辛亥革命100年:傍系の日中関係、アジア主義の系譜(その2)

Yoshikawa_eyecatch

■満州事変から日中戦争中のアジア主義

田中義一内閣の大陸積極介入政策もあり、中国で反英感情よりも反日感情が高まってきた頃、1931年満州事変が発生。首謀者・石原莞爾は、満州国にアジアのフロンティアを作ろうと考えた。そこから、新しいアジア主義の一派、世界最終戦争論派が誕生した。つまり、日本はアメリカ(+ソ連)といつか(1970年代?)戦うことになるであろうから、それまでに大日本帝国の国力を高め、アジアと一致団結(東亜連盟)して西洋と戦おう、というものだった。そのため、アジアの人々には日本に積極的に協力してもらう必要があり、アジア諸国の政治の独立を認める等、同世代の他のアジア主義団体よりも寛大だった。これがアジア人受けしていたようで、東亜連盟の中国代表を汪兆名が後に就任したほどだ。(当時東条英機首相と決定的に不仲だった石原の団体に、傀儡政権の長が入るというのは、かなり大胆である)

石原莞爾アメリカとの戦争を想定していた石原にとり、できるだけ早急に世界最終戦争の最前線と考えられた満州に重工業(戦車、飛行機製造)を発展させたかった。日本内地でさえ、重工業はまだ発展途上だったときに言うのだから、ウルトラC的な経済モデルが必要だ。そこで、石原の盟友であり、当時屈指のロシア・ソ連通と言われた宮崎正義が石原の理想を具現化すべく、共産主義でもなく、帝国主義でもない、短期国力強化型経済モデルという観点から、日本株式会社の原型を作り上げた。つまり、1)政府が企業間の過当競争、長期的投資を怠る超近視眼的な利益追求を抑制しつつ、経営者には長期投資を含めより資源の効率活用に専念させ、資源の全体最適配分調整に乗り出し、2)政府が、資本主義の無制限な欲望(搾取)ばかり追求させないよう、労働者への保護法などの形である程度で歯止めし、労使協調に向かわせることが特色。革命派が日本の変革を暴力に求めたのと対照的に、宮崎は平和裏に、経済モデルという形で変革しようと試みたといえる(だが、一歩間違えれば、統制経済になってしまい、東京に宮崎が召還された後は、岸信介、東条英機らが満州に残って、統制経済に仕立て上げた)。

一方、陸軍きっての中国通といわれた松井石根は、西洋とは良好な関係を保ちつつ、アジアのことはアジア人が決めさせてもらう、というアジア・モンロー主義派を代表していった。事実、日中戦争前夜まで、蒋介石の義弟、宋子文等中国の要人たちとあって、中国安定の道を探るのだが、皮肉なことに日中戦争時の中国大陸への派遣軍司令官に任命され、南京陥落までを指揮することになり、後に南京事件の責任者としてA級戦犯として裁かれることになる。

こうした、日中戦争前夜のアジア主義を俯瞰すると図2のようになる。

 

■戦前のアジア主義をまとめれば、二極化

ここで、戦前のアジア主義を無理やりまとめると、アジア主義というものは、明治初期の西洋一辺倒の日本社会に対して、アジアとしてのアイデンティティを思い起こさせ、社会全体のバランスを取るという役割を持っていた。が、日露戦争後、アジアの大国とみなされるようになると、日本はアジアのリーダーとして、より対等な東西関係、新しい世界秩序を築くための思想や方策―或いは新しい日本のミッション―を考える余裕と、列強と同じように他のアジア諸国を搾取できる力を、同時に持つことになった。そこで、アジア主義はこの両方向の思想を包括することになるが、前者(コスモポリタン派、世界最終戦争論派、革命派)を指向したものは、西洋と東洋のいいとこ取りをして(国際)社会にはびこる諸問題に対処していこうと考えた。つまり、西洋の技術やダイナミズム、東洋の強きは弱きを助けるという美徳、我欲の暴走の抑制、大乗仏教的思想の知恵等とを合わせて、西洋の帝国主義、人種差別、東洋の後進性等を克服していこう、というわけだ(以前紹介した欲の抑制、人権のコラム参照)。但し、その実現方法で意見が分かれたが。

一方、新しい日本のミッションを認識できなかった後者(帝国主義的同情派、アジア・モンロー主義派)は、思想的発展を見ずに自滅の道を進んでいく。西洋の技術を導入して、心は日本人として国力を向上させようと考えた和魂洋才が唱えられていたが、西洋の技術を導入して物を生産するという運用面を担当するのは、西洋式資本家であり、彼らが西洋と互角に戦おうと考えれば、植民地を広げ自社製品を買わせ、労働者にはできるだけ低い賃金で働いてもらいたい、という発想になる。そう考えると、日本の国力増強と帝国主義は不可分であり、日本はアジアのリーダーという肩書に自己陶酔したい、威張っていたい感情と日本はもっと国力強化すべきという信念とが正面衝突し、同一人物内で整合性が取れない、精神破たんをきたし、思考が止まった。思考停止の瞬間から、その思想は、衰退への道をたどるのみ。そこで、うーん、と唸って答えなしの人たちや、欧米はアジアに口出し無用といいつつ、日本が欧米と同じことをする分には文句を言わない人たち、もっと開き直って蒋介石は英米の傀儡なので討つと言い出す人たちが登場する。

こうした和魂洋才の結果精神破たんを図で説明すると、図3のようになる。

<了>

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