ファゴットを追求し、ドイツ経由カタールへ(後編)

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後半は留学時代のビンボーサバイバル生活のご紹介から。

ドイツ留学時代、目標はオーケストラに入ることでした。それまでは色々なことを我慢しなくてはいけないと思って、贅沢をすることは諦めて生活していました。衣食住を最低限で暮らすことで、かなり鍛えられたと思っています。

はじめは仕送りをもらっていたとはいえ、そんなに贅沢はできません。留学一年目は、1ヵ月2万円くらいの学生寮に住んでいました。自分の部屋は4畳くらいで、ベッドと机と本棚、洗面台があるだけ。キッチン、シャワー、トイレは同じ階に住む人10人で共同でした。(男女兼用です。ちなみにドイツではサウナも全裸で男女一緒とか、コンサートのときの控え室(更衣室)も男女一緒とかでも普通です。カタールでは全く考えられない事ですし、日本でもあり得ないですよね。かなりカルチャーショックを受けました。さすがに私自身はサウナに行ったことはありませんけど……)

キッチンにある棚や冷蔵庫には鍵がかけられるようになっていました。でも、日本から来た私は、「住んでいる人も10人くらいだし、盗む人なんていないだろうって。」思って、面倒くさかったので、鍵をかけないでいたら、どんどん買った食料は盗まれていきました。鍵を掛けなかった自分が甘かったんですけどね。いるんですよ、盗っていく人が……。貧しい国から来ていた人は、盗んだりしないと生活をしていけなかったのかもしれません。

1年後に寮を出て、WGをしました。WGとは、wohngemeinschaftといって、ルームシェアのことです。ドイツでは当たり前で、学校の掲示板や新聞にも普通に募集欄があるくらいです。(すでに知り会っている人と始めるのではなく、部屋が空くから誰か入りませんか?とか、ルームシェアの空き部屋を探しています、という募集です。) WGには色々なタイプがありますが、私はたいてい2人のWGでした。7年間で男女問わずドイツ人と、韓国人と、中国人と、リトアニア人と住みました。

ちなみに、カタールで結婚していない男女が一緒に住んでいるのが見つかれば、強制送還、国外追放です。ルームシェアなんてもってのほかです。これまた、常識が違いすぎますね。

親とは2年の約束で留学したのにも関わらず、すぐに3年が過ぎて行き、両親からの仕送りもストップしてしまいました。そんなわけで、銀行口座の預金はゼロに近くになることもあり、生活はカツカツでした。仕事は、教会のミサや、たまにある寄せ集めのオーケストラで演奏すること。どれも不定期なので、安定した収入はなく、家賃と健康保険を払うと残りの生活費はほんのわずか。おにぎりを作って学校で売った時は、さすがに皆に心配されました…・・・。(苦笑)

粗大ゴミの日には夜中に街中を周り、使えそうな家具を自力で拾ってきました。髪の毛も自分で切りました。パソコンも持っていなかった。ただただ、家と学校を往復する毎日。何がみじめかって、周りの友達が普通の生活をしているのに、自分だけが苦しい生活をしていることでした。「カフェいかない?」とか「ご飯いこうよ」という誘いさえ受けることができなかった日々でした。

しかし、そのような生活を送っていたら、どんどん逆境に強くなっていくことができました。大抵のことではめげなくなってくるんです。日本にも3年は帰れなかった。でも全く平気でしたね。

ギリギリの生活をしていると、「いつか絶対にオケに入ってやるー!ちゃんとお肉が買える生活をしてやるー!」って闘志が湧いてくるんです。

「目標」や「目的」を持つことは大事だと思いますね。その想いがあったから、そんな状況にも耐えられたのだと思います。

経験

 

■ 結局のところ、お互いに持っている常識を認め合うしかない

ドイツ留学中は、色々な国の友人がいることで世界を身近に感じるようになりました。世界中から音楽を勉強するために留学している人がいましたから。兵役をやっと終えて来たイスラエル人。部屋に銃を構えている写真が飾ってありました。兵役がある国って結構たくさんあるんです。兵役から逃れるためにいろんな対策している人達がいました。それまではそういうことって他人事だったんですけど、身近に感じるようになりましたね。koyama

ほんとに世界にはさまざまな人がいて、色々な苦労や葛藤の中で生きていることを知りました。世界情勢も日本にいるときよりもかなり身近に感じることができます。自分自身が外にでると、日本自体についても客観的に見られるようになりました。日本人の間では当たり前なことも、それが当たり前でない国の人達がいることを知ったんです。

他国の人たちと話すとき、反対意見を言われることにも慣れていきましたね。昔はいちいち落ち込んでいたんですが、文化や常識が違えば出てくる意見も違う訳で、いちいち気にしなくなるんです。むしろ、反対意見を言ってくれる人が身近にいる事は幸せな事だと思えるようになりました。全くムッとしないわけじゃないですけどね(笑)。

結局のところ、お互いに持っている常識を認め合うしかないんですね。歩み寄ることが必要だと学びました。

悪いことも書けば、少々時間にルーズになりました。ドイツの鉄道はよく遅れるし、イタリア人が3分休憩って言えば、10分だし、アラブ人があと5分て言えば30分だし……。イラッとするのは、遅れる連絡がない人たちです。彼らは全く気にしないそうで……。なので、彼らと待ち合わせをする時は、相手の国籍を考えます(笑)。

<次ページへ続く>

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