「卵は一つのバスケットに入れるな」:一点賭け主義から多極化世界へ(日本編)

Yoshikawa_eyecatch

逆カルチャーショックという言葉をご存じだろうか。海外に長い間滞在して日本に帰ると受けるカルチャーショックのことである。日本から外に出るときは、いろいろ違うものだとカルチャーショックを覚悟の上で行くが、日本に帰るときは、逆カルチャーショックに対する覚悟がないので、逆にショックが往々にして大きい。

今まで私が受けた、最大の逆カルチャーショックは成田空港でのこと。入管を通り過ぎ、荷物を受け取るエリアに行くころ、まず周りの人の話す言語が単一であることに驚き、しかも日本語であることに驚き、しばらくたってから、ここは日本だから当たり前と気づく。そんなことに驚く自分にさらに驚いた。

慣れとは恐ろしいが、ここで最初に私が驚いたのが、周囲の話す言語が単一であることに着目してほしい。裏を返せば、アメリカでは周りは全て英語ということはなく、実にいろんな言語が飛び交っているということでもあり、日本の言語の単一性が際立って見えるということでもある。そこで、今回は、日本とアメリカの最大の相違点の一つであろう、多様性を取り上げていきたい。

 

■一点賭け主義の日本

「卵は一つのバスケットに入れるな」というフレーズは、分散投資をするときの格言である。預金のみならず、債券や株券、貴金属などの形で分散させることで、身丈にあったリスクを抱えつつ、最大限のリターンを期待する事を教えている。そして、この格言をもっとも聞かねばならないのが日本社会ではなかろうか。この正反対の政策即ち、一点賭けにより、日本は経済成長を果たしたが、その一方で「失われた10、20年」の諸悪の根源の一つなのではないだろうか。

Yoshikawa 政治ならば、つい最近まで自民党に一点賭け、外交はアメリカに一点賭け、経済は西洋型経済開発モデル(軽産業から重工業へ、重工業からサービス産業へという道のり)に一点賭け。これのいいところは、勝ち馬がどこだか分かっている場合、持てる資源を投入するほど、リターンは大きくなる。勝率の高いところにしか賭けていないのだから、とにかく効率がいい。戦後吉田ドクトリンという、経済重視+軽軍備戦略の下、日本の安全保障は同盟国アメリカに大きく依存して防衛費もGNP/GDPの1%以下という低水準に押さえた。

55年体制で自民党の安定政権が誕生し、政治不安が事実上なくなったので、もっぱら経済復興にまい進し、本家イギリスが150年近くかけた産業革命も、2,30年で達成するという快挙を実現し、アメリカに次ぐ経済大国に出世できた。都市、特に一極集中といわれる東京に集中する富を地方へ還元するべく、言い換えれば地方票を獲得すべく、自民党の政治家たちは地元に空港、新幹線の駅、高速道路等を建設すると公約を掲げては当選し、全国に土建業が栄え、農家には潤沢な補助金が流れた。こうして、全ての日本人が経済成長の恩恵を、程度の差はあれ、受ける仕組みができた。

また、世界も冷戦体制の下、米ソ間で緊張と融和を何度も繰り返しはしたが、地域限定戦争はあっても大戦争には至らないように厳重に安全管理された時代であり、日本は他のG5諸国並みに世界安全保障に積極的に貢献することもなく、アメリカからフリーライダーと文句を言われつつも、アメリカが主張する日本の世界貢献要求にある程度応えていれば、外交上問題はなかった。それ以外の日本外交の特色といえば、小切手外交という、ODAを世界にばらまき、日本企業の輸出、進出をよりスムーズにするものだった。冷戦時代、日本周辺で日本の安全保障を脅かせる国はソ連以外にはなく、自衛隊+在日米軍の抑止力で概ね大過なく冷戦を乗り切った。

その結果、一点賭け主義の弊害、特に思考停止が日本社会をむしばむようになってきた。一点賭けという方針が決まったのだから、後はそれに集中すればいい。質問する前に動け。本来一点賭けするにはそれなりの理由・ロジックがあったはずなのに、それを理解しなくてもみんなの動きに合わせて行動すればうまくいった。いつしか、とりあえず偏差値の高い学校へ(何を学ぶかは不問)、とりあえず花形産業の有名企業へ就社(具体的にどういう仕事をするのかは不問)し、定年まで働きなさい。これが各自の意思に関係なく、模範的な人生プランであり、勝手気ままに生きるフーテンの寅さんは映画で楽しむもの、現実性はないのよ。と世間は教えた。

Yoshikawa 親や上司の指示に素直に従っていれば、とりあえず問題は起きないし、起きても自分の責任ではないし、従わないことで周囲との関係を壊したくないから、本当は違うことをしたいけれど本当はもっといい方法があるような気もするけれど、黙って指示に従っておこう。指示待ち人間で何が悪い、これが宮仕え、処世術というもの。

こういう風潮が出てくると、横並び主義が蔓延した。例えば、バブル期に、都銀が一行アメリカに進出すれば、己の体力も鑑みず他行が追随した。現在何行存続しているだろう。また、自分の頭で考えるよりも、公平感が何となくある具体的な指標が優先されるようになり、各自の能力で評価するよりも、勤続年数を優先する年功序列制が敷かれ、自らが解決策を考える前に前例主義が幅を利かした。

<次ページへ続く>

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