【対談】「日本サッカー界に必要なグローバル力とは」(前編)
サッカー日本代表の海外遠征の取材や、東欧や東南アジア、米国といったサッカー文化発展途上国でプレーする日本人選手を取材するため、世界をまたにかけて活動する写真家・ノンフィクションライターの宇都宮徹壱氏。外資系コンサルティング会社出身で、2010年南アフリカW杯に出場する32カ国を巡る「世界一蹴の旅」を遂行し、ビジネス×サッカーという独自の視点から日本人を論じ、日本のグローバル化を志すヨモケン氏。「開国ジャパンプロジェクト」のオープニング企画としてのスペシャル対談。日本のグローバル化、開国化について、サッカーの観点から語り合います。
(宇都宮)
お久しぶりです。なんか日本で会うのってひさしぶりだよね。
(ヨモケン)
そうですね。だいたい海外の日本代表のゲームのときに現地で会うのがほとんどでしたもんね。W杯では大会期間中、お互いずっと南アフリカにいたわけですが、最近もよく海外にいかれたりするんですか?
(宇都宮)
日本代表チームの取材に関して言えば、今年は震災の影響でコパ・アメリカも海外遠征もどうなるか分からないのですが、日本代表に関係ない個人的な取材にも出掛けたいと思っています。
(ヨモケン)
現在の活動を拝見していますと、W杯やその予選など、日本代表のアウェー戦取材で海外にたくさん行かれている印象を持ってますが、もともと海外志向が割と強かったんですか?
(宇都宮)
この仕事を始める以前は、テレビ制作の仕事をしていたんです。当時はJリーグが開幕して2年目で、今よりもサッカー番組って多かったんですよ。そのときは、テレビ東京とNHKの番組を担当してました。テレビ東京では「ダイヤモンドサッカー」という番組で、川平慈英さんや大仁邦彌さん(現・日本サッカー協会副会長)が出演されていたんですが、そこでアシスタントなどをやってました。もうひとつのNHKのほうはBSだったんですが、「ワールドサッカー」という番組で、欧州のトップリーグの録画放送をやってました。番組名どおり、「ワールドサッカー」のほうが海外の試合にフォーカスした内容になっていました。当時はブンデス、スペイン、そしてプレミアをやっていましたね。
特に私が魅了されていたのは、スペインでしたね。なぜなら東欧出身のタレントがそろっていたから。レアルで言えば、当時、ミヤトビッチ(モンテネグロ)とスーケル(クロアチア)というバルカンツートップの呼ばれる選手がいたり、かたやバルセロナには、ストイチコフ(ブルガリア)とハジ(ルーマニア)の両エースがいたり、ものすごく豪華でしたよね。
そのときに、フト思ったのが「これほどの天才たちを輩出する彼らの祖国ってどんなところなんだろう」と。それが、東欧について関心を持つ最初の興味のキッカケでしたね。
旧ユーゴに関していえば、95年がボスニア紛争の終わった年なんですが、その頃って東欧はまだまだ日本からは遠い国でしたし、まだまだ危険な雰囲気が残っている場所だったんですよ。当時はまだインターネットが今ほど発達してませんでしたし、情報量も今ほど多くなかった。現地のことなど分からないことだらけだったんです。逆に、だからこそ現地に行くことを決断できたのだと思います。今だったら、ネット上などに怖い情報がありすぎて、おそらく躊躇していたかもしれません。ネットって、良い面もたくさんあるんだけど、悪い面としては「行った気になる」「分かった気になる」、あとは「必要以上にネガティブな情報が多い」というのがありますよね。
(ヨモケン)
そうですね。南アフリカのW杯なんて顕著かもしれませんね。あれだけ事前に危険情報を流されると、行ったこともないのに危険と思い込んで躊躇しちゃいますよね。実際にそれで現地に来なかったサポーターたちも多かった。
(宇都宮)
そういう意味で、僕があの時期に東欧へ乗り込むことができたのもネット黎明期で情報不足だったからかもしれません。
(ヨモケン)
もともと以前はテレビのお仕事をされていたと伺ってましたが、なぜ東欧の地で「写真家宣言」をされようと思ったのですか?
(宇都宮)
「地雷を踏んだらサヨウナラ」というような書籍がありましたが、あの頃のサラエボというのは、戦争が終わったばかりで、まだまだそんな悲壮感いっぱいのイメージがありました。テレビ制作会社を辞めた時、貯金は大してなかったし、交際している女性がいたわけでもないし、もうこの先どうなるか分からないっていう不確実性の真っ只中にいたんですよ。当時、30から31歳くらいでしたでしょうか。尊敬して止まない写真家のアラーキー(荒木惟経)さんが電通を辞めて写真家宣言したタイミングも31歳でしたので、それは意識の中にありましたね。
もし、現地で良い写真が撮れて無事に帰ってこられたら、その後の人生も良い流れで展開していくんじゃないかな、と思ったんです。でも、もしそれこそ地雷を踏んでしまったら、「はい、それまでよ」というような、ある種の“賭け”でしたね。
もっとも時代に後押しされた部分もあったかもしれない。私が会社を辞めてバルカンに旅立った97年当時は、今と比べたらまだマシでしたが、少年犯罪が大きな社会問題になったり、大きな銀行が破綻したり、ものすごい閉塞感が日本中を覆っていたんです。そんな時代だからこそ、ジョホールバル(※)でみんな燃えるように盛り上がったんだと思いますよ。
※編集部注)日本代表が延長Vゴールでイラン代表を破り、初めてのワールドカップ出場を決めた試合会場のあった都市
ところで、よく、みなさんから「現地では言葉はどうしてるんですか? 大丈夫ですか?」なんて聞かれるんですよ。恥ずかしながら私、基本的には“サバイバルイングリッシュ”しかできないんですよ。もちろん、言語力って大事だとは思うんです。でも、絶対ないとダメかというと、決してそうではないと思うんですよね。
これはグローバル化のひとつのヒントになると思うんですが、言葉が堪能ではなくとも、外国人とコミュニケーションするツールっていくつもあると思っています。サッカーは十分に、そのひとつになり得ると思うんですよね。それは海外に出て、身をもって感じました。クロアチアに行ったときも、現地の方々と、ガンバ大阪に所属していたムラデノビッチの近況の話で盛り上がったりしましたし、もちろんセルビアではピクシーの話を必ず振られますよね。サッカー好きでなかったら、こうした交流はまずあり得ない。これこそが、サッカーをテーマにした仕事をやっていて一番のアドバンテージだと思っています。
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