人種差別と人権

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人種差別は存在する

2008年アメリカで、初の黒人大統領が選出された。同じ黒人であるライス国務長官やパウエル元国務長官も共和党ながら、共に喜びを伝えていた。それほどまでに、黒人が乗り越えた壁は大きい。

奴隷から始まり、1960年代のマーチン・ルター・キング牧師などの運動を経て、選挙権を得、ようやく大統領を選出するまでにいたった。

しかし、だからといってアメリカに黒人差別がなくなったわけではない。「あからさまに」黒人に対して差別しないだけの話である(だから、海外で「あからさま」に差別を指摘したり、言わないこと)

Yoshikawa

例えば、ハリケーン・カタリーナの被災者の多くは貧しい黒人たち。白人たちは、大概ハリケーンが来る前に避難しており、逃げる足や金を持たない貧しい黒人が被害を受けたからだ。そして、カタリーナの被災者に対しブッシュ政権は非常にやる気のなさを見せた。放置すればするほど、被災者が死に、援助金を施さねばならない人々の数が減るのが理由、と言われた。非常に非人道的である。また、2008年には復興支援がマイノリティ(黒人)に対し不利な条件で行われているとして訴訟が行われ、(家の再建費用ではなく、カタリーナ前の家の価値に基づいて援助が支払われたという。こうすると、白人の大邸宅が一部損傷した方が、黒人の全壊した家よりも早く援助が行われることになり、最も援助を必要とする人々の手元に援助が5,6年も遅く支払われることになる)オバマ治世下の2011年になりやっと和解が成立した。

また、ニューヨークで危険区域として有名なハーレム。ここには、麻薬におぼれた黒人がたくさんいる。麻薬対策は前々から分かっていることなのだ。日本は麻薬に冒された台湾を支配することになったときに、オスマン・トルコ帝国から麻薬の根絶方法-国が麻薬を合法化し、医師の処方箋という条件付きで販売して安定供給を確保し、中毒者が麻薬ほしさに犯罪を犯す理由をなくしつつ、中毒者の消費量を少しずつ減らして最後は根絶する方法-を教わって実践していたくらいである。にもかかわらず、21世紀の現代アメリカで、麻薬問題がここまでひどいのはおかしい。対策を打ちたくないという本音が見え隠れする。

そして、こうした人種差別は、黒人たちが社会の最下層から這い上がる道を狭き門とし、所得格差がさらにまた差別を生んでいく、という悪循環が生まれている。黒人の中でも色が薄い方がいいと思われている。現に、2009年に亡くなったマイケル・ジャクソンがどれほど白くなったか、ご記憶の方も多いだろう。

その一方で、アメリカは人権侵害を振りかざし、中国や一部の独裁政権を非難する。中国などはアメリカからの非難に対し、グアンタナモ米軍基地でのテロリスト容疑者への拷問を非人道的、基本的人権に反するではないか、と反論している。本来普遍的に人々に一定の権利を保証することが趣旨である人権のコンセプトと人種差別はどうやって両立するのか?まずは、日本と西洋の人権の歴史を手繰っていきたい。

 

人権の歴史

日本では、人権という言葉はなくても、最低ラインの人権(生存権、一部例外はあるにしても私有財産権)はかなり昔から全ての人々に認め合っていたと思う。「一寸の虫にも五分の魂」を尊重していた。江戸時代、非人といっても、仲間はずれにはされたけれど、最低ラインの人権はあったし、非人用の仕事(皮革製品製造等)も確保されて自活できた。それが、明治以降少しずつその他の人権(参政権、表現の自由等)を獲得していく。

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Fig1

けれど、世界の他の多くの地域では奴隷制度があった。奴隷制度がなかったのは日本人とユダヤ人のみという。西洋では奴隷は人間扱いされず、貴婦人が奴隷の前で裸になっても羞恥心を感じなかったくらいだ。そんな西洋では、奴隷以外の人々がまず自らの人権を最低ラインのものから今の人権の範囲まで拡張していった。それから植民地時代に突入して人権を母国の人間(=白人)の特権として堅持する一方、植民地の民を奴隷同様に扱った。その後2つの世界大戦を経て人権の対象を白人から日本人や旧植民地の民へと拡大していった。(Fig.1参照)そして、こういう経緯であるがために、欧米では人権の対象の拡大はそのまま、人種差別の克服の過程につながっていく。

何がいいたいかというと、日本では人間を人間としてみるのは当たり前で、人権に含まれる権利の拡大について闘争の歴史があったのに対し、西洋では人権に含まれる権利の拡大と、人権の対象となる人々の範囲の拡大と、両方の闘争の歴史があるということ。ただし、前者の拡大については遠い昔になってしまった(当たり前と化した)ので、今の人々の記憶にあるのは後者のみだろう。

Yoshikawa 基本的に人間は、自分が苦労したことを他人も苦労しているときは許容度、寛容度は高くなるが、自分の中で当たり前に思うことを他の人ができない、しないと、許容度は低くなる。そのため、西洋人が人権というときは、質(人権の内容の充実度)を、日本人が人権というときは、量(人権の対象)を問題視する傾向が高く、なかなか議論がかみ合わない。

<了>


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