「歴史問題」を考える

Yoshikawa_eyecatch

過去三回にわたる辛亥革命100年シリーズの番外編として、現代に時々噴出する「歴史問題」。一体いつまでやれば気が済むのか?親日派といわれるシンガポール前首相リー・クアンユーはいう。「日本人がなぜ過ちを認め、それを謝罪し、前進することに消極的なのか私には理解できない。(中略)日本人はまずこの謝罪問題に決着をつけるべきである。そのためにも、より大きな信頼と信用が必要とされている。」友人の韓国人も、「日本は早く歴史問題を解決してアジアでリーダーシップを発揮してくれ」という。
■何が問題なのか?

Yoshikawa「歴史問題」と一括りにされてはいるが、総論(過去の侵略に対する日本政府からのお詫び)から、数年前米議会で決議が通って一時騒がれた従軍慰安婦問題、中国と時々もめる靖国神社参拝問題等各論がたくさんある。なので、そのうち総論と最近トピックになった各論をいくつか見てみたい。

 

日本側の問題

1)日本側の謝罪に一貫性がない:総論

日本の歴代首相は、戦中の過去の侵略に関し過去約20回謝罪している。それでも、何か事件があるたびに中国や韓国の態度が硬化するので、日本側は謝罪疲れしているという。で、韓国人、中国人の専門家に聞いてみると、そういう謝罪があると、すぐに日本の国会議員が中国や韓国にやってきて、あの謝罪は文字通りに受け取るな、と言って回る。なので、日本側には謝罪に関しては一貫性を持ってくれ、という。日本にいる限り、有名でもない議員のアジア外遊は通常報道されないので知らないことが多いが、中国や韓国では遥かにメディアの扱いは大きいので、中国人や韓国人は知っている、という現象が起きる。また、森首相(当時)の「神の国」発言を始め大臣の「失言」問題もアジアの不信に拍車をかける。

 

2)日本側が謝罪をしていない:一部の各論(欧米元捕虜の強制労働、従軍慰安婦問題等)

欧米元捕虜の強制労働(捕虜には過度な労働させないというハーグ国際条約があるが、日本は戦争当時加盟していなかったことも議論が長引く要因になっている)については、事実否認している。ただ、民主党政権になって、元捕虜への謝罪をする等改善がみられている。

従軍慰安婦については、リクルーティングは旧日本軍が関与していないとして政府による謝罪、賠償を拒否している(民間有志による謝罪、賠償は行われている)。だが、リクルーターが例え民間であっても、堅気な仕事ではまずないわけで、元兵隊崩れが軍服を着ている等してやっていれば、通常軍の強制連行だか民間アウトソーシングだか当人に分かるはずもない。小手先の屁理屈はどうあれ、倫理的責任、羞恥心を克服して公にした被害者たちの勇気をどう考慮するかという辺りが、争点だ。

 

3)A級戦犯の認識ギャップ:一部の各論(首相、閣僚の靖国神社参拝問題)

靖国神社問題については色々な面(政教分離等)で問題を抱えているのだが、対外的な話に限っていえば、A級戦犯が祭られている靖国神社に参拝することが、問題視される。日本人にはあまりイメージはないだろうけど、海外では、A級戦犯は人類の敵くらいに思われている、といえば分かりやすいだろうか。もちろん、個々のA級戦犯がA級に値するのかどうか、日本国内では議論は分かれよう。だが、日本がサンフランシスコ平和条約を結ぶ際に、東京裁判の結果を受け入れるということが条件だった。つまり、悪い奴(A級戦犯)を処罰し、ファシズムが再発しないようにアメリカの指導の下その他諸々軌道修正したので、日本は新しく再スタートしますから、どうぞ皆さん仲間に入れてやってください、と頼んで他国がOKしたから、平和条約が結ばれた。だから、例え日本人的にどんなに違和感があろうとも、A級戦犯は、イメージ的にはヒットラーやムッソリーニに匹敵する。

ゆえに、人類の敵に手を合わせるなど、正気の沙汰ではない→さては日本の軍国主義復活か?とか、日本は反省が足りないのではないか?といった疑念を生む。一部の海外識者は、靖国神社参拝=軍国主義崇拝ではないという弁護をするが、あまり浸透していない。

日本の首相としては、そんな海外が思うような野心はもちろんなく、むしろ自民党時代なら支持基盤の一つである遺族会(旧日本軍軍人の遺族の会)に配慮したり、A級戦犯に限らずお国のために死んでいった英霊たちに表敬したい(或いは、しているところをアピールしたい)、中国や韓国のガイアツに負けないところをアピールしたい、といったニーズがある。なので、A級戦犯だけどこか別のところに分祀すれば?という意見もあるが、靖国神社が分祀不能と言う等、問題解決には時間や労力がかかりそうなので、国内ニーズと海外の反応を見ながらその時々にあわせて、1)堂々と行く(小泉首相)、2)「私人」として行く(三木首相)、3)行ったか行かないか言わない(安倍首相)、4)行かないと言う(野田首相)、という風に時の首相はお茶を濁す。

 

アジア側の問題

1)国内政治でスケープゴートに

国内問題でうまくいかないとき、国内をまとめようとしたいとき、時々外国がスケープゴートにされる。そして、中国や韓国にとって格好な餌食となる外国が日本。特に中国の場合、人々は直接政府批判をできないので、「日本」をかぶせてガス抜きをすることもある。ちなみに、台湾でいわれる、「日本の統治時代はよかったなァ」発言もこの変形で、蒋介石・経国時代政権批判ができなかったので、暗に「今の政権はひどいものだ」といいたいときに多用された(なので日本人は素直に受け取ってはいけない)。また1980年代日本の一部メディアも、中曽根(当時)政権批判の言葉を引き出すために、憂慮するというに決まっている中国政府に、わざわざ「首相の靖国参拝をどう思いますか?」等という質問をし、期待通りのコメントをもらって政府批判した。いつしか中国政府もこの「歴史問題」が日本から何らかの譲歩を引き出せることを学習し、これを利用して反日「官制」デモ等を作り出すこともある。

 

2)学校教育で日本が悪者に

以前「平和はつくるもの」コラムで日本の歴史教育の問題点について紹介したが、中国や韓国の歴史教科書が正確か?というと、どの国でもそうだろうけれど、それぞれのプライドと政権の都合で脚色されている部分はある。そのため、前提となる知識が食い違って、話がややこしくなる。さらに、中国の場合、周恩来首相時代は一部の日本の軍国主義者が悪かったのであり、日本の一般市民も軍国主義の犠牲者だった、という見解をしていたが、江沢民政権時代に愛国主義教育を推進し、その中に反日教育も含まれていたことも、近年の中国人の日本像にダメージを与えている。

<次ページへ続く>

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