知らない世界は存在しない世界

将棋の名人戦の大盤解説会に初めて参加した際に感じたことを書いてみたいと思います。
これまで尾崎は自分が所属している組織だけでなく、
・「本職」である競馬伝道師、馬主アドバイザーとしての活動
・中高や大学の同窓会でのネットワーク作り
・自分の興味ある分野の講演会やセミナー
など、比較的幅広く行動してきたつもりでした。
しかしながら、将棋の解説会で見た光景は今までの尾崎の経験ではまったく見えていなかった人々が見えてきたのです。
将棋の存在は小学生の頃から知っていましたし、父親や弟相手に下手なりに指していましたが、心の底から将棋を楽しんでいて、アマチュアとはいえ、日々熱心に一手一手を研究されている愛好家の皆さんは想像上の存在であり、実態は全く知らないまま過ごしてきたわけです。
ところが、いざ会場に足を踏み入れてみると開場前から相当のファンの方が列をなし、解説が始まってからも次々と参加者が増えてくるではないですか。お年寄りの方が多いのですが、若い方もちらほらいましたし、女性の参加者もちょっと数えたくらいでは十数人以上。みな熱心にプロの棋士の解説に耳を傾け、いつ指されるともわからない「次の一手」をじっと見守る、そんな時間が続くのです。
将棋にはかなりの数の愛好家がいるにも関わらず、尾崎はその世界をあたかも「存在しない」ものとして、自分の世界観から消していたのだ、ということにこの会場で気づかされたのです。
そして初めて目の当たりにした熱気あふれる将棋ファンの集会に驚いてしまいました。これまで自分の世界の中になかったものを初めて見たのですから当然でしょう。
尾崎は以前ブラインドサッカーという視力を失った方々が楽しめるサッカーの講習会にも参加したことがあります。その講習会の最中、講師の方から
「日本国内の障害をお持ちの方の数」
と
「日本人の苗字五傑(サトウ、スズキ、タカハシ、タナカ、ワタナベ)の方の数」
は
ほとんど同じ数なんですよ、という事実を知らされました。
数が同じということは我々が日本で生活していく中で出会う確率はほとんど同じであるはずなのに、実際には障害をお持ちの方と知り合う機会が少ないのではないでしょうか?
これは障害をお持ちの方のコミュニティーと健常な方のコミュニティーが実質的に分断されているからではないかと思います。
その結果多くの健常な方から見て障害をお持ちの方の世界はあたかも「存在しない」ように捉えられています。
鎖国中の日本では日本が世界のすべてだと考えている人が多かったでしょう。
そういう人たちにとって、アメリカやイギリスという国は存在しないのと同じ。
日本と言うコミュニティー以外を知らない人には「世界」は存在しません。
そんな世界観を持った江戸末期の日本人が突然見たこともない黒船から見たことのないような容姿の人間と出くわせば眠れないほど驚く結果になるのはある意味当然の出来事。
人は興味の範囲に応じてグループを作る傾向にあります。
共通の趣味を持つ人、関心を持つ人とばかり一緒に集まりがち。
一方で、興味の範囲外のコミュニティーとは交わることが少なくなります。
結果的に自分が交流を持つ人々は自分の興味の範囲内に偏ってしまいます。
そうするとどのようなことが起こるでしょうか?
自分の興味の範囲にない分野は「存在しない」ものとして過ごすことになります。自分の知らない世界は実態としてこの世に存在していたとしても自分の中では「存在しない」のです。
一般的にはそれでも日常生活を送る上で影響がないのかもしれません。
ただ、現代は世界中の国や地域、人が様々な手段で交流する時代です。
「存在しない」世界のことは想像もできませんし、その世界で暮らす人と言語を共有することも難しいですが、そういう世界とも共存せざるを得ません。今や世界中のあちこちをものすごいスピードでヒト・モノ・カネ・情報が行きかう時代になってしまっているのです。
自分の好奇心を生かすためにも、情報を正しく受け取れる範囲を広げるためにも、
自分の世界の外から眠れなくなる程の驚きを受けることを避けるためにも、自分の世界をできるだけ広げるためにも自分の中に「存在しない」世界はできるだけ少なくしておいたほうがいいのではないでしょうか。
今回の寄稿では、これまで参加したことのない将棋の大盤解説会という舞台で感じたことを基にコラムにまとめてみました。
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