ファゴットを追求し、ドイツ経由カタールへ(前編)

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現在、私が所属しているのは、中東カタールにあるカタールフィルハーモニー管弦楽団。カタール首長第2夫人が教育や文化にも力を注いでいる事から立ち上げられたオーケストラです。世界各国でオーディションが実施され、そこで合格した人がカタールに集められ、現在では約100人の団員がいます。所属するメンバーの国籍は約30ヶ国にも上り、多くの異なる人種で構成されています。

西ヨーロッパ人が一番多く、次にロシア系、東欧系、アラブ系(カタール人はいません)、そして私を含むアジア系。公用語としては英語が使われていますが、メンバーの約7割の人たちは、ドイツ、オーストリア、スイスなどのドイツ語圏で勉強した人なので、ドイツ語も多く話されています。プログラムとしては、アラブ音楽と西洋音楽が半々くらいで行われています。

オーケストラメンバーの中では出身国、宗教が違えば常識が違うので、意見の対立もしばしば。でも、良い演奏会にするために皆それぞれの力を発揮し、良いものをつくりあげようと努力しています。

オーケストラでの活動と平行して、現地では子ども達(5歳から15歳前後)に個人レッスンで、ピアノ、ファゴットを教えています。子ども達の国籍はイギリスと日本のハーフ、カナダ人、アメリカ人、インドネシア人。

自分が不得意としている英語で教えなければならず、最初は何度も先生を引き受けるのを断っていました。だけど、「やってみなければ、わからないっ」て思ってはじめてみたんです。音楽も世界共通語ですからね。楽譜、音符、楽器、音楽用語、みんな一緒です。

 

■ “気を使える”日本人ならではの良さ

日本で子どもに教えたことはないので、うまく比較はできないんですけど、私が気がついたことは、現地の子ども達からの主張が多いこと。おかげで、レッスンが私の予定どおりにいかないこともしばしば。私が「じゃぁ、次はこの曲やろうか?」というと、子どもたちは、「ううん。こっちがいい!!こっちやる!!」と言ってきますし、音楽の技術的なことも、「ここはフォルテで弾きたい」とか、どんどん主張してきます。プロの音楽家を養成するような特別の指導している訳ではないので、まったく間違ったことを言わない限り、好きなようにやってもらってますけどね。

やっぱり、楽しまないと。音を楽しむのが音楽の基本ですから。これを、わがままと取るか、自己主張と取るか。言うことを聞く子、聞き分けの良い子が「良い子」なのかどうかは正直分からないですね。

先日、旅行先のトルコでも、専門学校でファゴットを教える機会がありました。ここでも、生徒たちは自分がやりたいように演奏してましたね。 事の良し悪しはこの際良いのですが、あまりにも自由すぎて驚きました。

そこに、ドイツ留学を考えている一人の女の子がいました。彼女はまだ18歳。どうするのがいいのかを積極的に私に質問してきましたよ。どの大学、教授がいいのかとか、語学の心配とか、経済的なこととか。

トルコという国は、上下関係、礼儀などがしっかりしていて、日本に似ている雰囲気を持った国という印象でしたが、ここでも日本の学生より積極的な部分がたくさん見られました。私が日本に帰国している時に大学を訪れて、留学を考えている男の子に会いましたが、彼は、何も聞いてきませんでした。消極的すぎて、びっくりしたくらいです。

こう書いてしまうと、日本人の特徴がネガティブな方向にばっかり捉えられてしまいますが、日本人ほど“気を使える”民族はほかにいないと思いますし、そこは、どこの国の人もすごく良く評価してくれます。それは、日本の子ども達にもすでに備わっています。だからこそ、気を使いすぎて、言いたいことを言えないのが日本人。そのあたりのバランスが難しいなと感じています。

 

 ■ 海外に出て勉強や就職することが初めからわかっていたら、語学、歴史をもっと勉強しただろう

  私は若い時から、はっきり未来の自分の姿を想像して、「夢の為に何をしたらいいのか?」ってしっかり考えて行動してきたわけではありません。大学進学、留学、就職にたどり着くまで、いつも、ギリギリ。海外に出て勉強や就職することが初めからわかっていたら、語学、歴史をもっと勉強しただろうと思っています。

昔から、勉強は大嫌いでした。特に英語が。今でも苦手意識は強いです。私は「日本から出ないから、英語なんて必要ないもん」と言っていたフツウな中学生だったんです。 

「音楽関係の仕事ができたらいいなぁ」、と漠然と考えていたのは中学生の時。でも高校は普通科に進学しました。高校で吹奏楽部に入り、ファゴットという楽器に出会いました。そこで、楽器を演奏する楽しみ、コンクールや演奏会に向けて、皆で一つの曲を作り上げていくことに快感を覚えました。「やっぱりやりたいことは音楽しかない」と思い、音大にいくことを決意しましたが、それも高校3年生になってから。

