や外国人とのつながりを持つための、“きっかけ”や“テーマ”や“理由”になるものを、ひとつだけで良いので自分の生活に組み込む』、ということです。絵画・映画でも、ボランティアでも、歴史・世界遺産でも、何でも構いません。つながりを持ち、かつ、それを維持(これが重要)するための何かが、常に自分の生活の中にあること。これさえあれば、あとは気の持ちようで、誰でもいつでもどこでも簡単に“グローバルになれる”はずです。
留学や駐在は誰にでもできることではありません。外資系企業で外国人に囲まれた環境でビジネスをすることも然り、外国人の彼氏や彼女を作ることも然り。外国語の勉強は誰でもできますが、“勉強”となるとなかなか大変です(笑)。だからこそ、自分が能動的に積極的に関わりを持ちたいと思える“何か”、がとても大事なのです。
私の場合、それはフットボール、つまりサッカーでした。サッカーは世界最大のスポーツ、世界で最も愛される(そしてちょっぴり憎まれる?)エンターテイメント、無意識のうちに常に世界中とつながりを持てる素敵な存在。世界中どこの国に行っても、サッカーさえあれば盛り上がることができます。
10 年以上前の試合の話ひとつで、肩を組んで仲良くビールが飲める。ボールひとつあれば、その場でミニゲームが始められる。そんなこの上なく素晴らしいサッカーというものが私の手元にあったこと、まさに『フットボールは世界を繋ぐ』、それこそが私がこの開国ジャパンプロジェクトにコラムを寄稿できた唯一且つ最大の理由です。(ロンドンで出会った世界中から集まってきた学生達とも、サッカーの話でメチャクチャ盛り上がったのは言わずもがな……)
■ “つながりを持てる何か”が手元にあると、“グローバルであり続けること”ができるはず
社会人としての生活がスタートすると、なかなか自分の思い通りになるとは限りません。実際、グローバルなロールモデルの1人であるはずの私が、現在は超ドメスティックな仕事で海外はおろか、関東から出ることすらままならない状況です。そのくらい、社会人になると自由が制約されてしまうというのが現実です。でも、“つながりを持てる何か”が手元にあると、“グローバルであり続けること”ができるはずです。
そして、これが一番大事なことなのですが、グローバルになること、グローバルであり続けることは、とても楽しく素晴らしいことなのです。日本という国家がどうこうとか、日本の経済がどうこうとか、大そうな偉そうな議論を展開する気はさらさらありません(本当はしなければいけないのかもしれませんが・・・苦笑)。単純に、個人として、視野が広がり、輪が広がり、心が広がり、とにかく楽しいのです。
ちっぽけな存在でしかない自分が、でも世界中の色々な国々や人々とのつながりの中で生きている、人格形成されている、ということを実感できることがとても素敵なのです。大震災直後の世界中の友人達からの電話やメールは、それを改めて確認させてくれました。日本も含めた世界中の友人達に囲まれていることに感謝、そしてそんな自分が人生を結構エンジョイしていることが嬉しく思っています。
何だかとりとめもない、“グローバルなロールモデル”とは言い難いコラムになってしまったような気がしますが、こんな輩もいるのだな、ということでお許し頂ければ幸いです。生まれて初めて、こういうコラムを執筆し、しかも実名写真入りでインターネットに登場するという貴重な機会を与えてくれた開国ジャパンプロジェクトに感謝。
最後に、こんな自由気ままな人生を与えてくれた両親・兄弟・友人達、そして何より、こんな風来坊な人生に付き合ってくれている妻と長男に感謝。
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