イギリスの暴動から見る、社会問題に対する論理の限界、そして日本の行く末

先月、ロンドンを中心にイギリス全土を跨ぐレベルの暴動がありました。事件の概要は、一部の若者(ロンドンでの逮捕者の過半数は18歳未満)が暴走、警察が初動に遅れたことが火に油を注ぎ、お祭り騒ぎのように破壊活動が行われていった、ということだったと思います。
暴動の当事者である若者たち、背景にあるイギリスの社会問題、政府の対応に触れながら、社会問題に対する論理の限界や日本の行く末について考えてみようと思います。
暴徒と化した若者たちには特徴があると考えています。彼らは労働者階級に属しており、多くが低所得者向け公営住宅及びその周辺に住んでいます。識字率の低さも含め、教育水準は低いです。この教育水準の低さは、職業の選択肢を狭めます。
イギリスでは階級問題に由来する所得格差が一つの社会問題になっています。これに対し政府は、先ほどの公営住宅運営を含む所得格差の是正に取り組み、皆が衣食住を最低限保障される社会になりました。また識字率の低下対策・雇用機会の増加を目的として、初等教育以前から高等教育以降にかけて幅広いプログラムや補助金制度を作り、彼らを支援しました。
所得格差が存在した、だから是正した。教育・雇用機会の格差が存在した、だから是正した。論理的に正しい解決策だとは思います。しかし、彼らによる暴動は起きてしまいました。
私はこの暴動を目の当たりにして初めて、社会問題は論理的に解決できない、少なくとも論理では解決しにくいのではないかと考え始めました。現在人類が抱えている社会問題は全て、その問題を構成する原因が複数あり、複雑に絡み合っています。これら原因の全てを論理的に定義することは、限りなく不可能に近いと思います。人それぞれ異なる原因の定義に繋がる可能性も多分にあります。論理の限界だと思うのです。
実例を挙げて考えてみましょう。例えば、階級問題による所得格差は少なくとも200年前からありました。ある人はこれを、歴史的鬱憤(うっぷん)の蓄積が暴動の原因となった、と考えるかもしれません。一方で、昔から存在したのだから今更原因になり得ない、と考える人もいるはずです。もっと言えば、昔からこの規模の暴動はあったのかもしれません。それが戦後50年経ち、久しぶりに起きたので問題になったのかもしれません。
さて私たちが暮らしている日本もまた、数多くの社会問題を抱えております。これら社会問題は将来、大きな対立を生んだり、大きな悲しみをもたらしたりするかもしれません。解決するのが困難なので、今日まで社会問題として残っているのだと思います。
私が皆さんに提案する、社会問題への対応策第一歩は、少しでも世界各国で起きている事件や社会問題に関して興味関心を持ち、我が身我が国での事柄のように捉え熟考を重ねる、ということです。ニュースや新聞の世界欄を見るだけでも良い、海外のニュースをそのまま翻訳機に入れるだけでも良い、身近にいる外国人や外国の文化を知っている人と少し話題に挙げてみるだけでも良いと思います。皆が自主的に日本の事・世界の事について考えることこそが、諸問題の解決に繋がる糸口をもたらすのではないのか、と信じております。
<了>
Facebookページに参加しませんか!
『開国ジャパン』は海外経験豊富な開国アンバサダーによる情報発信メディアです。
海外での生活やビジネスなどに興味のある方のために
★各国に駐在しているアンバサダーからの現地事情
★英語などの語学や海外での生活情報
★海外ビジネスの情報
など、幅広く最新の情報を発信しています。
最新記事のチェックにはTwitterが便利です。
更新情報を必ずツイートしています。どうぞ、フォローしてください。
開国アンバサダー
現在89名のアンバサダーが活躍中!
開国アンバサダーは、「グローバル社会で活躍する新しい日本人のロールモデル」 です。開国ジャパンでは彼らの熱い想いを発信しています。
中国広州在住・和僑
竹下 哲郎(たけした てつろう)1975年鹿児島生まれの千葉育ち。妻(広東人)と娘の3人家族。中国大連・遼寧師範大学卒業後、アクセン...
