インドを起点に「グローバル」を語ると、どうなる?

開国ジャパンプロジェクトのコラムを書かせてもらうことになりました、トライアンツの野村といいます。開国ジャパンプロジェクトで重きをおいている「グローバル」という視点を中心に、私の経験に基づいてコラムを書いていきたく思います。
肩ひじ張らずに気楽に読める、でも、ちょっと考えさせられるコラムを目指そうかなとおもっています。今後ともよろしくお願いします。
では、「グローバル」を語るにあたり、私が最近慣れ親しんでいるインドから話を始めましょう。
※写真は、ノーヘルでバイクに乗るインド人たち。渋滞の激しいインドでは、バイクが一番早い移動手段である場合が多い。
■ 世界最大の。。。
私がいままで会ったインド人で、インドはマンゴーが旨い、と熱く語る人がいました。また、カレーが辛い、デザートが甘い、とインドを紹介する人もいました。たしかに、本場インドのデザートは日本のインドレストランのようにジャパナイズされていないので、真剣に甘いです。。。
そんな思い出も含めて、今になって思い返すに、多くのインド人のビジネスマンが口をそろえて言うことは、「インドは世界最大の民主国家だ」ということです。
客観的にみて、世界最大の民主国家であることは間違いないです。選挙によって議員が選出され、政権交代がありうるわけですから。あれだけの人口をかかえて、選挙を実施して国家を運営していることは、インド人にとって誇りなのでしょう。
■ 世界最大の民主国家の弊害
一方で、民主国家であることによる弊害と思えることもあります。たとえば、中央政府と州政府とで政権与党が異なるなどの理由で意見が相違すること。
法制度としては、中央政府のほうが、州政府より力が強いのですが、インドは州ごとに国が違うと考えたほうがよいと思います。ある人がいっていましたが、州知事は首相(国家元首)と思ったほうがいい、とのこと。実態としては、これくらいに考えておいたほうが、インドの州政府の位置づけを正しく認識できるのかもしれません。
このような状況なので、中央政府と州政府とで意見が相違すると、政治的な混乱が生まれることが多いです。
また、民主国家ゆえ、個人の権利が尊重されます。これは一面いいことですが、社会全体からみると、うーん、と思うこともあります。たとえば、土地の買収が進まないので道路建設がすすまない。そうすると、計画どおり道路建設が進まないので、工事箇所で激しい渋滞が発生します。
バンガロールにて車で移動している間に、同乗した同僚が「土地の買収がすすまないから渋滞が解消しない。でも、個人の権利が保護されていることが共産主義との違いだ。」と、中国との違いを強調していましたが、これだけ激しい渋滞が毎日続くのであれば、中国と比べてどっちがいいの?というと、どうでしょうか。。。
それ以外にもインドに関連するおもしろいネタはたくさんあります。まあ、他のネタは今後のコラムで紹介するとして、今回のコラムでいいたいことは、インドは世界最大の民主国家で、良い面と悪い面がありますね、というところです。
■ インド人にまつわる誤解
こんな世界最大の民主国家であるインドについて、最近、特にマスコミで取り上げられることが多くなったような気がします。
マスコミとかで語られることはいろいろありますが、そのうち、2つの話題の真偽について、私の経験に基づいて意見をさせてください。
■ 誤解その1「掛け算九九が2ケタまでできる!?」
インド人は掛け算九九が2ケタまでできる、だから、数学が得意でコンピュータープログラム開発が得意だ、とまことしやかに語っていたテレビ番組を見た記憶があります。そういう人が少なからずいることは確かなのでしょう。ただ、私の知る限りでは、インド人で掛け算九九の2ケタができる人には会ったことがありません。
一方で、私は小学校のころにそろばんを習っていて、そろばん4級です(でした)。履歴書の資格欄に記載できないほど、しょぼくれた級位です。でも、いままでインド人と会話していて、インド人に暗算で負けたことがないです。
たとえば、インド人との会議の最中にホワイトボードに数字が10個くらいならんでいたので、その場で暗算で全部合計して「合計はこれです」と私が言ったら、「おー、すげー」とほめられました。その場に居合わせたインド人は誰一人として、暗算で足し算ができませんでした。
あと、日本には公文という優れた教育システムがあって、公文で暗算を鍛えた人には、私のレベルのそろばん技能では太刀打ちできないことがあります。
私はインド人の教育を詳しくしりません。インドの教育も優れているのでしょう。ただ、日本のそろばんや公文だって、決してインドの教育に負けない優れた教育システム、というのが私の感覚です。「インド人=数学できる=頭いい。だから日本人はかなわない。」という考え方は、必ずしも成り立たないとおもいます。
そもそも、IT業界のトップを走るアメリカ人は、掛け算九九を覚えるという考え方すらないです。彼らにとっては、何をするにも計算機は必須です。
