魂で世界を渡り歩くGK・ヨージヤマノ ~(2)中国上陸編

 

いよいよ旅立ちの日を迎えました。神戸港から単身、船に乗り、「人生初の海外生活」の地である中国・天津市を目指します。

出発前に、神戸港から見える海を背景に1枚の写真を撮りました。「この海の先に、今回、わしが挑戦する中国があるんじゃのぅ……」 広大に広がる海を目の当たりにし、何か、とんでもなく巨大で、得体の知れない世界に足を踏み入れるような……そんな心境でした。

 不安も当然ありましたが、「ここまできたら、もう、開き直ってやっちゃろう!!」と覚悟は決まっていました。神戸港を出発し、中国に向けて進む船の中でも、360度、辺り一面に広がる大海原を見ながら、様々な想いが脳裏をかけめぐります……。「一体、この海の向こう側に、どんな人生が待っとるんじゃろうか……?」

神戸港から、2泊3日の長い船旅を経て……ついに人生初の海外生活の地である中国・天津市に初上陸しました。

 

■   「わしぁあ、ほんまに、こんなところでやっていけるんか……?」

天津港までは、今回、中国語学留学を僕に勧めてくれた知り合いの中国人の友達が迎えに来てくれることになっていました。……が、何せ相手は、会ったことも話したこともない人物。知り合いの中国人から「天津港で、この人に会え」と、10年以上も前に撮られた古い写真を1枚、手渡されてるだけでした。「ちゃんと迎えに来てくれるんかのぅ……?」 不安が尽きなかったのは言うまでもありません。

しかし、そんな不安も杞憂に終わり、どうにか無事に迎えに来てくれた中国人と合流しました。彼の車で、留学先である南開大学に連れて行ってもらいます。

その道中……。車の中から見えた中国の景色が今も忘れられません。高さ10メートル以上も積み重ねられた大量の荷物を、三輪車のようなバイクに乗せて爆走する人……。整備されてない道路……。ホコリでスモークがかかったような街の空気……。車が通ってるにも関わらず平気でその前を疾走する自転車や通行人……。そして、その自転車や通行人の圧倒的な数……。建物も道路も人の態度も……すべてのスケールが、とにかくデカイ……。とてつもない、エネルギーとバイタリティ……。

同じアジアの国とは思えないほど、日本とはあまりにもかけ離れた「異次元空間」に、車の中にいながら圧倒されました。「わしぁあ、ほんまに、こんなところでやっていけるんか……?」 当時、まだ極端に「狭い価値観」の中でしか生きてなかった自分は、言葉を失いました。

 

 

車で南開大学に向かう途中、1軒の中華料理屋に立ち寄って食事をすることとなりました。中国上陸後初となる「本場・中国の中華料理」です。前述した中国人がたくさんの料理を食べさせてくれたのですが、その中でもなぜか僕の記憶に今でも鮮明に残っているのが、麻婆豆腐。

一口、食べた瞬間……「な、何じゃこりゃあああああ!!??めっちゃ、うまいじゃん!!こんな美味しい中華料理を、これからは毎日、食えるんかぁ!?しかも何じゃ、この価格!?ぶち、安いじゃん!!」……中国初上陸の不安の中に、一筋の光明を見出しました。

 

しかし、極端に「狭い価値観」の中でしか生きてなかった当時の自分は、「中国の中華料理を食べてたら、遅かれ早かれ、必ず一度は腹を壊す」こと、「中国北部の料理は油っこく、毎日毎食、食べるとかなりキツくなる」ことなど、まだ知る由もなかったのでした……。

 

 

■   「これは夢かぁ?それとも映画の世界かぁ?あるいは漫画の世界なのかぁ……?」

南開大学に無事、到着。翌日、授業の登録手続きを行うこととなりました。いくら、「表向きは『語学留学』。真の目的は『中国でプロサッカー選手になること』」とは言え、この手続きを行わないことには中国に住むことすらできません。

ところが……。中国語がこれっぽっちも話せなかった当時の自分は、ここで四苦八苦することになります。日本でまったく中国語を勉強して来なかったので、「ニーハオ」と「シェイシェイ」しか分かりません……。どうにもこうにもコミュニケーションが取れずに困っていると、そんな僕を見ていた1人の外国人留学生が、通訳をして助けてくれました。

