ブラジルから見た、いまどきのサッカーマーケット事情

W杯決勝の舞台となるリオデジャネイロのマラカナンスタジアムにて

次回の2014年ワールドカップを迎えるサッカー大国ブラジル。

そんなブラジルのとある調査会社が先日、
「世界各国のサッカーマーケットの市場規模」を発表していました。

サッカーマーケットの市場規模なんて、みなさん考えた事ありますか?

僕も幼い頃から長年サッカー好きなわけですが、
実はこの「サッカー界」を1つのマーケットとして見た経験がなく、
これは面白いと思わず見入ってしまいました。

 

■世界のサッカーマーケットの市場規模ランキングは?

個人的には現在ブラジル在住ですし、ブラジルという国が大好きですし、
サッカーはブラジルが世界一であると思っていますし、
また、ぜひそうであって欲しい!とも思っています。

ですので、このサッカーマーケットの市場規模においても、
当然世界1位になって欲しい!と思っていたのですが・・・

残念ながら、結果は下記の通りでした。

▼各国のサッカー市場規模ランキング
第1位 イングランド (2,850億円)
第2位 ドイツ (1,900億円)
第3位 スペイン (1,850億円)
第4位 イタリア (1,750億円)
第5位 フランス (1,200億円)
第6位 ブラジル (750億円)
第7位 オランダ (500億円)
第8位 トルコ (450億円)
第9位 ロシア (400億円)
第10位 ポルトガル (250億円)

世界1位はプレミアリーグのイングランドで、ブンデスリーガのドイツが2位。
その後、リーガエスパニョーラのスペインが3位で、
セリエAのイタリアが4位と続きます。

そして肝心のブラジルは、世界第6位で、1位のイングランドの約4分の1の水準。
う〜ん、ヨーロッパ勢に負けてしまうのは、ちょっと悔しいですね。

しかしこうして見てみると、
1〜10位のうちブラジル以外は実質的には全てヨーロッパ勢。
確かに世界中からお金も選手も、ヨーロッパに流れ込んでいる状況ですからね。

納得といえば納得の結果かもしれません。
(繰り返しますが、ブラジルびいきの僕としては悔しい限りです…)

※注釈1:
市場規模の額について「ん?思ったより小さいな」と、思われた方も、
少なからずいるかもしれません。というのも、この調査は、
・テレビ放映権料
・スタジアム収入
・マーケティング
の3項目を調査対象としているそうで、例えば選手の契約金や、
自分がプレーする際のサッカー用品等は、市場に含んでいないそうです。

※注釈2:
調査会社の発表ではブラジルの通貨単位R$(レアル)での記載でしたが、
R$1.00=50円として、日本円に換算して記載しています。

 

■サッカー市場規模を名目GDPで割ってみると?

そんな世界1位を取れなかった悔しさの“言い訳”として、
「そもそも各国の経済に実力差があるから、この結果はしょうがない…」
と、反射的に心の中で思ってしまった僕。

そんな解釈をする事で、
「そうはいってもブラジルは世界1のはずだ!」
という精神的安定を保とうとしました。笑

ただ、マーケターを名乗っている手前、それならそうと実際に数値で確認して、
「やっぱりブラジルはすごい!」と言えるようにしないとな…と、
恐る恐る確認作業を開始しました。

具体的には、「サッカー市場規模」の値を「名目GDP」の値で割り返してみました。
要するに、各国における「GDPに占めるサッカーの割合」の算出ですね。

この指標であれば、各国の経済発展の度合いや、
人口の大小の問題を取っ払った比較が出来るかな、と。
そして、この値であればブラジルが上位に躍り出るかな、と。

というわけで、気になるその算出結果はこちら。

▼上記10カ国のGDPに占めるサッカーの割合
第1位 スペイン (0.166%)
第2位 イングランド (0.158%)
第3位 ポルトガル (0.136%)
第4位 イタリア (0.107%)
第5位 オランダ (0.080%)
第6位 トルコ (0.077%)
第7位 ドイツ (0.072%)
第8位 フランス (0.059%)
第9位 ブラジル (0.044%)
第10位 ロシア (0.034%)

※注釈3:
・名目GDPの値はJETROより引用(2010年)
・「イングランド」のくくりでの数値がなかったため「イギリス」を代用
・US$1=80円にて換算

な、なんと…

今度こそブラジルが上位に来て欲しいと願っていた反面、
そんな期待とは真逆で、ブラジルはこの10カ国中後ろから2番目の9位。

当初、反射的に僕の頭をよぎった、
「経済の実力差があるからこの結果はしょうがない」
という言い訳が、使えない事が判明したわけですね。。。

 

■サッカー上位国の名目GDPランキングは?

なんでだろう?と思って、改めて各国の名目GDPの値を見てみると、
ご覧の通りブラジルは第4位と、上位に位置していましたね。

▼上記10カ国の名目GDP
第1位 ドイツ (US$ 33,095億)
第2位 フランス (US$ 25,598億)
第3位 イギリス (US$ 22,488億)
第4位 ブラジル (US$ 21,439億)
第5位 イタリア (US$ 20,497億)
第6位 ロシア (US$ 14,651億)
第7位 スペイン (US$ 13,924億)
第8位 オランダ (US$ 7,793億)
第9位 トルコ (US$ 7,344億)
第10位 ポルトガル (US$ 2,293億)

※注釈4:
・名目GDPの値はJETROより引用(2010年)

※注釈5:
ちなみに、今回はJETROの2010年のデータを使用しましたが、
直近のイギリスの調査期間CEBRの発表によると、
ブラジルのGDPはイギリスを抜いたそうなので、
この該当10カ国の中では第3位に位置する事になりますね。

いやー、「ブラジルの経済は伸びている!大きい!」と言っておきながらも、
その一方、心のどこかでは「ブラジル経済はヨーロッパ各国に比べてまだ低い」と、
思い込んでしまっていたところがあったのかもしれませんね。

いやはや、お恥ずかしい限りですが…

 

■では、これらの結果をどう解釈するのか?

