日本は日中戦争、太平洋戦争から何を学んだのだろう?

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ここのところ歴史関係のコラムを書き続けているが、その締めくくりに、考えてみたい。日本は日中戦争、太平洋戦争から何を学んだのだろう?なぜ、あれだけ大空襲や原発で逃げ惑った人々の映画を学校で見せておきながら、戦争はいけないという安直な結論で終わるのだろう?そもそも、起こさなきゃいけない戦争だったのか?ここから本当は問うべきだ。

このテーマは、既に先人たちがいろいろ本を残しているところだが、そうした視点も盛り込みつつ、特に大事なものをかいつまんでいく。

■ 日中戦争の場合

Yoshikawa現地で多少のいざこざがあったにしろ、関東軍の動きを上層部は徹底して止めるべきだった。全軍停止の詔勅を出せば止められたはずだ。陸軍はこれだけには頭が上がらなかったのだから。それを宮内大臣辺りが突き放すから、事態はどんどん収拾がつかなくなっていく。陸軍は昭和天皇の弟を参謀に据えていたのだから、宮内大臣が何を言おうと、断固として詔勅をくれといえばよかったのに。

越えてはいけない一線を踏み越える部下がいれば、速やかに断固たる態度で止め、事態を収拾すべきである。

上層部がおろおろしている間に、戦略なき中国大陸の進出がどんどん進み、現地の軍の勝手な行動をなし崩し的に容認せざるを得なくなる。こうした勝手な行動をした中間管理職クラスは、最後まで日本政府から責任を取らされていない。一部現地の裁判、連合軍等で制裁を受けているが、決して全部とはいえない。東京裁判でA級戦犯たちは、そうしたミドルクラスをまともに管理できなかった、監督不行き届きで刑に服している人たちが多い。そして、ミドルクラスまでは名前が知られていないがために、しれっと責任追及を逃れ、今日に至っている。

責任の追究、明確化は必要。そして、規則違反したものは、必ず罰せられるという、信賞必罰を行うこと。そして、どうしたら、ちゃんと監督できるのか、考えるべきだろう。

戦争に限らず、何か(経営計画も然り)を計画するということは、最初から最後の姿がどうなるかを想定の上、どういう可能性があるのか、熟慮した上で行うべし。戦争なら、戦争を始める前に、どういうときに戦争を終結するか、(どういう状況になったら、戦争をやめるか等も含む)、いわゆる出口戦略を考えた上で行動すべきである。このときの上層部の計画は最低である。イラク戦争やアフガン戦争で泥沼になっている米軍も同罪である。

そうして、何となく戦勝報告しか中国大陸から伝わってこないため、陸軍、海軍両軍部が余計いきり立って、現代でいえば軍事計画書を作り上げるが、陸軍はソ連を仮想敵国、海軍は英米を仮想敵国とした計画を練る。そんな資金は日本にはないという現実が厳然としてあるのに、そしてまともな頭をしていればそのくらい分かるだろうに、組織の理論、建前(陸軍と海軍のライバル意識が強すぎ)の前に道理は引っ込み、非現実的なものが出来上がった。

全体を見渡せる人が誰もいなかった証拠だが、船頭なき船は沈む。全体を見渡せる人がいない以上、全体的な戦略を持つことは不可能に近く、戦略なき戦いなどしても損害を被るだけのこと。目標、戦略があいまいなまま、戦争などするものではない。戦争は遊びじゃありません。

どんなに面白くなかろうと、都合が悪かろうと、現実は受け入れるべし。何度でもいうが、戦争は遊びじゃありません。

せめて、国のお財布を握る国会が軍資金などくれてやらない、と突っぱねればよかったのに、これまた議員たちは腐敗。財閥は軍部が武器弾薬、飛行機、戦車が十二分に作れるよう、日本では未だ未熟だった重工業への資金提供と引き換えに軍部の行動を容認するという、悪魔の取引をし、国民は国民で昭和恐慌後、戦争による好景気を望み(それまで負けたことがないので、好景気しか知らなかったため)、ドイツの快進撃にあてられ、「バスに乗り遅れるな」と、行き先も確認せずに乗ってしまった。日本が太平洋戦争にいたる頃には既に、ドイツの快進撃は止まり、防戦モードに変わっていた、という現実をまたも見誤った。

