「歴史問題」を考える

Yoshikawa_eyecatch

日本・アジア共通の問題:世代交代による原体験の喪失

当時の原体験をした世代がいなくなり、本等を通じてしか当時の話を学習するすべがほとんどなくなった。となると、そうはいっても、近所に住んでいたヤマダさんはいい人だったとか、ナカムラ先生は厳しかったけど、自分にはもっと厳しかったとか、文章に残りにくいけれど、「生身」の日本像、日本人像というものが消えていく。そして、ただただ、日本は自国に侵略した悪者として純化されて記憶されるようになる。そして、例えば国内反発を心配せずに、なぜ蒋介石が「以徳報怨」演説をできたのか、いくら蒋介石の指導の下とはいえ、中国大陸からの日本人の引き上げがなぜ大きな混乱なくできたのか、等といったことの説明がつかなくなくなってしまう。そして何よりも、お互いにどこで止める、収めるべきか、感覚が分からなくなってしまう。

日本側も同様に歴史上の出来事として風化し、当時のことを詳しく知らないし、知ろうともしない人がほとんどとなる。そしてアジアはいつまで歴史問題なんて古臭いものを言い続けているのか?日本はもう何十年と戦争をしていない平和な国だよ、となる。

 

■過去とともに歩む

 

では、どうしたらこのギャップを埋められるのか?日本が努力するよりほかない。

日本以外のアジア諸国が最も恐れていることは日本の侵略・略奪を意図した再軍備であり、彼らは日本が再びアジア諸国を蹂躙しないという確かな保証を求めている。そのうえで、台頭する中国とのバランスをとって、平和な環境を作ることを期待されている。戦後から今日に至るまでその保証は日米同盟、いわゆる「ビンの蓋」理論という形を取っている。しかし、本来は日本が独自で保証すべきものだ。

リー・クアンユー前首相のいう、「日本人が過ちを認め、それを謝罪して前進」して欲しいというアジアの要望への日本の一回答として、日中戦争、太平洋戦争から日本が何を学んだか、少数の学者の意見ではなくコンセンサスを作り(そして、このコンセンサスへの疑問を公言するような政治家には落選、資金援助なしという制裁を社会が加えるということも含む。そうすれば、首相の謝罪を否定して回ったり、「失言」をする国会議員は消えるだろう)、それを踏まえた上でどのように日本がアジアに貢献するかをアジアに向けて発信してはどうか。

つまり、その間日本がどこをどう間違えて過ってしまったのか、同じ過ち、特に帝国主義的、軍事的野望の台頭を繰り返さないためにどのような政治的、社会的なチェック機能を設けたか(あるいは設ける予定か)、そしてその旨を後世に伝えるべく教育を施すと伝える。戦後直後の幣原内閣では、戦争責任を含め、原因追求・再発防止のための委員会を設けようとしたが、短命だったこともあり、その後どさくさにまぎれて立ち消えとなってしまった。失敗した直後に反省することが最も効果的なので、機会を逸したことは返す返すも残念であるが、今からでもやる方がやらないよりははるかにマシ。日本が真摯に一貫性を持って説明し、アジアが誠実さを感じれば、日本への不信軽減に貢献するだろう。

Yoshikawa それにもまして、日本人自身が自信を持てるのではないだろうか?日中戦争、太平洋戦争の反省がしっかり身についていないから、とりあえず戦争や安全保障と名のつくもの、平和を脅かしそうなもの、戦争の反省を促すもの一切合財パンドラの箱にしまいこんで、「戦後日本は平和主義・戦争禁止。戦争関連のパンドラの箱は開けてはいけません」と封印して思考停止。安保なんてまっとうな人は考える代物ではありません、と広める。(事実、最近でこそようやく安全保障という分野に少しだけ光が当たり始めたけれど、私が安保の勉強に渡米した2003年頃など、なぜ安保?と言われたものです。)それでも、歴史問題が亡霊のように時折パンドラの箱から漏れてくれば、ケシカラン。北朝鮮のミサイル実験、核実験のように日本の安全が問題になると、ビビってアメリカ、ナントカして~!それが今までの日本ではなかろうか? ちゃんとパンドラの箱を開けて中身に向き合う勇気・姿勢が大事だ。