リージェンコンサルティング 代表取締役
野村 隆(のむら たかし)ツイッター:@TakashiNomuraTw 早稲田大学卒業。グローバルコンサルティングファームの...
在シンガポール現地採用奮闘中
中植 弘満(なかうえ ひろみつ)1981年生まれ。兵庫県加西市出身。大阪体育大学体育学部卒、早稲田大学大学院人間科学研究科修了(修士...
ヴェネチア留学
山崎 創己(やまざき そうき)どうにかこうにか国際人になる道を模索中…。...
次世代キャリアコンサルタント
鶴岡 秀行(つるおか ひでゆき)東京都杉並区高円寺生まれ。上智大学大学院文学研究科心理学専攻(研究テーマはリーダーシップ・モチベーシ...
チーム開国ジャパン
ピックアップ
-
2013年6月カンボジア・タイビジネス視察ツアー開催!
カンボジアとタイを6月17日~20日の4日間で訪問するビジネスツアーを開催します ...
-
とある関西人、イタリアで女子高生してまんねん。
イタリア・ヴェネチア在住の「高校4年生」によるグローバルコラム連載開始 ...
-
国境を越えるイノベーションに必要な3つの人的ネットワーク
ベトナム在住の小原アンバサダーが提唱する「これからのイノベーションに必要な3つの人的ネットワーク」とは ...
-
「週末アジア視察団」でシンガポールへ!!
2月22日・23日の週末を使ってフラッとビジネス視察に行って、グローバル新時代の未来を語り、学びませんか? ...
-
TOEIC260点からの異国適応能力兼サバイバル能力の育て方
TOEIC260点からMBA留学した長井アンバサダーからのサバイバル提案 ...
-
バンコクで「蹴る・学ぶ・繋がる」フットサルW杯タイツアー
11月7~10日でタイ・バンコクでフットサルW杯の観戦などがパッケージとなったツアーを開催します ...
-
サラリーマン留学記-社費で留学する意味
日系コンサルティング会社から社費で米国留学する佐藤氏からのコラム。社費留学者からの貴重な体験記 ...
-
はみジャパ習慣(2)磯野カツオ氏を見習ってみる。
行動した結果、100点どころか50点すら取れなくても、意識してみるだけでも10点、行動しただけで30点!成績的には可! ...
-
NATOと呼ばれるニッポンジン
「NATO」って・・・・?No Action Talk Only….アジア新興国で揶揄されるそんな日本人の話です ...
-
パキスタンからグローバル人材を考える
パキスタン在住のアンバサダー尾崎氏が自身の多様な経験から独自のグローバル人材像を語ります ...
最新ニュース
-
U18W杯開幕、清宮オコエらで初V期待
夏の甲子園を沸かせた高校生強打者2人が、28日開幕した第27回U−18(18歳以下)ワールドカップ(W杯)で日本代表として世界一に挑む。 ...
-
「ガトリンの復讐」ボルト激突も無事
【AFP=時事】(写真追加)第15回世界陸上北京大会(15th IAAF World Championships in Athletics Beijing)の男...
-
イチのファンサービスに観客感涙
「マーリンズ1-2パイレーツ」(27日、マイアミ) マーリンズのイチロー外野手(41)は「2番・右翼」で出場し、4打数無安打。17打席連続無安打(3四球、1犠打...
-
川栄李奈、初舞台で「おバカ」返上へ
今月4日にAKB48を卒業した女優の川栄李奈が26日、都内で行われた舞台『AZUMI 幕末編』の制作発表・公開稽古に、共演者とともに出席した。 ...
-
世界の若手億万長者30名 日本人は?
フォーブスは世界で最も裕福な40歳未満の 44人のリストを公開した。ここではその中から30名をピックアップ。年齢の若い順に掲載する。 エヴァン・シュピーゲル(ス...