白洲次郎が、戦争当時大人だった人たちは皆戦争責任があるといっていた通りなのだが、またもや生き延びた人たちはこうした戦争を容認した責任に頬かむりした。これだけの犠牲を出しておきながら、それはないだろう。正しく責任の所在を知るべし。みんなで、見なかったことにしたら、また繰り返す。なあなあにしていいときと、流してはいけないときがある。

軍部は、日中戦争を日本国民にアピールしようと、当時の文化人を中国大陸の戦線に送り、視察させる。が、著名な文化人たちは、軍部礼さんするどころか、日本の紹介といえば、日本の四季だの、と低レベルなことしか紹介も出来ず、役立たずといった。中国の田舎にヨーロッパ人が宣教師として赴任し、孤児院や病院、学校などを作って社会に奉仕している姿に感銘を受け、今まで西洋は中国をいじめ、日本が中国を守るといっていた中国専門家は何を見ていたのだ?という鋭い突っ込みが入った。

こうした政府に媚びない文化人としてのプライドに敬意を表すると共に、こうした矜持をもつ文化人が少なく感じられるのは悲しい。また、似非専門家にはご注意あれ。なお、日本の紹介というのは、現在に至ってもあまり進歩していないので、手当てが必要。

 

■ 太平洋戦争の場合

アメリカ側が第二次世界大戦に参戦したくてその口実がほしくて日本をたきつけたというのが定説。ハルノートなどアメリカ側が挑発的な文書をよこした。これに対し、素直に挑発に乗った。

Yoshikawa 当時、日本の貿易は対米貿易にかなりの比重で頼っていた。1936年に大阪大の教授が日本の貿易形態を3連環として説明している。即ち、1)日本が生糸をアメリカに輸出し、アメリカから綿花を輸入し、日本の軽工業が綿製品にして東南アジア等欧米の植民地に売り、2)その代金で大英帝国から重工業に必要な機械類を、アメリカから石油を輸入し、3)まだ稚拙な重工業製品を満州など日本の勢力圏内に販売していた。

日本だけの事情だけでなく、世界の潮流を見れば、アメリカがなぜ挑発しているのか、どうすれば挑発に乗らないで済むのか、などもっともっと真剣に検討すべき。さらに、日本の持てる資産(人的にも、資源的にも)をフル活用する体制の検討、実施が必要だ。

→相手の意図が全く分かってなくてパールハーバーに突入した。売られたけんかは、全部買う必要はない。中国大陸から退去すればよかった話である。戦うべきときと相手をわきまえよ。こうした経済状況を考えれば、アメリカと戦っては経済が破綻することは明白なのだから。

→ハルノートに挑発されたというのなら、ハルノートを公開すべきだった。そうすれば、アメリカ内部は、ハル国務長官を非難する人たちが生まれ、一丸になれなかったはずだ。それを、パールハーバーで一致団結させてしまった。アメリカという国がどう反応するか、全く理解していなかった、何よりの証拠である。

また、経済力が全然違った。日本の重工業が未発達段階では、戦車や飛行機、弾薬等の製造能力の差は歴然としていた(当時日本のGDPはイタリアの1/7といわれていた)。

どんなに精神論を語ろうと、武器弾薬がなければ、戦いようがない。計画段階で充分過ぎるくらいの武器弾薬を与え、勝算が充分にある状態にしたうえで、精神論は語るものである。精神論は、所詮怠け心を引き締める程度の意味でしかないことを、計画する上層部は理解すべき。

アメリカが対日石油輸出を禁止したことが、日本の堪忍袋の緒をきった。

アメリカは実戦に訴えずとも、経済制裁等の形で日本を動かすだけの国力があったということである。対して、日本はアメリカを動かすだけの外交力、国力も何もなかったのである。ここに外交力、国力の差が歴然としてある。三国干渉のときのように、うらみは他日、と思って堪え、満州国承認と三国同盟脱退、中国大陸からの日本軍撤退を交換条件に交渉を模索し続ければよかったのである。

<次ページへ続く>

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