 

聞くと彼女は「グアテマラ人」という。「グアテマラって……東南アジアの国じゃったかいのぅ?」 実際はグアテマラは中米の国なのですが、もちろん、そんなこと、当時の自分は知りもしませんでした。そもそも、グアテマラ人と交流したの自体、生まれて初めての経験だったし、まさか人生の中でグアテマラ人と交流することになるだなんて思ってもみなかったので、大きなカルチャーショックを受けました。

しかしそれは、これから怒涛のように訪れるカルチャーショックの序章に過ぎませんでした。その後、他の留学生と合流してみると……日本人、韓国人、アメリカ人、イギリス人、ドイツ人、イタリア人、フランス人、スウェーデン人、ロシア人、ウズベキスタン人、メキシコ人、モンゴル人、北朝鮮人、イラク人、スリランカ人、バングラデシュ人、南アフリカ人……それこそ、正に世界各国から留学生が来ていて、ビックリ仰天!!「な、何じゃこりゃあああああ!!??」

日本にいた時、同じ大学のサッカー部員以外にほとんど友達がいなかったほど、極端に「狭い価値観」の中でしか生きてなかった自分が、突然、このような「人種のるつぼ」に放り込まれたのです。「これは夢かぁ?それとも映画の世界かぁ?あるいは漫画の世界なのかぁ……?」 目の前で起こってることが「現実の世界」だと、到底、認識することができませんでした。

 

 

■   見るモノ、触れるモノ、感じるモノ……すべてが人生初の衝撃的な体験

中国に初上陸し、まず中国に衝撃を受けたと思ったら……その衝撃が冷め止まぬ中、今度は南開大学で世界各国の留学生たちに囲まれ、二重三重の衝撃を受けます。しかも南開大学にいた日本人留学生も、サッカーの世界とはまったく無関係で、日本にいた時には交流する機会すらなかった大学の人たちばかり。中には社会人の方も……。

見るモノ、触れるモノ、感じるモノ……すべてが人生初の衝撃的な体験。しかも、その「人生初の衝撃的な体験」が立て続けに、しかも大量に、雪崩のように僕に押し寄せてきました。感動と興奮、期待と不安……とても1つの言葉では形容できない、ありとあらゆる感情が交錯し、頭はパニック状態に陥りました。

しかし……。そんな混沌と混乱の中でも、僕は、「中国に上陸した真の目的」を見失ってはいませんでした。

 

 「わしは中国に、『プロサッカー選手』になるためにやって来たんじゃ」

 

 中国語も中国文化も、何もかも一切、分からない。中国サッカー界へのコネや人脈も当然、皆無。頼れる知り合いもいない。1人じゃまだ買い物すらもままならないし、外を歩くことさえもできない。ともすれば「一歩」を踏み出すのが、非常にためらわれる状況……。

それでも僕の体は、自然と動き出しました。僕の体を突き動かしたのは、「どうしても、プロサッカー選手になりたい」……ただ、その「想い」だけでした。

中国初上陸から僅か3日後には、「中国でプロサッカー選手になる」ための本格的な行動を開始。こうして僕は、大いなる挑戦の記念すべき「第一歩」を踏み出しました。そしてそれは、以後7年間にも及ぶ、世界各国9カ国を股にかけた挑戦の始まりでもありました。

 プロフィール:山野 陽嗣(やまのようじ)/1979年生まれ、広島県出身。アルビレックス新潟シンガポール・GKコーチ兼選手。小学校時代までハンドボールをプレーし、広島県代表として全国小学生ハンドボール大会に出場。中学入学後、サッカーに転向し、立正大学サッカー部でもプレー。卒業後の中国天津市の南開大学への留学を契機に海外へ。2004年からアメリカに渡り、現地クラブへ入団。翌年、中米・ホンジュラスの地でCDレンカと契約締結し、ホンジュラス初の日本人プロサッカー選手となる。2006年にはホンジュラス2部リーグ優勝。その後も世界各国を渡り歩き、約7年間の海外挑戦を終え、日本に帰国。2010年1月にはホンジュラス大統領官邸に招待される。同5月より現在に至る。



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