「場の空気」とは

Yoshikawa

以前にも、海外にいくと普段意識しない日本の説明をしなければならない状況にしばしば陥るので、日本について勉強しようという話を書いた。とはいえ、日本をそう簡単には説明するのは難しいので、ご参考までに一つ「場の空気」、KYの説明を以下に試みる。

 

「和を以て尊しとなす」

日本を研究しているアメリカ人に「日本では誰が物事を決めるのか?」と質問された。首相でも、与党でも、官僚でもない。全てが決定権を持たないという。

Yoshikawa それは空気。戦後の日本の首相も、空気を読みそこなって辞任しても、空気に抗って生き残るのは奇跡に等しい。では空気とは何?英語の場合、単純にエアーとか、アトモスフェア(雰囲気)とかで表現してみても、意味不明といった顔をされるだけ。

そのため、私ならこう説明する。即ち、「多数派と思われる人々の想定リアクション、そしてそれが言葉として発せられたときから全体にかかる無言の同調プレッシャー」。聖徳太子の時代から、「和を以て尊しとなす」が金枝玉条なのである。だから、KYという言葉がない時代からいろんな言い回しで表現されている。

■夏目漱石(「草枕」)の場合

「山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。智(ち)に働けば角(かど)が立つ。情(じょう)に棹(さお)させば流される。意地を通(とお)せば窮屈(きゅうくつ)だ。とかくに人の世は住みにくい」

■伊丹十三の父、伊丹万作の場合(佐高信・魚住昭著「だまされることの責任」から引用)

「一度脱落した人間に対するものすごく冷たい視線、切り捨ててしまう視線というのが、日本の社会構造の中にある。もっと言えば、お互いに差別されはしないかと戦々恐々としながらしか生きていけないような、目には見えないけれども重層的な差別の構造が根強くあって、それが凝縮される。

(中略)実際に僕らはお互いにお互いを細かく、小さなところで差別しあわないと生きていけない人種なんじゃないか。だから日常生活でかなりきつい緊張や抑圧を強いられる。日本という国はこれだけ経済的に豊かな国なのに、住んでいる人間たちは鬱々として幸せじゃないのは、そういう理由なんじゃないのかと思ったりします」

■「非属の才能」の著者、山田玲司の場合

「ところで、僕たち日本人がどんな教育を受けているかといえば、どんな場面でも空気を読み、協調性を持つことがいちばん優先されているような教育だ。しかも、その多くは「協調」などではなく「同調」の圧力だろう。「みんながそう言っている」という顔のないモンスターに逆らうと、とたんに仲間外れにされ、生きる場所を奪われる」

 

■場の空気に支配される弊害

しかも問題は、空気の上に成り立っているコンセンサスなるものは半分言論封鎖をした上でことだから、特別戦略的であるはずもない。メリット・デメリットがはっきりもせず、何が優先度の高いものなのかも判然とさせず、反射的な発想、感情論でとりあえず深く考えずにとりあえず発言してしまう、軽はずみな人。そしてそれは違うと冷静に突っ込むと、また反射的に感情的に取って、冷静に人の話をきけない人。するとなぜかいろんな意見がでたら、真ん中にして折衷案、みんなの意見をごった煮で全部入れてしまえという意味不明の(少なくてもその問題についてまともに考えていないことだけは確かな)人が沢山でてくる。

Yoshikawa すると、意味不明のコンセンサスが出来上がる。それでも、論理的に考えたら間違いだ、と繰り返せば、ようやく結論にたどり着いたような感じになったのに、「分からない奴だ」「KY」だと言われる。そうなると、すごく意見をいいにくい雰囲気がいつのまにかできて、他の有用であるはずの意見がでてこなくなり、何となく消化不良のまま、後になれば何故こんなになってしまったのか?といいたくなるような結果となる。

それでも、個々はそこそこ優秀だから、目端がきく人が身を粉にしてがんばっちゃう。「できることからやろう」という、とっても日本らしい発想。それは、カイゼンといわれるように、ちいさなことの積み重ね。だから、何とか社会が回っている。

しかし結局、みんなその場で意見を言わないから、ガスは全員たまっている。で、せっかく決定事項があっても、何となくガスが残っている人たちがこっそりと裏で決定事項と反対行動をとろうとしたり、陰湿な阻止活動を開始する。

そして、決めてやろうという人は、うまくいかないから、イライラする。そのため、原因が違っても、みんなが同じようにストレスを感じるようにできている。これがつもりつもって、日本社会の閉塞感の根本のように思える。

 

■みんなちがって、みんないい

この真逆を行くのがアメリカで、集団は所詮個々の集まりなのだから、個々が主張するのは当然であるし、いやならいやといって離れるまでのこと。あまり議論なく結論がでてくるというのはまずない。

Yoshikawa この場合まとめるのは大変だ。だからリーダーシップとかよく問題になるし、相手を説得するということが日常茶飯事だ。だけど、みんながいいたいことを言う分、みんなのガス抜きはその場で行われているから、決まればあとは割合早く決まるし、責任がはっきりしている。

なぜこうなっているかといえば、あまりに多様化社会なので、とてもではないが、わけの分からない「空気」なるものに支配され得ない。無言のプレッシャーなど相手が感じなければそれまでの話である。

そして、これからは意見を伝える、話す、説得するということが必要な時代になってきている。グローバライゼーションのおかげで以心伝心が期待できない場面がどんどん増えている。仕事の場でも増えているはずだ。

仕事のスキルとして身に着けないといけない性質のものだし、それ以上に生きていくうえで本当は必要なスキルのはず。

みんな言い始めれば、自然と意見は合わなくなってくるし、互いの意見の尊重の風土がでてくるはず。童謡詩人の金子みすずの「みんなちがって、みんないい」。そういう精神がもっと広まれば、みんないいたいことがいえなくて胃に穴を開けることは少なくなくなるだろう。

<了>


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