世界観・歴史観を養おう その3
東アジアに鎖国政策により知らず知らずのうちにナショナリズムを育んでいった国、日本はナショナリズムを理解する土壌があったが故に、この商業ナショナリズムに他の国よりも早く対抗できる体制を作ることが出来た。
そして、急いで「近代化」するべく、商業ナショナリズムを真似た。しかも産業革命の本家イギリスよりに早急においつくべく、タイトにタッグを組んだ。政府が産業育成に介入するようになり、特に1930年代の戦争想定の統制経済は、戦後の日本株式会社の原型になっている。
日本にはイギリスと対抗しようなどといった大それたことを考えてはいなかったが、同じようにタイトにタッグを組んで新興国となった国があった。ドイツとロシアである。さらに、鉄道という陸路の大量物資輸送手段の発明が、大陸にあるドイツやロシアに利点をもたらした。つまり、イギリス海軍がはるかアフリカを回ってアジアに行くより、鉄道をユーラシア大陸の東や南に伸ばせば、大量物資輸送が速い。大量物資輸送が速いということは、軍隊を速く派遣できるということであるから、イギリスを刺激した。そこで以前紹介した地政学を産んだ。
ロシアとは、グレートゲームという、中央アジアからチベットに至るまでロシア=インドへいたる道につながる土地を軒並み英露のいずれかの勢力下におく戦いが展開された。ドイツとは、新興国は強くなる前に潰してしまえと、二度にわたる世界大戦に発展。勝ったものの、イギリスのアメリカへの覇権禅譲が確立していった。
一方、この商業ナショナリズムが生み出した巨大資本は、産業発展というダイナミズムを引き起こすと同時に、労働者や植民地への搾取の歯止めがかからないというデメリットがあった。
これに対し、歯止めをかけようという動きが生まれた。
一つは、共産主義。これは、資本家を否定するという画期的なコンセプトだったが、実際にやってみたら国家が独占資本家になっただけ。冷戦構造の中、アメリカと覇権を二分したものの、結局ソ連は、アメリカの意図的な軍事費増大(スターウォーズ計画)に合わせて軍事費を上げていったが、いかんせん富の生み出す量が東西陣営では格段に違ったので、十年足らずで破綻。
もう一つは、より過激的ではないアプローチ、即ち児童労働の制限、最低賃金の法律化など労使関係において弱者への配慮が生まれるようになっていった。日本の場合、統制経済の青図を描く上で、ストライキが頻発するような労使関係はやはり好ましくなかった。そこで、労使協調の方向に持っていくべくある程度の労働者の権利を認める、日本株式会社の原型が1930年代に当時日本屈指のロシア・ソ連通、宮崎正義により構想された。
一方、アメリカも冷戦状況から脱却して単独覇権を握ったものの、20年程度で息切れしている。
アメリカ単独覇権の先は?
こうなると、ある程度多極化世界を容認しつつ、19世紀のイギリスの如くパワーバランサーになるのが、安全策のように考えられる。イメージ的には、ヨーロッパ大陸諸国の強国間、強国と弱小国とのパワーバランスを外交ツール、軍事力、以前紹介した分割統治の知恵等を駆使して保つことにより、イギリスに対抗するような強国、強国連合を作らせなかった状態(世界から見れば、多極化状態)が最も近いだろう。覇権時代よりも少ない資源で他国よりも優位に立つことができ、アメリカにとり安全で、かつ世界ナンバーワンとしての体面を長く保つことができるから。
既に前章の多極化世界の項で詳述したので、ここでは要点だけに留めるが、アメリカは地域大国(ヨーロッパ、日本、中国、インド、トルコ、サウジアラビア、イラン、ロシア等)との間に覇権を分散させつつ、それらが連合を組ませないように疑心暗鬼な、緊張関係を保たせ、アメリカに敵対させる余裕を失わせることを画策しているのではないだろうか?日中間を始め、こうした近隣の地域大国間には長い歴史の中で必ず何かしらの確執はあるので、それほど疑心暗鬼な状況を作り上げるのは、あながち不可能ではない。2011年からの中東情勢の変動の裏には、上記のアメリカの意図が透けて見えなくもない。(詳細は、拙稿「自国有利の「多極化」を狙う米国 宗教・民族対立は好都合」(週刊エコノミスト、2011年8月30日号)、「イラク撤退は財政難だけではない 米国が見据える中東の2つの“地雷”」(週刊エコノミスト、2011年12月18日号)を参照されたい。)このように、アメリカ側の思惑をどのように実行し、さらにそれに対し世界はどう反応していくか、注目していく必要はあろう。
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