こうなってくると、もはや傷口に塩。
ますます心の拠り所がなくなってきてしまい、
「ブラジルは世界一のサッカー大国であって欲しい」という僕の願望を、
どう整理つけたら良いものか。

しばし考え込んだあげく、最終的にはこんな結論で自分自身を納得させました。

「ブラジルサッカー界は経済界同様に“これから伸びてくる”市場である」

そうですよ、ね。
うん、そうだそうだ。きっとそうに違いない。

ほら、少し前の話ですが、ロナウド、ロナウジーニョ、ロベカルといった、
僕らの世代にとってのスター選手がこぞってヨーロッパから戻ってきましたし、
今を輝くネイマールだってヨーロッパに行かずにブラジルでプレーしてますし。

 

■ブラジルサッカー市場の成長はまだ始まったばかりの成長市場である

ふ〜、これで一安心、と精神的安定を取り戻してホッと落ち着いていたところ、
ブラジル調査会社の発表記事に、こんな事が書かれていた事を思い出しました。
——————————————————————————————————————
欧州債務危機の影響で、ヨーロッパの各クラブは経営を維持するので大変だが、
ブラジルの各クラブは、経済成長に伴って更に成長するポテンシャルを秘めている。
ブラジルのサッカー市場の成長は、まだ始まったばかりである。
——————————————————————————————————————

おっ!やっぱり!
どうやらこの調査会社の担当者と、僕は似たような考えの持ち主のようですね。
あくまでも「これから成長する市場」である、と。

実際のところ、偏見を除いてみても、2014年ワールドカップに向けて、
更にサッカー熱は加速してくるでしょうし、注目は集まってくるでしょうし、
少なくともこの2年は右肩上がりで伸びるでしょうね。

というわけで2年後には、ランキング世界第1位の座を、
奪えていることを、勝手に楽しみにしています。

 

■こんなキッカケで世界経済に興味を持ってみても面白いかもしれないですね

「サッカーは好きだけど、経済とかGDPとか全く分かんないよ…」という方も、
いらっしゃるかと思います。僕も昔はそうでした。
ただ、食わず嫌いをやめて一歩足を踏み入れてみると、
意外と面白い事もあるかもしれません。

自分の好きなサッカーやスポーツを1つのキッカケとして、
世界経済に目を向けていく、などというのも面白いのではないでしょうか。

僕にとってはこの開国ジャパンプロジェクトでの初稿でしたが、
そんなキッカケづくりのお手伝いが出来たらな、と思い、
今後も情報発信をしていけたらと思っています。

なお実は今回のこれらの数値、上記の他にも人口やGDP成長率などの、
他の数値と絡めて分析してみたんですけど、なかなか興味深かったですよ。
(それはまた別の機会にでもご紹介出来たらと思います)

もしこれを機に多少なりとも興味を持たれた方がいらっしゃれば、
数値で色々遊んでみてはいかがでしょうか?

 

では。
Até mais!


Facebookページに参加しませんか!

『開国ジャパン』は海外経験豊富な開国アンバサダーによる情報発信メディアです。
海外での生活やビジネスなどに興味のある方のために

各国に駐在しているアンバサダーからの現地事情
英語などの語学や海外での生活情報
海外ビジネスの情報

など、幅広く最新の情報を発信しています。


最新記事のチェックにはTwitterが便利です。

更新情報を必ずツイートしています。どうぞ、フォローしてください。


開国アンバサダー

現在89のアンバサダーが活躍中!

開国アンバサダーは、「グローバル社会で活躍する新しい日本人のロールモデル」 です。開国ジャパンでは彼らの熱い想いを発信しています。

開国アンバサダーとは 開国アンバサダー一覧 開国アンバサダー推薦フォーム

チーム開国ジャパン

ピックアップ

最新ニュース

  • U18W杯開幕、清宮オコエらで初V期待

    夏の甲子園を沸かせた高校生強打者2人が、28日開幕した第27回U−18(18歳以下)ワールドカップ(W杯)で日本代表として世界一に挑む。 ...

  • 「ガトリンの復讐」ボルト激突も無事

    【AFP=時事】(写真追加)第15回世界陸上北京大会(15th IAAF World Championships in Athletics Beijing)の男...

  • イチのファンサービスに観客感涙

    「マーリンズ1-2パイレーツ」(27日、マイアミ) マーリンズのイチロー外野手(41)は「2番・右翼」で出場し、4打数無安打。17打席連続無安打(3四球、1犠打...

  • 川栄李奈、初舞台で「おバカ」返上へ

    今月4日にAKB48を卒業した女優の川栄李奈が26日、都内で行われた舞台『AZUMI 幕末編』の制作発表・公開稽古に、共演者とともに出席した。 ...

  • 世界の若手億万長者30名 日本人は?

    フォーブスは世界で最も裕福な40歳未満の 44人のリストを公開した。ここではその中から30名をピックアップ。年齢の若い順に掲載する。 エヴァン・シュピーゲル(ス...

他のニュースも見る