無意識による心の貧しさ

サバイディー!こんにちは!
ハバタクの小原です。今、ラオスの首都ビエンチャンにおります。
日本は徐々に寒さが和らぎ始めている頃でしょうか。
ラオスは今、乾期です。日中は暑いのですが、朝晩は涼しくとても過ごしやすいです。

先日、日本人の方から「サイゴンから来た妻と娘」という本を借りて読みました。
サイゴン陥落(あるいは解放)から6年後の1981年に出版されています。

著者の近藤紘一さんは、1971年から1975年まで南ベトナムに新聞社の特派員として滞在していました。

ひょんなきっかけで知り合ったベトナム人女性(のちの奥さん)の住む長屋に転がり込み、現地の人々と共に、南ベトナム最後の日々を駆け回った様子が、臨場感たっぷりかつ軽快な文章で綴られています。

無意識による心の貧しさ

この本の中で近藤さんが日本人について触れた言葉にドキリとさせられました。

日本人の持つ「無意識による心の貧しさ」です。
1975年、北ベトナムによる「サイゴン解放」によって、南ベトナムは地図から消え去りました。
そして、今のベトナム社会主義共和国が誕生したのは1976年のことでした。

このサイゴン解放により南ベトナムの人々は共産主義陣営の手によって、資本主義経済、自由文化から解放されたはずでした。
しかし、長年慣れ親しんだ文化の変化や、新政府による再教育などに反発し、国外へ逃亡する旧南ベトナムの人々が後を絶ちませんでした。

受け入れ先を求めて命からがら国外へ脱出した人々は世界各国へ散っていきました。彼ら難民を世界各国が受け入れる中、日本はその受け入れを原則拒否しました。

著者のいう「無意識による心の貧しさ」とは、ベトナム戦争中には北ベトナムによる開放戦争を奨励していたにも関わらず、いざ難民が来た際には、それは我々とは関係ないと手のひらを返す政府の政策を、無批判に受け入れてしまう我々国民の姿勢にあります。

『なぜ解放された国から難民が出るのか。それを理解しようとしないのも、基本的にはこの心の貧しさからだろう。最初から理解しようという気持ちを放棄して、もっともらしく辻褄だけ合わせようとするから短絡的な解答しか見いだせない。』

この場で、その時の政策の是非を議論するつもりは全くありません。
グローバル化だ、多様性だという昨今、今の我々にもそういう節があるんじゃないか、と思うのです。

A国の人々はxxxだからいい人。B国はxxxをしているから嫌い。そんな短絡的な判断を僕らはしていないだろうか。
恥ずかしながら、僕自身にはそういう部分が少なからずあります。
どこかの誰かが、あるいは誰でもないその他大勢が作り上げた古典的なイメージを、都合の良く解釈して物事を考えてしまっているような気がする。

日本人像にしてもそうだ。まじめで勤勉な日本人。ほんとに自分自身もそれに当てはまるだろうか。
都合のいい日本人像に胡坐をかいてしまっていないだろうか。
僕がフィールドにしている東南アジアでは、日本の技術は素晴らしいというイメージが未だに根強い。でも、中国や韓国企業の進出スピードに日系企業は圧倒され、アジア各国の若い世代は日本ではなく、別の国々へ憧れを抱くようになってきているのも事実。

グローバル化はこれから更に加速していくでしょう。この流れは止められないし、否が応でも誰もが巻き込まれていくでしょう。
よく言われるグローバル人材というのは英語が喋れるとかそういう表面的なことではないと思います。

居心地の良いテンプレートに自分自身をはめ込んで満足したりせず、借り物の言葉で思考を止めたりせず、自らの足で出向いて、対話して、心を通わせて、時には嫌な思いをして、自分の価値基準を通して世界を見ることが、グローバル化するこれからの時代には求められていくのだと思うのです。

豊かさはと何か

僕が今滞在しているラオスで、こんなエピソードがあります。

作家であり、各国を渡り歩く旅人でもある、北方謙三さんがラオスを訪れた時の話です。

メコン地域を取材で訪れていた北方さん。現金で持っていた取材費が持ち出し制限を越えてしまったため、出国時にもめた。
何度か押し問答した後、旅慣れた北方さんは相手が袖の下を要求しているとピンと来た。そこで彼は50$を彼に渡して通り抜けようとした。
その時、担当官は受け取ったお金のうち30$を突き返してこう言ったという。

「Donate for FUKUSHIMA(福島のために使ってくれ)」

ラオスは国連で最貧国に指定されているほど貧しい国だ。
日本は中国に抜かれたとはいえ世界第3位の経済大国だ。

本当に豊かなのは誰で、本当に貧しいのは誰だろうか。
虚像の上に胡坐をかいて、無意識のうちに心を貧しくしてしまっていないだろうか。

決して簡単なことではないけれど、こんな時代だからこそ、本当の意味で豊かな日本人でありたいと思うのです。


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