音大受験には通常の大学入試ではないような「専門の楽器」「楽典」「聴音」「ピアノ」の試験があるんです。それらの試験の為にあてた期間は半年くらいでしょうか。本来、ファゴットだって受験をするなら、ちゃんと受験用にレッスンを受けなければなりませんが、私の場合、本当にギリギリの準備でした。

音大に行って卒業しても、すぐに演奏家として就職できないことは分かっていましたし、その後、海外留学するなんてことは、その時は考えてもいませんでした。とりあえず、ほかにやりたいこともないし、もっとファゴットを勉強したかったので、音大進学という選択。なんと親泣かせの、あまちゃんだったのでしょう。

両親には「4年生になったら、職種選ばずに普通に就職するから」と音大進学に了承をもらうことができました。準備不足が心配だった受験でも、私の専門がファゴットというマイナーな楽器だったこともあり、無事に合格できました

 

■ 「西洋音楽を学ぶならヨーロッパに行かないと!」と確信したんです

 大学入学前は、オーケストラの演奏会に行ったのも、ほんの1、2回だった私ですが、入学後に何回も演奏会に足を運ぶようになると、日本のオーケストラと、外国のオーケストラでは、「何かが違うな」と思うようになります。大学2年の時に来日したドイツのベルリンフィルの演奏会は大感動しました。ものすごい迫力の中にも関わらず、繊細さのある演奏にめちゃくちゃ感動したんです。そのときに、「やっぱりドイツか!」って思いました。ファゴット  

この頃から、漠然と「可能なら留学したい……」っという想いが頭によぎるようになりました。でも、超消極的な私でしたので、お金もかかることだし、両親にも相談できず、奨学金を取れるほどの腕がないことは、自分が一番良くわかっており、「まぁ、無理だな」と自分から諦めてしまっていました。多分、卒業したら、フリーのファゴット奏者になって、中学や高校を教えにいき、寄せ集めのオーケストラで吹いたりってなるのかなぁと漠然と思っていました。もしくは、普通にどこかに就職して結婚しちゃうとか……。

そんな中、3年生の冬にファゴットを勉強する友達3人とドイツへ20日間ほど行く機会がありました。実はこれが私にとっては初めての海外でした。この経験がなかったら、いまだに日本にいたかもしれません。テレビや本などのメディアを通してではなく、ドイツの空気を自分の肌で感じた3週間でした。

知っていたドイツ語はJa(はい)  Nein(いいえ) Danke(ありがとう)のみ。電車のドアも自分で開けなくては行けないドイツの電車。開け方が分からないと、ジェスチャーし、手伝ってくれたドイツ人に「ダンケ」って言えたことに一人で感動してるくらいの、そんなレベルでした。

 

現地では大学でのレッスンも見学することができ、ちょうど、行なわれていた卒業試験も聴くことができたのですが、そこでは「日本で勉強していても、こんな風に演奏できるようにはならないな」とショックを受けたんです

大学での練習環境も日本とは大きく違いましたね。オペラを観たり、初めて外国人としゃべったり、と私のテンションは急上昇。一方で、ドイツでの時間の流れ方は、とてもゆっくりしていた気がします。当時の私は、日本がとても窮屈に感じていたこともあり、ドイツではものすごい開放感を味わうことができました。

そのとき、「西洋音楽を学ぶならヨーロッパに行かないと!」と確信したんです。そこから、具体的に留学できる方法はないかと、野心を抱くようになりました。

4年生になってからドイツ語を履修し、留学に向けての勉強を始めるものの、両親からは猛反対され、半ば諦めていました。とはいえ、ほかに就職活動をするわけでもなく、時間だけが過ぎ、すぐにまた冬を迎えてしまうことに。結局、恩師の先生に推薦をいただくなどのお力を借りて、なんとか両親を説得することに成功。2月の入学試験に間に合うように急ピッチで準備をし、「合格したら2年だけ行ってきて良い」と了承してもらうことになりました。

結局、この時に日本を出てから、ずっと海外暮らしが続いています。「2年だけ」という当初の約束のはずが……、気がつけば丸10年です。 

私の場合、グローバルになりたいと思ってはじめから世界を目指したわけではなくて、やりたいことを詰めて行ったら、それは日本にはなかった、ということですね。

開国ジャパンプロジェクト

 


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