世界の平和は誰が作る?

Yoshikawa_eyecatch

「世界の平和は誰が作る?」と聞かれたら、みなさんは何と答えられるだろう?国連?アメリカ?みんな?

この問いにきれいな答えはない。時と場合に応じて対処する国、組織が違うから。つまり、図1の質問チャートに沿って答えが違う。

 

Yoshikawa

 

通常、紛争のある地域まで自国軍を派遣し、どちらかの側につくことで形勢を逆転できる国は、アメリカのような軍事大国、次いで地域大国(力不足の場合もあるが)くらいしかない。(当事者が大国であれば、できるだけ他の介入を避けようとする)そういう能力のある国の強い順に派兵するだけの関心があるか次第、そしてその国がどちらの側につくか次第で、誰が主導権を握るかが決まる。これが、図1の最大のポイントである。

だからこそ、以前紹介したボスニア紛争のときでも、ボスニア国外相は、自国に有利になるように形勢を逆転しうる、最大の軍事大国アメリカに渡り、陳情に行った。しかし、当初アメリカはまったく関心なし。そのため、PR会社を雇って、アメリカの関心を高め、世界世論を動かす画策をした。

Yoshikawa ちなみに、どういう理由で大国が関心を持つか?というと、そもそも紛争の仕掛け人であったり、紛争当事国に天然資源等魅力があるので、解決した暁には相応の分け前を期待できるからだったり、大事な同盟国の近隣で問題発生しているからだったり、自国企業の権益が脅かされているからだったり、自国メディアが大きく取り上げ、政権として動かないと格好がつかない(政敵に非難の集中豪雨にあう)からだったり、といろいろバリエーションはある。

大国が関心を持ち、世界世論に大義名分を訴えるものがある場合、また利害関係を共有する国と費用のシェアを期待できる場合、国連にお墨付きをもらって多国籍軍が結成される。例えば、イラクがクウェートに侵攻した湾岸戦争の場合、明らかに領土保全の大原則を破る事件だったので、大義名分は十分。アメリカは、高らかに多国籍軍を募って、イラク軍を撃破した。(図1 A)

上記以外で大国が関心をもつ場合、迅速に国連にお墨付きをもらって(邪な占領欲をもって軍を派遣するわけではないことを世界が認めたという形にする)大国は介入する。例えば、以前紹介したルワンダの場合、フランスが当初から関心を持っていたので、まずフランスが国連に了承を取って政府軍に肩入れする形で介入した。また、東チモールの場合、オーストラリアが東チモールに眠る資源を目当てにこれまた国連PKF(平和維持軍)の形で主導的に介入し、独立が実現した。(図1 B)

一方、残念ながら大国が関心を持たない場合、解決に乗り出したくない場合、地域大国、当事国よる解決の模索となる。(図1 C)

例えば、北朝鮮核問題の歴史を見ていくと、BとCの掛け合わせであることが分かる。北朝鮮の核開発疑惑により、危機感を抱いたアメリカが1994年に直接介入する形で、北朝鮮と二国間協議を行い、枠組み合意に達した。この時はBの行動を取っていた。しかしその後枠組み合意が崩壊すると、米朝以外に日本、中国、韓国、ロシアを含めて六カ国協議という形に発展した。とはいえ、事実上無責任と言われない程度に関与しつつ、北朝鮮への説得、交渉を地域大国にして北朝鮮の唯一の同盟国である中国に押し付けているので、Bの気があるCといえよう。

そしてさらに、大国が介入せず、地域大国も介入しないか、してもあまり効果がなくてやめてしまい、当事国等にも武力以外の解決能力がないとなると、ようやく国連に出番が回ってくる。要は誰もやりたくない仕事を国連に押し付けているというのが、正直なところだ。ある国連職員は、「誰も解決しようと思わないものだけ国連にやってくる」という。なので、国連PKOが一番活躍するのが、アフリカ。尤も、最近はアフリカ連合が誕生し、その介入が少しずつ見られるようになった。(図1 D)

ソマリア内戦の例でいくと、当初アメリカが介入していたが、米兵の死傷者が若干名出た段階で撤退したため、後は地域大国、当事国に解決が委ねられたが、泥沼化。(BからCへシフト)そのため、国連が介入しているが、未だ解決を見ていない。(CからDへシフト)

なぜこうも国連の出番はこうなっているのか?それは、大国が太陽とするなら、国連は月のような存在だから。つまり、国連には財源がない。各国から会費を徴収はしているが、ほとんどはその巨大な官僚組織を維持するのに使われ、PKO(平和維持活動)プロジェクトを一つ遂行するにしても、いちいち加盟国にお金を請求しないといけない。なので、お金や軍を大量に提供するアメリカのような大国がその気にならないと、国連は現場で必要な軍もお金も物資も支援してあげられない。大国がスポンサーにつけば、他国もお付き合い等でより多くの軍や資金が供与される。これが、国連の上にアメリカがあると思っている、ワシントンからみた現実である。

Yoshikawa そのため、大国が都合のいいときに国連を使うことはあっても、国連が大国の意に逆らって何かを主体的に行うということは、あり得ない。さらに、国連安全保障常任理事国(通称P5。アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国)には拒否権という絶大な発言権を持っているので、主要な議題においてはまずこの5大国の意向が優先(但し、従来中国は棄権してこの権利をあまり行使してこなかったが、今後この傾向が続くという保証はない)される。P5の意向に沿う形でしか、国連事務総長も任命されないし、国連決議も通らない。そして決議がなければ、国連はPKOを結成さえできない。そんな5大国の意向に背かない、無関心である範囲において、初めて国連の出番がやってくる。

ちなみに、カナダがPKOに熱心だったり、2011年9月に野田首相は、南スーダンへのPKOを検討するという話がでる等、一見利害を度外視したPKO協力を国がすることがある。これは、上述したような下心でなければ、PKOに参加することにより、国のイメージアップのため、軍事大国ではない国がそのプレゼンスを示すための活路を見出したから、等が考えられる。

なお、あまり人道的という言葉を、国際政治ではあまり素直に信じない方がいい。みなさんの血税は、かわいそうだからというだけの理由で外国へ通常支出されない。そんな余裕があるならば、自国の人々の生活向上のために使われるべきであり、それをあえて外国に回すからには、被供与国の政府や人々の歓心を買うため、自国製品の輸出促進のため等、それなりの思惑、下心があってのことである。政府は国民に説明責任を負う以上、ギブ・アンド・テイクの世界であることを見誤ってはいけない。

<了>

 


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