そのうえで、国連の平和維持活動(PKO)もいいけれど、日本がアジアに貢献すること、特に台頭中の中国をアジアはどのように包容していくのか、をちゃんと議論していく。そのプロセスの中には、従来の概念を越えた自衛隊の海外派遣が視野に入るかもしれない。それでも以前の軍国主義に戻らない反省・宣誓と対外的な理解がそろっていれば、本来はもっと柔軟に戦略的に考え、行動できるはずなのである。

一応、悲劇を繰り返さないためのシステムは、平和憲法、シビリアン・コントロール(軍の最高司令官は非軍人(文民)がなる等軍は文官が管理し、政治が軍事に優先すること)、現役武官大臣制の廃止(戦前は現役武官を入閣させないと、組閣ができず、軍部の言いなりになってしまったことへの反省)・総理に国務大臣の任免権付与(戦前は総理が大臣を辞めさせられなかったから、軍部大臣の反対で閣内不一致で倒閣させられたことへの反省)、平和教育という形で日本にインストールされている。

だが、果たしてまともに、或いは現代に即して機能しているだろうか?まともに読めば陸海軍の存在を認めない憲法と、それを現実に合わせるため無理やり正反対なことを容認してしまう「拡大解釈」。首相になった瞬間、約50年間社会党の党是であった自衛隊違憲という立場をあっさり捨てた村山首相。菅首相の、シビリアン・コントロールの理解が疑問視されるような発言。平和を強調したはいいが、基本的に思考停止で国の安全を考える上での基盤にならない平和教育・・・

日本人による反省の跡がかくもあいまいで、戦争から学んだ唯一のものと思われる平和主義がこんなにもろいものであるとすれば、アジア諸国が日本の「反省とおわび」に誠実さを感じ取れないと思う方がもっともなのではなかろうか?

 

<了>

1 2

Facebookページに参加しませんか!

『開国ジャパン』は海外経験豊富な開国アンバサダーによる情報発信メディアです。
海外での生活やビジネスなどに興味のある方のために

各国に駐在しているアンバサダーからの現地事情
英語などの語学や海外での生活情報
海外ビジネスの情報

など、幅広く最新の情報を発信しています。


最新記事のチェックにはTwitterが便利です。

更新情報を必ずツイートしています。どうぞ、フォローしてください。


開国アンバサダー

現在89のアンバサダーが活躍中!

開国アンバサダーは、「グローバル社会で活躍する新しい日本人のロールモデル」 です。開国ジャパンでは彼らの熱い想いを発信しています。

開国アンバサダーとは 開国アンバサダー一覧 開国アンバサダー推薦フォーム

チーム開国ジャパン

ピックアップ

最新ニュース

  • U18W杯開幕、清宮オコエらで初V期待

    夏の甲子園を沸かせた高校生強打者2人が、28日開幕した第27回U−18(18歳以下)ワールドカップ(W杯)で日本代表として世界一に挑む。 ...

  • 「ガトリンの復讐」ボルト激突も無事

    【AFP=時事】(写真追加)第15回世界陸上北京大会(15th IAAF World Championships in Athletics Beijing)の男...

  • イチのファンサービスに観客感涙

    「マーリンズ1-2パイレーツ」(27日、マイアミ) マーリンズのイチロー外野手(41)は「2番・右翼」で出場し、4打数無安打。17打席連続無安打(3四球、1犠打...

  • 川栄李奈、初舞台で「おバカ」返上へ

    今月4日にAKB48を卒業した女優の川栄李奈が26日、都内で行われた舞台『AZUMI 幕末編』の制作発表・公開稽古に、共演者とともに出席した。 ...

  • 世界の若手億万長者30名 日本人は?

    フォーブスは世界で最も裕福な40歳未満の 44人のリストを公開した。ここではその中から30名をピックアップ。年齢の若い順に掲載する。 エヴァン・シュピーゲル(ス...

他のニュースも見る