そんな彼らでも、世界のIT業界をリードできるわけです。インド人で掛け算九九が2ケタできる人が少なからずいるという事実をもって、過剰に反応する必要はないということです。
■ 誤解その2「IIT卒業生は、すごい!?」
これもまたマスコミで言われていることですが、インド工科大学IIT(Indian Institutes of Technology)は、倍率がすごく、学生も猛烈に勉強している。日本の大学とは大違いだ、とのこと。これも、多くの真実が含まれているでしょう。私自身の過去を振り返っても、日本の大学生は大学でもっと勉強すべき、と思います。
一方で、私はIIT出身者と仕事をしたことがあります。たしかに、職場で「あいつはIIT出身なんだって」と話題となるので、みんなが一目おいていました。
ただ、現実は、売上の数字があげられないためか、自分の組織を維持管理しきれなかったからか、結局、退職しました。
私はIITに行ったことすらないから分かりませんが、IITでは営業とか組織のモチベーション維持とかは指導しないのでしょう。私の感覚に基づく意見ですが、MBAと似たようなものでしょう。
MBAでも営業は指導しませんね。営業みたいな仕事は誰かがやってくれるものという前提で、管理職・経営者としてどうすべきか、というカリキュラムが組まれているわけです。でも、実際に経営で最初に必要なのは、売りをたてること。営業して一定規模の売上があって、初めて経営を合理化できるのです。
極論すれば、1円も売り上げがない会社にMBA卒業生が参画しても、経営合理化なんてできるわけがないことは自明です。まずは、売りを立てないことには、自分の給料すら無いわけですから。。。
ここで何を申し上げたいかというと、IIT卒業者でも(場合によってはMBAホルダーでも)個人として頭がいいことの証明にはある程度なったとしても、結局、営業とか組織管理(リーダーシップ・コミュニケーション)の能力がなければ最終的には活躍できないので、過度に恐れる必要はないということです。
■ 戦う前から負けると思い込むな
ここまで、グダグタとインドのネタを語ってきましたが、上記の話をもとに、「グローバル」というキーワードに立ち返りましょう。
今回のコラムで言いたいことは、「こういう人は、こうだから、こうだ」と思い込みで決めつける考え方は避けるべきということです。
上記の例でいうと、「インド人は、数学ができるから、賢い」とか「IIT出身者は、競争を勝ち抜き勉強しているから、恐ろしく優秀」とかの決めつけかたです。
こういう決めつけ方は、以下のような意味のない諦めの考え方につながりがちです。
「インド人は、数学ができるから、賢い」
→「だから、日本人はインド人に勝てない」
「IIT出身者は、競争を勝ち抜き勉強しているから、恐ろしく優秀」
→「日本人は大学で勉強していないし、IIT出身者には勝てない」
すでにご説明したとおり、インド人の数学への取り組み姿勢も優れていますが、そろばんや公文だって負けていません。IITの入試競争は熾烈で、学生は勉強をすごくしているけど、実社会で100%活躍できるかというと、そうでもないです。
結局、最終的には、個人次第なのです。
あなたがインド人に遭遇しても「嗚呼、数学では勝てない」と思う必要はないです。
あなたがIIT出身者に遭遇しても「嗚呼、この人には何をしても勝てない」と思う必要はないです。
グローバルで勝負しようと思うならば、変な思い込みに基づく決めつけをなくして、最初から負けを決め込むことなく、果敢に勝負していく姿勢が必要です。
戦う前から、思い込みで負けてしまっては、成しうることも成しえません
■ 今回のまとめ
いかがでしたか、今回のコラム。
これからの時代、いまよりもさらに情報過多となり、相矛盾する情報、嘘っぱちの危険情報、恐ろしくお金になる貴重な情報、などが玉石混交で恐ろしいボリュームであなたに降りかかってきます。
グローバルな時代になると、世界中の情報が、さまざまなチャネルから降りそそいでくるわけです。今回のコラムで取り上げたインドの話題は、あなたに降りかかってくる情報の一つの例です。
でも、上記でお伝えしたとおりです。
インド人の計算能力を過度に恐れる必要はありません。
IIT卒業生を崇拝する必要はありません。
冒頭にご紹介した、「インドは世界最大の民主国家」という話しにおいても、民主国家だから良い、と決めつけるのは危険という意味で、悪い面も紹介しました。常に多面的に物事をみることで、正しい認識を持つことの助けになるとおもうわけです。
結論をまとめると以下でしょうか。
・情報過多の現代において、情報を鵜呑みにしない。
・ものごとの一面だけを見ず、多面的にとらえる。
・鵜呑みにした情報に基づく思い込みのために戦う前から負けてはいけない。
では、また、次回のコラムでお会いしましょう。
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